53 最凶剣士オルティス・デストラ 覚醒!

文字数 2,914文字

フフフ……。

思い知ったか、この物語で生きる全ての者よ。

オルティスが、すっかり変わり果てた姿でタブレットから抜け出した。


その赤く染まった髪をも包み込むような緋色のオーラ、そしてその手に燃え立つような刀を携える。

一歩、また一歩と迫るオルティスの姿は、この世の果てを再現したようなものだった。

オルティス、あのシナリオの中でバーニングブレードを持ってしまったのか……!

そうだ。


バーニングブレードの力を操る我こそ、理想の姿であり、天地最強の力を携える神、オルティス・デストラだ。


オルティス・デストラ……!

私がこの力を手に入れたとき、物語は真の終わりを告げる。


灰の神の力でお前たちをここまで陥れ、最後の最後で、私がオメガピースとエクアニア、そしてこの世界の全てを我が物にするのだ!


さぁ、見るが良い。

バーニングブレードに、全てが跪く瞬間をな!

オルティス・デストラが、一歩、また一歩とトライブたちに近づきながら、バーニングブレードをX字を描くように軽々と動かす。

そこから溢れ出るパワーは、もはやこれまでのオルティスとは比べものにならないほど激しい。


トライブは、オルティス・デストラの目をじっと見た。

私たちで、オルティス・デストラの野望を食い止めるしかないわ!

あぁ!

これで、全てを終わらそうぜ!

トライブがリオンの返事にうなずいた瞬間、二人は同時に、オルティス・デストラに向けて走り出した。


これまで、数多くの強敵に立ち向かった、アルフェイオスとライトニングセイバーが、空気を切り裂くかのようなうなりを上げ、最後の標的へと向かっていった。



だが、オルティス・デストラが体を軽く右に傾けながら、リオンにバーニングブレードを向けて走り出した。

私は、物語を完全に終わらせるのみ!

リオンの真正面から、オルティス・デストラが迫る。

二人で挟み撃ちにしようとしていたが、こうなるとトライブは横からオルティス・デストラの動きを止めるしかない。


だが、かつてないスピードで迫るバーニングブレードの動きを、トライブの目ですら捕えることができない。

リオンがライトニングセイバーを振り上げようとしたときには、既にリオンの頭上にバーニングブレードが迫っていた。

リオン!

トライブは、ここでようやくバーニングブレードの現在地をたたき込んだ。

リオンも、ほんの瞬き程度の時間だけ頭上を見上げ、ほぼ同時にライトニングセイバーを上に振り上げた。


だが、バーニングブレードが鋭い軌道を描き、ライトニングセイバーに降りかかる。

いっ……!

バーニングブレードのパワーが、ライトニングセイバーを持つリオンの手に、一気に溢れかえる。


リオンが相手の激しい力に押され、もはや剣を振り上げることができない。

あっという間に、ライトニングセイバーの剣先は地面に向けられた。

はあっ!

完全に動きを止められたリオンを見た瞬間、トライブは一気に動き出した。

オルティス・デストラの真横から、勢いよくアルフェイオスを振り上げ、リオンの剣を傾けたバーニングブレードを、そのはるか高いところから叩きつけようとした。


だが、オルティス・デストラは、その動きを感覚だけで捉えていた。

甘いっ!
……っ!

オルティス・デストラが、突然体の向きを変え、トライブの攻撃を正面から止めた。

そして、下からバーニングブレードを振り上げ、アルフェイオスを上に持ち上げる。


激しい衝撃とともに、トライブの足が一歩下がる。

それでも、次の一撃を仕掛けようと、トライブはアルフェイオスを右に傾ける。

だが、オルティス・デストラが一歩早く、トライブの左肩目掛けてバーニングブレードを振り下ろした。

だっ……!

トライブは、痛みのあまり、剣を持つ右手で左肩を軽く押さえた。


オルティス・デストラがこの状況でとどめを刺せば、どうすることもできなくなる。そう思ったトライブは、ほんの数秒左肩を押さえただけで、再びアルフェイオスを構えた。

だが、とどめを刺されたのは――。

リオン!
死ぬがよい!

