09 ソフィアをさがしに
文字数 2,567文字
茶番と言わずに、ドッキリと言って下さいよー!
話を戻します。
おそらくエクアニア王は、その217号室でオルティスに捕らわれ、尖塔でやられちゃったんですよ。そうなると、217号室にオルティスが来たということになるんです。
たしかに、王子の言う通り、ソフィアさんには直接結びつかないかも知れません。
でも、私たちが城で王の行方を捜していたときには、オルティスがいるような感じがしなかったのだから、オルティスが私たちと入れ替えに城に入ってきて、尖塔に向かう途中でエクアニア王とソフィアさんを……、ということになると思うのです。
そういうこと。
そして、オルティスが門を破って城まで入ってきたのだから、ソフィアはその場所でオルティスと戦って、負けてオルティスを通すことになった。
オルティスが入ってきたのに城下が騒がなかったのは、オルティスが城下の人たちを口封じしたから……、と考えるとちょうど合うのかも知れない。
王室のドアが開き、また閉じた。
ソフィアがオルティスによって殺された。
大っぴらに言葉にしたくもなかったはずの可能性が、アリスとのやりとりの中で少しずつ現れてしまったことに、トライブはため息をつかなければならなかった。
トライブは、リオンの言葉にほんのわずかだけ首をかしげた。
王が殺されたことによって、トライブが新たな女王になったところまでは知っているが、それ以前に「この世界で」何があったのかを、リオンは何も知らない。
リオンの落ち着いた表情が、トライブには逆に奇妙としか思えなかった。
その時、アリスと思われる走り方で廊下を駆けてくる足音が、二人の耳に入った。
王室のドアが勢いよく開いた。
そう言うと、アリスは握りしめていた左手をゆっくりと広げ、トライブに見せた。
そこには、プラチナのネックレスのかけらがあった。
トライブは、それを数秒見て思わず息を飲み込んだ。
これ、ソフィアがよくプライベートで使っているネックレスよ。
ちょうど首に合う長さで、一つ一つのパーツもこういう感じで作られている。
きっと、ソフィアは私を追いかけたときにネックレスが切れて、誰にも言わずにプラチナの原石を探しに行ったと思うの。
洞窟の中にはモンスターが潜んでいることもあり、武器や防具、それにアクセサリー類を鍛冶屋が作ろうとしても、その材料を取るのはあまりにも困難な冒険になるケースが多かった。
剣士をはじめとした冒険者が材料を取ってきて、初めて鍛冶屋がアイテムを作れるようになるのだ。
そのため、大量に材料が手に入った場合を除いて、鍛冶屋は専らその冒険者のためにアイテムを作ることになる。つまり、冒険者の使うネックレスが切れて、また新しいネックレスを作ってもらう場合には、自らが新たに材料を手に入れないといけなくなる。