第10話 命を預かる

文字数 1,164文字

皆さんは、目の前で誰かが気を失ったり、泡を吹いてた倒れたり……そういった経験はありますか?

そして、そんな時、正しく、冷静に行動できたことはありますか?

私は介護士になってから、何度もそんな場面に遭遇していますが、『完璧に対応できた!』と胸を張って言えることはありません。

やはり、何度経験しても、慣れないのです。

介護施設を利用している高齢者の皆さんは、介護を必要としていますので、体のどこかが悪く、なにかの拍子に意識がなくなってしまったり、体調を崩してしまうことが多くあります。

そんな時、最も身近にいて、素早く対応できるのは、常にそばにいる介護士です。


皆さんは、自分自身のことであったり、家族のことであったり、お仕事であったり……その中で、『自分の責任で』なにかを決定することがあると思います。

自分自身にとって後悔のないように……
人に迷惑をかけないように……
家族が幸せになれるように……

そんな気持ちで決断をすることでしょう。

そんな時、誰かの命がかかっていたとしたら、どうでしょうか?
そして、一刻を争う中で、その決断を迫られるとしたら、どうでしょうか?
誰かが倒れた時、正確に、冷静に、状況を把握できますか?


原因はなんなのか?
心臓マッサージをした方が良いのか?
それとも変に動かさない方が良いのか?
AEDの使用有無は?
上司や家族への連絡は?
そんなことをする前に救急車を呼ぶべきなのか?
救急車を呼んでいいのか?(ご家族の中には呼ばないでくれと希望される方もいます)


全てを、自分や、その場にいる人間だけで決断しなければなりません。

当然ですが、たまたま近くで見知らぬ誰かが倒れたとか、そんな状況ではありませんので、気付かなかったとか、そんな言い訳は通用しません。

例え、本当に気付かなかったとしても、自分に、責任がかかってきます。

もし判断間違えれば、怒られるだけでは済みません。顔も名前も知ってる、その人の命を奪ってしまうかもしれないのです。


よく、医療に携わる方々と比較され、介護の方がそういったプレッシャーは少ない、と言われることがあります。

事実、救急搬送されたあとのことは、介護ではなく、医療の範囲になりますので、直接、命に関わるという意味では、医療の方がプレッシャーがあるのかもしれません。

ですが、ついさっきまで元気にしていた方が突然意識を失ったり、何年間もずっと、一緒に過ごしてきた人が、少しずつ衰え、亡くなるまでそばにいなければならなかったり、

そういった負担、責任に関しては、介護にもあります。

『命を預かっている』

ということの意味、責任の重さは、実際に携わってみなければ分からないと思いますが、少しでも、想像していただきたいです。

そして、それを踏まえた上で、医療、福祉に関する問題について、考えていただければと思います。


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