第56話 処置

文字数 955文字

皆さんは『傷』と言われたら、どんなものを想像しますか?

おそらく多くの方が、すり傷や切り傷、軽い火傷などを想像するのではないでしょうか?

介護士は傷の処置を行うこともある職業ですが、中には、一度見ただけで二度と見たくなくなるような傷と戦わなくてはならないこともあります。

御利用者の多くは高齢な方ですので、転倒してどこかに傷があったり、褥瘡(じょくそう)ーー床ずれーーがあったりと、そういったケースが頻繁にあります。

特別養護老人ホームなど大規模な施設においては、看護師が常駐しており、看護師に処置をお願いできる場合もありますが、
デイサービスや小規模型の事業所では、介護士が行わなければならないことも多くあります。

何センチもないようなすり傷、切り傷ならともかく、ガーゼを当てていても血が滲んでくるような深い傷や、じゅくじゅくとした、肉が見えているような傷を処置する場合もあります。


正直私は、オムツ交換などより、余程、やりたくない業務の一つです。


『医療行為』にあたる部分は、当然、介護士が行うことはできません。が、その傷を持った方のお世話をするのは介護士ですので、相当な気を遣います。

お風呂に入る時、濡らさないようにと言われれば、サランラップやビニール袋を駆使して、なんとか濡れないように工夫しますし、
お尻に傷がある場合などは、オムツ交換の際、慎重にならざるを得ません。


直接、処置を行うわけではなくても、精神的なストレスがかかってくるのです。


また、御利用者の中には認知症の影響で傷があることを忘れてしまい、何故、処置をしなければならないのかが分からず、やめてください!と拒否をされる方もいます。

『痛いからやめてください!』と暴れる方もいらっしゃいます。

過去、私が対応した御利用者の中には、痛みから身体を動かしてしまう方がいて、職員数人がかりで抑え込み、なんとか処置を行なっていた方もいらっしゃいました。

ご家族から、簡単に『先生(ドクター)から、〇〇してくださいと言われたのでお願いします』と頼まれることがありますが、難しい方もいらっしゃいます。


是非、一度で良いので、『褥瘡(じょくそう)』で検索してみてください。


そして、その傷を持つ方のケアをしなければならない人間の気持ちを想像していただけると幸いです。



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