第31話 死に方
文字数 2,035文字
皆さんは、自分はどんな風に死にたいか?
考えたことはありますか?
こんな質問をすると、おそらく『苦しまずに死にたい』という人が多いのではないでしょうか?
私も、その一人です。
介護士は、『死』に触れる機会が多く、
死を考える機会の多い職業でもあります。
今回は、私が体験したことや、見聞きしたことをもとに、『死』について、考えさせられた場面を紹介したいと思います。
①老衰
介護の世界に入るまで、私は『老衰』が良いものだと勘違いしていました。
病気などはなく、緩やかに、穏やかに、死を迎えるもの。そんなイメージでした。
もちろん、そういう人もおられないわけではないですが、
私は別の『老衰』もみてきました。
老衰は、病気などはないのに、体が少しずつ弱っていく……という状態ですので、それはつまり、
食事量が落ち、筋力が落ち、立てなくなり、体を動かすことが大変になり……その過程で、体のあちこちが痛くなったり、難儀感が強くなったり、苦痛を伴う場合もあるのです。
緩やかに、体が弱っていくこと。
それが、老衰です。
自然の形ではあるのかもしれませんが、皆さんは、どう感じますか?
②突然
ある朝、施設へ突然、電話が来ました。『祖母が亡くなりました』。
その方は、すぐには亡くなりそうにない、それなりにお元気な方でした。
なぜ亡くなったのか?
認知症のあったその方は、夜中に家を抜け出し、外に出たそうです。
冬でした。雪が降っていました。
家を出てすぐのところで倒れていたそうです。
おそらく、急激に体が冷やされたことで、血圧が急変動し、倒れてしまったものと思われます。
苦しくなかったのか?
一瞬の出来事だったのか?
誰にも分かりません。
これは、『苦しまずに死ぬ』に入るでしょうか?
③救急車
皆さんは、もともと弱っている高齢者が、どんな状態になったら救急車を呼ぶべきか?冷静に、判断できますか?
いつも通り、介護士がその御利用者の自宅へお迎えに行くと、ご家族がこんなことを言いました。
『なにか、朝から様子がおかしい。でも、話しかければ反応はあるし、大丈夫でしょうか?』
え?と思い、職員が部屋へ向かうと、
職員視点では、今すぐ救急車を呼ぶべき状態となっている御利用者がいました。
もともと、寝たきりに近い状態の方で、声をかけてもなかなか反応が得られないような方でした。
しかし、その日は、口元からよだれが垂れ、手足は冷たくなり、爪も変色し、目もうつろな状態でした。
確かに、ご家族の言葉通り、声かけにかすかな反応はありましたが、それどころではない状態です。
職員がすぐさまご家族へ救急車を呼ぶよう指示し、なんとかしようと努力しましたが、結局、その方はそのまま亡くなってしまいました。
その方にとって、その『死』はどうだったのか?
ご家族にとって、その『死』はどうだったのか?
皆さんは、冷静に、判断できますか?
④周囲
『死』というのは、周りに与える影響も大きいものです。
皆さんは、自分が死ぬという瞬間に、周りで家族がケンカを始めたらどうですか?
『もう少しで亡くなると思います』
医師からそう告げられ、介護士はすぐにご家族へ連絡を取り、来てもらいました。
ご家族皆さんがそろうまで、その方は呼吸をしていて、介護士は良かった、と思っていました。
しかし、ご家族の間できちんと情報交換ができていなかったのか、責任者である息子様へ
『こんな状態とは知らなかった』『何故こんなになる前に連絡をくれなかったのか?』『遺産はどうするのか?』『お墓の準備は?』
など、詰め寄ったご家族がいました。
それに対して、息子様も応戦し、結果、大喧嘩が始まりました。
亡くなるご本人は、とても優しく、家族想いな方でした。
息子様もよく面会に来られており、おそらく、お二人の間では、きちんと考えがまとまっていたのでしょう。
息子様が連絡し忘れていたのか?
ご本人が連絡をするなと話していたのか?
息子様は誰かに連絡を入れていたが、どこかで情報が途切れてしまっていたのか?
どういう経緯なのかは分かりません。
ただ、介護士の視点から見れば、せめて、ご本人が息を引き取ったあとに、ケンカをしては?と思いました。
皆さんは、自分が死ぬ時、周囲へ与える影響を考えたことはありますか?
……皆さんは、『死』をどのように捉えていますか?
よく、御利用者からこんな話を聞きます。
『早く死にたいけど、心臓が止まらない』
『こんなに迷惑をかけるくらいなら、早くあっちに行きたい。申し訳ない』
『本当に皆さんによくしてもらっていて、それはありがたいけど、それが申し訳ない』
『昔は、こんなところ(介護施設など)はなかった。だから長生きするんだ』
『こんなことになるなら、じいちゃん(ばあちゃん)と一緒に死にたかった』
心臓は、止まれ!!と思っても、止まりません。
皆さんは、自分が死ぬ時、
どんな風に死にたいですか?
介護士は、『死』を人よりも多く経験する分、自分自身の『死』についても考える機会が多いです。
皆さんはどうでしょうか?
