33 これが少女の作ったダンジョンか
文字数 2,736文字
トライブとリオンは、トイレと思われる場所から左に進む。
電気がついていない分、リオンの持つライトニングセイバーから放たれるわずかな光が頼りだ。
10メートルほど進んだだろうか。
不意に、トライブの耳に水のしたたる音が聞こえてきた。
そう話している間に、トライブは水が落ちてきていると思われる場所の前に立った。
足下には巨大な水槽が置かれているものの、溢れそうなところまで水が溜まっている。
そして、リオンの言っていた通り、ピチョン、ピチョンと10秒ほどしたたり落ちた後に、全く水が落ちてこなくなる時間が5秒ほど続いているのだった。
トライブは、すぐさまもう一つの水槽を先程まで水の溜まっていた水槽の上に置いた。
そして、軽く笑ってみせた。
トライブは、突然立ち止まった。右足で、わらとは違う何かを踏んだような気がして、思わず目を丸くした。
次の瞬間、トライブは息を飲み込んだ。
リオンが思わず声を上げた瞬間、巨大なアリはトライブを避けて、リオンに向かってジャンプした。
トライブは、後ろからアルフェイオスをかざすも、暗闇の中で動き回る巨大アリに命中させるのは難しかった。
巨大アリが、怯えるリオンの前で立ち止まり、小さな舌を出している。
まるで、リオンという名のおいしい蜜でもあるかのように、巨大アリがリオンをじっと見つめている。
そして、リオンはついに決断した。
リオンは、手に持つライトニングセイバーを一気に輝かせ、アリが迫ってくる方向に一気に振り下ろした。
だが、アリは逃げるのが速い。振り下ろしたライトニングセイバーが、床に手応えを感じた。
どうやら、床に大きな穴を開けてしまったようだ。
そして、その穴から巨大アリがするすると落ちていく。
その時、次の一歩を踏み出したトライブは、床が妙に柔らかいことに気付いた。
そう言って、リオンはトライブのいる方に飛び上がった。
トライブが息を飲み込むのがリオンの目に入ったが、反射神経で決めた動きに逆らうことができなかった。
そして、リオンはトライブの目の前に着地した。
二人の立っている床が重さに耐えられなくなったのは、その瞬間だった。
リオンが真っ二つに切り裂いた床が、一瞬にして崩れ落ちる。
足場を失ったリオンに、トライブはすぐに手を伸ばし、その右腕を掴んだ。
トライブは、リオンを懸命に持ち上げる。
だが、いくら剣で鍛え上げた腕とは言え、同じく剣士のリオンを、トライブが片手で持ち上げるのは厳しかった。少しでも重心を前に傾ければ、トライブともども落ちてしまう。
トライブは、力を振り絞って、ようやくリオンを床の上に載せた。
戦ったわけではないのに、肩で呼吸するトライブに、リオンが肩を軽く叩く。
そうリオンが言った瞬間、トライブは柱の陰にハシゴを見つけた。
長さにして、穴をゆうにふさぎそうなハシゴだった。
リオンがハシゴを穴の向こう側目掛けて降ろす。ここはうまくハシゴをかけられたようだ。
すぐに、トライブとリオンはハシゴを渡り、さらに続くダンジョンの奥へと足を踏み入れた。通路の先にあったのは、なにやら広い部屋のようだ。
リオンが、ライトニングセイバーをより強く輝かせて、部屋の四方八方を探る。
そして、その光が一周しかけたその時、リオンが何かに気付いたようだ。
トライブは、手を伸ばした先にあるスイッチを、一気に全て押した。
すると、リオンの剣が照らした蛍光灯が一斉に光を放ち始めた。
トライブは、蛍光灯に照らされた部屋を隅々まで見た。
だが、肝心のドアの手前に鉄格子が貼り付けられており、ドアノブに手を触れることもできなかった。
その時だった。
二人の頭上で、何かが落ちてくるような音が轟いたのだ。