27 パラレルタブレットを使った実験
文字数 2,524文字
トライブは、モノクロのアリスが持っていたパラレルタブレットから目を反らした。
万が一、モノクロのアリスがシナリオを書いたトライブの物語が始まってしまえば、本当に元の世界が遠くなってしまうからだ。
トライブは、アリスの目をじっと見ながら尋ねた。
トライブは、かすかに後ろを振り返った。
ソフィアはいなかった。
すぐさまトライブは、再びアリスの目を見ながら話かけようとしたが、トライブの口が開くか開かないかのうちに、アリスが何かを思い出したような表情に変わった。
トライブ。
俺は、このタブレットそのものじゃなくて、中に入っているチップを調べた方がいいと思うよ。もしトライブをさらに別の世界に連れて行こうとするのなら、中には意図的に埋め込まれたチップが入っているはずなんだからさ。
トライブは、王室の全体を見渡した。
そこに、やはりと言うか、パソコンらしきものはなかった。
私とアッシュは、一緒に元の世界からやってきたのよ。
そんなアッシュが、私を二重に転送させるなんてことはしないはずだし、もし他の誰かがアッシュにタブレットを持たせたとしても、危険を察して抜いてしまうと思う。
そう言って、トライブはパラレルタブレットを持ち上げて、画面を覗き込んだ。
仮説通り、パラレルタブレットから白い光は出てこなかった。
パラレルタブレットをモノクロのアリスに返そうとしたトライブは、右の人差し指の先に出っ張りを感じ、パラレルタブレットの下に右手を当てた。
そしてトライブは、パラレルタブレットをひっくり返して後ろを見た。
タブレットの後ろには、セロテープで留めただけのチップがあった。
いまパラレルタブレットに差し込まれているチップとは、そっくりのものだった。
その瞬間、タブレットの画面には「チップが差し込まれていません」という警告が現れた。
そして、トライブはタブレットの後ろからもう一つのチップを剥がして、二人に見せた。
そこには、一つのシナリオのタイトルが表示されているだけだった。
トライブの右手に持っていたパラレルタブレットが突然振え始め、ブーッ!ブーッ!というけたたましい音が王室を包み込んだ。