55 物語のエンディング
文字数 2,570文字
ソフィアが再び叫んだと同時に、敗者の武器が床へと叩きつけられた。
そして、勝者はその武器を、敗者の目に向けてまっすぐに構えていた。
かつてないほどのパワーがぶつかり合った空間に、戦いの終わりを告げる軽やかな風が吹き抜ける。
そして、張り詰めた空気から解き放たれたように、その場に新たな言葉が生まれた。
息も絶え絶えに、それでも叫ぼうとするトライブの表情から、少しずつ笑みがこぼれてきた。
「クィーン・オブ・ソード」の一撃が、オルティスの野望を打ち砕いたのだ。
その真下で、バーニングブレードがその輝きを失い、オルティスの体からも赤いオーラが消えていく。
武器を失い、トライブを睨み付けながらも徐々に頭を垂れる、赤い髪の剣士は、やがてその場に跪いた。
するとトライブは、アルフェイオスをゆっくりと上げ、オルティスの頭上で止めた。
そして、オルティスに告げた。
たしかに、バーニングブレードを持ったあなたは、とても強かった。
けれど、今までのあなたを見て、あなたともう一度戦おうとは思わないわ。
オメガピースを邪悪な組織に仕立て上げ、物語の全てを恐怖に陥れる。
私は、あなたを絶対に許すことはできない。
トライブは、高く上げたアルフェイオスを一気に振り下ろした。
全身にその一撃を刻まれた一人の剣士は、床に崩れ、そのまま動かなくなった。
その瞬間、ソフィアの目に涙が溜まっていたのを、トライブははっきりと見た。
トライブは、ソフィアの一言で軽く息を飲み込んだ。
激しいバトルを繰り広げていて、すっかり忘れかけていたことを思い出したのだ。
ソフィアがそう言うと、少しずつ冷たくなったオルティスに手を伸ばし、ポケットから白く輝く小さな剣を取り出した。
召使いのアリスが、廊下の奥を指差した。
ちょうど青い髪の青年が、まるで図ったかのようにトライブたちに向けてゆっくりと歩いているところだった。
トライブがそう言った瞬間だった。
突然、トライブの視界から、アッシュの姿が消えた。
アッシュが、廊下の真ん中に作った落とし穴に、まんまとはまったようだ。
それを見るなり、アリスがアッシュに向けて駆けていく。
手には、やはりあのボードを持っていた。
トライブは、アリスに向けて軽く笑うと、すぐに体の向きを変え、動かなくなったリオンの前に進み、中腰になって物言わぬ顔を見つめた。
ソフィアも、ほぼ同時に体の向きを変える。
そう言うと、トライブは軽くうなずいて、ソフィアから渡されたリライト・ブレードを、ゆっくりと目の高さにまで上げた。
白く輝くその剣の先に、トライブはほんのわずかに残った希望を見た。
ソフィアの物語から、元の世界に戻れる唯一の手段を、トライブは口にしようとしていた。
トライブは、そのように口にした二人を軽く見て、再びリライト・ブレードを見つめた。
そして、何秒かの空白を挟んで、リライト・ブレードに告げた。
トライブが、力強くそう言った瞬間、リライト・ブレードがこれまでにないほど強く輝き、やがてエクアニア城の廊下を眩しく照らした。
リライト・ブレードの光は、次々と広がっていった。
やがて、廊下から順番に静けさを取り戻した。
だがそれは、トライブの運命が変わった後だった。
トライブ、ソフィア、それにアッシュだけが、リライト・ブレードの光よりもさらに眩しい光に包み込まれた。
一度は静けさを取り戻したはずの視界から、再び物語の世界が消えていく。