届け介護士の声。
考えたことはありますか?
こんな質問をすると、おそらく『苦しまずに死にたい』という人が多いのではないでしょうか?
私も、その一人です。
介護士は、『死』に触れる機会が多く、
死を考える機会の多い職業でもあります。
今回は、私が体験したことや、見聞きしたことをもとに、『死』について、考えさせられた場面を紹介したいと思います。
①老衰
介護の世界に入るまで、私は『老衰』が良いものだと勘違いしていました。
病気などはなく、緩やかに、穏やかに、死を迎えるもの。そんなイメージでした。
もちろん、そういう人もおられないわけではないですが、
私は別の『老衰』もみてきました。
老衰は、病気などはないのに、体が少しずつ弱っていく……という状態ですので、それはつまり、
食事量が落ち、筋力が落ち、立てなくなり、体を動かすことが大変になり……その過程で、体のあちこちが痛くなったり、難儀感が強くなったり、苦痛を伴う場合もあるのです。
緩やかに、体が弱っていくこと。
それが、老衰です。
自然の形ではあるのかもしれませんが、皆さんは、どう感じますか?
②突然
ある朝、施設へ突然、電話が来ました。『祖母が亡くなりました』。
その方は、すぐには亡くなりそうにない、それなりにお元気な方でした。
なぜ亡くなったのか?
認知症のあったその方は、夜中に家を抜け出し、外に出たそうです。
冬でした。雪が降っていました。
家を出てすぐのところで倒れていたそうです。
おそらく、急激に体が冷やされたことで、血圧が急変動し、倒れてしまったものと思われます。
苦しくなかったのか?
一瞬の出来事だったのか?
誰にも分かりません。
これは、『苦しまずに死ぬ』に入るでしょうか?
③救急車
皆さんは、もともと弱っている高齢者が、どんな状態になったら救急車を呼ぶべきか?冷静に、判断できますか?
いつも通り、介護士がその御利用者の自宅へお迎えに行くと、ご家族がこんなことを言いました。
『なにか、朝から様子がおかしい。でも、話しかければ反応はあるし、大丈夫でしょうか?』
え?と思い、職員が部屋へ向かうと、
職員視点では、今すぐ救急車を呼ぶべき状態となっている御利用者がいました。
もともと、寝たきりに近い状態の方で、声をかけてもなかなか反応が得られないような方でした。
しかし、その日は、口元からよだれが垂れ、手足は冷たくなり、爪も変色し、目もうつろな状態でした。
確かに、ご家族の言葉通り、声かけにかすかな反応はありましたが、それどころではない状態です。
職員がすぐさまご家族へ救急車を呼ぶよう指示し、なんとかしようと努力しましたが、結局、その方はそのまま亡くなってしまいました。
その方にとって、その『死』はどうだったのか?
ご家族にとって、その『死』はどうだったのか?
皆さんは、冷静に、判断できますか?
④周囲
『死』というのは、周りに与える影響も大きいものです。
皆さんは、自分が死ぬという瞬間に、周りで家族がケンカを始めたらどうですか?
『もう少しで亡くなると思います』
医師からそう告げられ、介護士はすぐにご家族へ連絡を取り、来てもらいました。
ご家族皆さんがそろうまで、その方は呼吸をしていて、介護士は良かった、と思っていました。
しかし、ご家族の間できちんと情報交換ができていなかったのか、責任者である息子様へ
『こんな状態とは知らなかった』『何故こんなになる前に連絡をくれなかったのか?』『遺産はどうするのか?』『お墓の準備は?』
など、詰め寄ったご家族がいました。
それに対して、息子様も応戦し、結果、大喧嘩が始まりました。
亡くなるご本人は、とても優しく、家族想いな方でした。
息子様もよく面会に来られており、おそらく、お二人の間では、きちんと考えがまとまっていたのでしょう。
息子様が連絡し忘れていたのか?
ご本人が連絡をするなと話していたのか?
息子様は誰かに連絡を入れていたが、どこかで情報が途切れてしまっていたのか?
どういう経緯なのかは分かりません。
ただ、介護士の視点から見れば、せめて、ご本人が息を引き取ったあとに、ケンカをしては?と思いました。
皆さんは、自分が死ぬ時、周囲へ与える影響を考えたことはありますか?
……皆さんは、『死』をどのように捉えていますか?
よく、御利用者からこんな話を聞きます。
『早く死にたいけど、心臓が止まらない』
『こんなに迷惑をかけるくらいなら、早くあっちに行きたい。申し訳ない』
『本当に皆さんによくしてもらっていて、それはありがたいけど、それが申し訳ない』
『昔は、こんなところ(介護施設など)はなかった。だから長生きするんだ』
『こんなことになるなら、じいちゃん(ばあちゃん)と一緒に死にたかった』
心臓は、止まれ!!と思っても、止まりません。
皆さんは、自分が死ぬ時、
どんな風に死にたいですか?
介護士は、『死』を人よりも多く経験する分、自分自身の『死』についても考える機会が多いです。
皆さんはどうでしょうか?
届け介護士の声。