24 示された交換条件
文字数 2,777文字
リオンの視界が開けると、そこは先程見た隠し部屋だった。
床が上昇したような感じではなかったので、赤い扉の向こうに出ることはないだろうと思っていたが、リオンが戻ってきた場所は、まさにモノクロのソフィアの目の前だった。
モノクロのソフィアは、リオンの返事をやや理解できないような表情で、言葉を返す。
そもそも、モノクロのソフィアには、トライブが「異端者の奈落」に送られた事以外、何も知らされていない。そのことに、リオンはすぐに気が付いた。
モノクロのソフィアは、そう言って右手を差し出した。
そして、リオンの目をじっと見つめている。
年上であるソフィアのまじまじとした視線に、リオンの目線は釘付けになる。
リオンは、次に何を言おうとしていたかすら忘れ、モノクロのソフィアの「誘い」に取り込まれていく。
リオンは、表情に出すことなく心の中で返事をした。
図星だった。
いま、この段階で左手をほどくか、手の平を上に向けてしまえば、モノクロのソフィアにリライト・ブレードの存在がバレてしまう。
リオンは手を震わせないように意識するも、どうしても目だけは左手に向かいかけてしまう。
そして、ついにリオンは諦めた。
リオンは、この段階で確信した。
「オメガピース」じゅうの兵士たちに、リライト・ブレードが狙われることを。
だが、モノクロのソフィアは少し考えるしぐさを見せた後に、ゆっくりとリオンに近づき、一度首を縦に振った。
リオンの目の前が、一瞬真っ白になった。
肩をすぼめ、目線をやや斜め下に下げた。
ウソだろ、と小声で言いかけようとさえした。
だが、数秒も経たないうちに目線を元に戻し、モノクロのソフィアの目を再び見つめた。
そう言うと、モノクロのソフィアは右手を高く上げて、一人の兵士に何かを合図した。その兵士は、胸のポケットからスプレーのようなものを取り出し、モノクロのソフィアに渡した。
モノクロのソフィアは、リオンに軽くスプレーを吹きかけ、かすかに微笑んだ。
それと同時に、リオンの目に緑色の光が飛び込んできた。
リオンは、緑色のオーラの向こうに見えなくなりかけた、モノクロのソフィアを最後まで見ていた。
その表情は、笑っていた。
エクアニア城に朝の光が差し込んだ。
トライブは、王室の隣にあるベッドルームを、アルフェイオスと一緒に出て、視界の広いテラスから新しい一日の始まりを眺めていた。
その時、トライブは緑色の光が目に飛び込むのを感じた。
光の気配で後ろを振り返ると、その光の中から転送装置が現れた。
トライブはやや早足で、転送装置に向かう。
中にいたのは、予想していた通りリオンだった。
だが、リオンは既にライトニングセイバーを手に持って、トライブをじっと見つめていた。
そして、こう言い放った。
トライブは、一瞬で嫌な予感を抱いた。それでほぼ間違いなかった。
エクアニア城のテラスを舞台に、ソードマスターどうしのバトルが始まろうとしていた。