第54話 業務の範囲

文字数 974文字

時折り、こんな話を耳にします。


御利用者の自宅へ訪問した際、空き缶の片付けをして、その後、洗濯機のフィルター清掃を行い、寝室の衣類の整理をして来た。


……これ、介護士の仕事でしょうか?

介護士の仕事は、ここからここまで、という明確な範囲が決まっていません。

介護士は『生活を支える仕事』だからです。

特に、御利用者1人で暮らしていたり、老老介護の状態になっている家に多いのですが……

御利用者の自宅内が荒れていると、生活をする上で邪魔になるものが多かったり、そもそも、洗濯機が動かないとか、エアコンが故障しているとか、そういったことが起こってきます。

このような場合、大抵はご家族へ連絡し、対応してもらうのですが……
中には、ご家族から、どうしても家へ行くことができないから介護士に対応をお願いしたいと言われることがあるのです。

そこまで介護士がする必要はないでしょ、
と思うかもしれませんが、そうもいかないのです。

例えば、夏場にエアコンが動かない場合、熱中症の恐れがありますし、

例えば、尿や便で衣類を汚してしまうことが多い人の家で、洗濯機の調子が悪かったらどうでしょうか?

そして、それを知っていながら、『そこまで介護士がやる必要はないから』と放置していたらどうでしょうか?


『介護士の仕事ではないから』と言えば、問題にならないでしょうか?


また、そういった明確な区分、業務範囲が決まっていないために、『〇〇をしてください』と頼まれた時に、断る理由がないのです。

規則やルールがない以上、

『そういう細かいところまでやるのが介護の仕事ではないのか?』

と問われた時、反論ができないのです。

現場で働く者としては、ルールを作ってくれ!と思いますが、実際には、それぞれの家庭の事情、状況によって、やらなければならない範囲が変わりますので、作ったところで『例外』は発生すると思います。

そういった細かい部分まで、きちんとルールを決めてもらえれば良いのですが、中途半端なルールを決めて、その結果、誰かの命に関わるような事態になったら、本末転倒です。

簡単にはいかないと思います。


とはいえ。
一つだけ、言わせてください。


介護士は、家政婦でも、便利屋でも、なんでも屋でもありません。


特別な事情もないのに、やってくれるからと、掃除や洗濯まで気軽にお願いしないでいただきたいと思います。



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