25 トライブvsリオン

文字数 2,554文字

俺は、この物語を終わらせてみせる。

エクアニアの王になり、この国の平和を俺自身の手で守ってみせるんだ!

リオン、待ちなさいよ。

まさか、本気で王の椅子を狙っているわけ?

あぁ。

トライブが女王のままでは、いつになっても終わらないからな。

リオンは、ライトニングセイバーをトライブに向けたまま、一歩、また一歩と近づいてくる。

トライブも、いよいよアルフェイオスを構え、今にも立ち向かってきそうなリオンに剣先を向けた。

戦うしかないようね。
勝負だ!
リオンの足が勢いよく床を蹴り、ライトニングセイバーを真横から流しながら、一気にトライブに攻め入る。
うおおおお!
はっ!

ライトニングセイバーがうなりを上げて、トライブの持つアルフェイオスを叩きつける。リオンは最初からフルパワーだ。

激しい衝撃が、トライブの手と腕に伝わる。


だが、トライブは右足に力を入れ、リオンの一撃に食い下がる。

そして、懸命にライトニングセイバーを弾き返し、すかさずアルフェイオスをライトニングセイバーの剣身に叩きつけた。

こんな程度で、私は動じない!

トライブは、次々とアルフェイオスをリオンの剣に叩きつけ、リオンのパワーを押さえつけにかかる。だが、リオンも攻撃を受けてはアルフェイオスを弾き返し、その手に入れる力を強める。


スピードはトライブが優勢だが、剣を叩きつけるパワーはリオンの方に分があった。

実力と実力のぶつかり合いだ。



トライブが最初にリオンと剣を交えることになったとき、決着はつかなかった。

どちらが強い剣士かを決めることができなかった。

だからこそ、トライブの気持ちは次第に湧き上がる。

「かつての」ソードマスター、リオンに負けたくないと。

はああっ!
そうはさせるかっ!

トライブは、アルフェイオスをリオンから軽く引き離し、力を溜めて一気にライトニングセイバーを叩きつけた。


リオンの左足が、わずかに下がる。

それでも、リオンの手に滾るパワーは弱まることを知らない。

流されたライトニングセイバーの向きを立て直し、今度はアルフェイオスをぐいぐいと押していく。


突然、リオンの目がぱっと大きくなった。

とどめだ!

スパークリングフラッシュ!

……っ!

ライトニングセイバーが白く輝くのが、トライブの目に飛び込んだ。

バトルが均衡している状態から、リオンは必殺技で勝負に出たのだ。


一気に決められてしまう。

トライブにとっては、予想外のたたみかけ方だった。

たあああっ!

わずか2秒。

リオンのパワーと本気が、トライブの真上からアルフェイオスを強く叩きつけた。

ぐっ……。

トライブの剣から、これまでのダメージをはるかに上回る衝撃が右手に溢れ出す。

重心が一気に後ろに傾き、トライブは思わず一瞬目を閉じた。


その間にも、容赦なく白く輝くリオンの剣が、アルフェイオスを叩きつける。

トライブは、何とか手の力だけは緩めないようにするも、攻撃のスピードがリオンの勢いに呑まれてしまい、反撃の糸口が掴めない。



「クィーン・オブ・ソード」の表情に、わずかな焦りの色が映る。


だが、それは同時に、女王が桁違いのパワーを見せる前触れでもあった。

私は……、屈しないっ!

体勢を立て直したトライブは、白く輝くライトニングセイバーをアルフェイオスで強く叩きつけ、ついに勢いを止めた。


一瞬だけ力が弱くなりかける、リオンの手。

その瞬間を、トライブは見逃さない。

これまで何度となく強敵を撃破した、「剣の女王」の感覚が冴える。

はあああああっ!
なっ……!

トライブの激しい一撃が、ライトニングセイバーを一気に押し戻す。

ライトニングセイバーの放っていた白い輝きが、その瞬間に消えた。


リオンも何とかトライブの攻撃を止めるが、序盤で見せたパワーが少しずつ弱くなっているように、トライブには感じた。

逆に、トライブはここで剣に込めるパワーを一気に上げていく。



相手の攻撃が弱まったとき、その力を一気に解き放つ。

トライブの見せるパワーコントロールが、リオンをも追い詰めた。



そして、トライブは全身のパワーを一気にアルフェイオスに集中させた。

はああああああっ!