オルティス・デストラが、リオンに再び体を向け、バーニングブレードを真上から振り下ろす。

そのタイミングで、リオンもライトニングセイバーにグッと力を入れ、白く輝かせた。

スパークリングフラッシュ!

リオンは、白く輝くライトニングセイバーを、バーニングブレード目掛けて振り上げた。

だが、時既に遅しだった。



ライトニングセイバーが相手の剣にかする間もなく、バーニングブレードの鋭い一撃が、リオンの首から胸を深く斬りつけた。

リオンの目が、ほんのわずか大きくなる。そして、その場に崩れ落ちた。

くっ……、そっ……!

白く輝いたまま、床に落ちたライトニングセイバー。

その目の前で、もはや目も開けられないほど苦しむリオン。


ソードマスターであり、騎士団長だった青年は、もう立ち上がれない。

そこに、容赦なく真上から振り下ろされる、バーニングブレードの一撃。


深く、重い音が、トライブの耳にもはっきりと聞こえた。

声に出すよりも早く、トライブの目には涙が溜まった。

リオオオオン!

トライブは、首を横に振って、アルフェイオスを力強く握りしめた。

そのまま、一気にオルティス・デストラに真横から攻め込もうとした。


だが、オルティス・デストラは、トライブに全く振り返ることなく、その目の前にある部屋へと駆け込んでいった。

そこには、ようやく起き上がったままの――いや、この局面で起き上がるしか道がなくなった――ソフィアが、ストリームエッジを持ってオルティスの攻撃を受けようとしていた。

お前が死ねば、物語は無秩序になるんだったよなぁ。
どうして……、どうしてこんなことになっちゃうの……!

その瞬間、オルティス・デストラの持つバーニングブレードが、ストリームエッジを激しく叩きつけ、ストリームエッジの剣先を床に傾けた。

ソフィアの目に、オルティス・デストラの勝ち誇ったような表情が、一瞬だけ浮かぶ。

お前の設定の抜け穴に、決まってるだろうが!

ハハハ……!

私は、オルティスをそんなキャラにした覚えはない。
黙れ!

そう言った瞬間、オルティス・デストラはバーニングブレードを軽く斜め右上に傾けた。

そのまま、バーニングブレードの軌道が、ソフィアの左肩から胴体を目掛けて走り出した。


ソフィアは、ストリームエッジを戻すこともできず、息を飲み込むだけだ。

絶体絶命を見たその目が、祈るように閉ざされる。

やめなさいっ!

トライブは、ソフィアとオルティス・デストラの間にアルフェイオスを突き出し、バーニングブレードの動きを力ずくで食い止めた。

バーニングブレードのパワーで、じりじりと押されつつあるが、ソフィアの体すれすれのところで止めた軌道からは反らすことができた。

この悪あがきめ……。

オルティス・デストラ……。


この物語を、あなたの好き勝手にさせない!

これは、私の物語よ!

その強がりが、愚かだと言ってるだろう。


もういい加減、終わりと認めろ。

私は、まだ終わったわけじゃない……!


女王として、私は最後まで戦い続ける!

アルフェイオスが、やっとの思いでバーニングブレードを押しのけ、そしてオルティス・デストラと一直線になる。


「クィーン・オブ・ソード」の手に、本気のパワーが宿り始めていた。

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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳

女剣士。トライブの最大の親友で、最大のライバル。ソードマスターになるため、実力で上回るトライブに常に対抗心を燃やす。富豪の令嬢で、クラシックをはじめとした音楽が好き。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。ソードマスターの時に謎の失踪を遂げた、とされているようだが……。

アリス・ガーデンス


15歳

「オメガピース」ではトライブのルームメイトで、銃使い兼魔術師。お菓子ばかり食べ、何かとお騒がせなことをやってしまうドジっ娘。

アッシュ・ミッドフィル


23歳/ライフルマスター

冷静な判断力と圧倒的な銃の腕を持つ、絶対の銃使い。自らの誤射で家族と家を失い、モンスターの潜む森で1年間生き抜いた過去を持つ。トライブが送られたパラレルワールドのシナリオを作った張本人。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

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