50 物語はエンディングへと近づく
文字数 2,935文字
緑色の光の外に、エクアニア城の廊下が見えてきた。
「オメガピース」の城へと向かうときに乗った転送装置と、やはり同じ場所に辿り着いた。
トライブがアッシュ・デストラに投げ落とされたときは、城兵たちも「オメガピース」に従ってしまったが、いまトライブの目に映る光景は、廊下を見守るように城兵が立っている、ごくありふれた光景だった。
それを見て、トライブは小さく息をついた。
トライブは、ソフィアを抱えるようにして、転送装置から一歩足を踏み出す。
すぐ目の前に、使われていない部屋を見つけ、そこでソフィアを寝かせることにした。
リオンの声で気付いたトライブは、思わず部屋の外に目をやった。
ちょうど見慣れた茶髪の少女が、スキップしながら廊下を通り過ぎていくところだった。
リオンは、アリスに顔を向けながら、ソフィアに右腕を伸ばす。
だが、アリスは横になっているソフィアの姿を見た瞬間、思わず一歩後ずさりした。
トライブは、アリスを必死に説得するも、アリスはその度に首を横に振る。
しばらくして、再びソフィアの声がトライブの耳に届いた。
トライブの呼び止めも空しく、アリスはスキップしながら転送装置に足を踏み入れていた。
トライブが足を動かそうとしたときには、既にアリスが全身緑色の光に包まれていて、手遅れになってしまったのだ。
それから数秒経って、リオンが背後からトライブに近づき、肩をポンポンと叩いた。
トライブは振り返ってリオンの顔を見たが、その表情は真っ青だった。
その時トライブは、遠目にもう一人のアリスの姿を見た。
モノクロの見えるアリスは、小走りに何かを探している様子だった。
オルティスは、血も涙もない剣士だ。
それに、一度は俺に撃たれているわけだから、俺に対して復讐をしようとしているに違いない。
だから、俺はあのチップを拾わなければいけなかった。
モノクロのアリスはそう言うと、すぐに部屋に入り、ソフィアに右腕を伸ばし、魔術の詠唱を始めた。
それを見て、トライブとリオンは転送装置に向き直る。
その時、ふとリオンがトライブにささやいた。
そう言って、トライブとリオンは転送装置に向かってゆっくりと近づいていった。
だが、転送装置に足を踏み入れようとした瞬間、その転送装置から解き放たれる緑色の光の先に、見覚えのあるシルエットがくっきりと浮かんでいるのが、トライブの目に見えた。