トライブは、魂から発するようかのに力強く叫び、アルフェイオスを一気に振り下ろす。

「クィーン・オブ・ソード」と呼ばれるに十分すぎるほどのパワーが、いまリオンの剣に向けて解き放たれた。


激しい音とともに、リオンの手からライトニングセイバーが弾かれ、床に落ちていく。

一度、二度とバウンドし、ライトニングセイバーはテラスの反対側まで突き飛ばされた。



決着は、ついた。

俺の負けだ。強いよ……。

リオンだって、強いじゃない。

あそこまで追い詰められるとは思わなかったわ。

追い詰めたと思ったんだけどね。


そこから、トライブが見せる強さに呑まれていった感じ。

決して油断したつもりじゃないのに、トライブがどんどんパワーを上げていくんだもん。

そうね。

でも、それが私の得意とする戦い方だし、それで何百人もの強敵を打ち破ったのよ。

トライブは、やや荒い息を吐き出しながらも、かすかに笑ってみせた。


そして、一呼吸置いてリオンに尋ねた。

リオン。

一つだけ教えて欲しいの。

何を聞きたいんだ?

私を襲ったのは、オメガピースの命令なの?

それとも、この物語が指示している運命なの?

どっちも。


と言いたいところだけど、俺の性格的には、運命の方かな。

リオンなら、そう言うと思ってたわ。


でも、運命なんて、その気次第で変えることができる。

例えば、絶対負けると言われた中で、強敵を倒すときとか。

たしかに……。

運命なんて、本当は誰も動かすことなんてできない。

私は、この世界で自分自身に対する運命を、打ち破るのよ。

つまり、トライブがこれから勝ち続ける、と。

灰の神にも勝って、この物語を違った形で終わらせる。

リオンは、やや考えるしぐさを見せながら、トライブに言った。

終わらせるというか……、どうせなら行き着くところまで行きたいわよ。

そして、死ぬ以外の方法で元の世界に戻れる道を探すわ。

なるほどね……。


俺には、ちょっと無理な度胸かもな。

リオンは、軽く笑った。

そして、ポケットに移し替えたリライト・ブレードの欠片に、軽く目をやり、すぐにトライブに視線を戻した。



その時、二人の剣士の耳に、聞き覚えのある声が響いた。

運命は変えられないわ。

私が、その全てを握っているもの。

ソフィア……?
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登場人物紹介

トライブ・ランスロット


25歳/17代目ソードマスター

男性の剣豪をも次々と圧倒する女剣士。軍事組織「オメガピース」では、女性初のソードマスター。相手が隙を見せたときに力を爆発させるパワーコントロールと、諦めを許さない熱いハートで強敵に立ち向かう。その強さに、「クィーン・オブ・ソード」と称されるほど。

ソフィア・エリクール


25歳

女剣士。トライブの最大の親友で、最大のライバル。ソードマスターになるため、実力で上回るトライブに常に対抗心を燃やす。富豪の令嬢で、クラシックをはじめとした音楽が好き。

リオン・フォクサー


21歳/9代目ソードマスター

地元ルーファスで自ら率いる自警団「青い旗の騎士団」で活躍し、「オメガピース」でもソードマスターの座をつかみ取る。力でグイグイ押していくパワー型の剣士。ソードマスターの時に謎の失踪を遂げた、とされているようだが……。

アリス・ガーデンス


15歳

「オメガピース」ではトライブのルームメイトで、銃使い兼魔術師。お菓子ばかり食べ、何かとお騒がせなことをやってしまうドジっ娘。

アッシュ・ミッドフィル


23歳/ライフルマスター

冷静な判断力と圧倒的な銃の腕を持つ、絶対の銃使い。自らの誤射で家族と家を失い、モンスターの潜む森で1年間生き抜いた過去を持つ。トライブが送られたパラレルワールドのシナリオを作った張本人。

オルティス・ガルスタ


年齢不詳/20代目ソードマスター

「悪魔の闇」を打ち破った者は願い事を叶えることができる。その言い伝えに身を投じ、世界の支配者になろうとする邪悪なソードマスター。パワーやスピードは歴代ソードマスターの中で最高レベル。

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