44 vs城兵
文字数 2,626文字
2対172――
そのことが何を意味するか、剣を手にするトライブとリオンにははっきりと分かっていた。
素人相手ではない。向こうもこれまでエクアニアを守ってきたプロだ。
二人の目が細くなり、そして一気に足を踏み込んだ。
トライブは、まず正面で構えていた城兵の剣をあっさりと落とす。
だが、それを待っていたかのように、複数の城兵たちがすぐにトライブを取り囲んだ。
10本の剣先が、半径10mほどの円周上に並ぶ。
しかし、トライブは怯えない。
軽く周囲を見渡した後、その中で最も長い剣を構えた長身の兵士から時計回りに剣を叩き落とす。
城兵たちが次々とトライブの体を貫こうとするが、最後の一人まで何とか無傷で10人を退けた。
一方のリオン。
城兵の密度はトライブほどではないにしても、周りに8人ほどが取り囲んだ。
リオンは、まだ5人くらいしか倒していないところで、ライトニングセイバーを力強く握りしめた。
白い光が、その剣に宿る。
リオンの力強い叫びとともに、白く輝いた剣が次々と城兵たちの剣をなぎ倒していく。
リオンの周りを取り囲んだ8人だけではなく、さらに外側にいた10人を一気に退けた。
序盤から一気に攻め込むリオンは、早くも荒い呼吸をしていた。
こんなにも早く20人以上の兵士を倒したことはほとんどない上、それでもまだ多数の相手が残っている。
スパークリングフラッシュの光が消えたリオンに、まだ剣を持っている城兵たちが数名、ほぼ同時に迫ってくる。
リオンの目が、一瞬細くなる。
リオンは、迫ってくる城兵たちに正面からライトニングセイバーを叩きつけた。わずか3人だが、肩に力を入れ、風を斬るような速さで剣を振り下ろす。
リオンの目の前から一瞬城兵がいなくなったとき、リオンの目に映ったのは、先程よりさらに輪をかけて城兵に囲まれているトライブの姿だった。
トライブの目が、再び周囲を見渡す。
そして、先程よりも速いスピードで、アルフェイオスを城兵たちの剣に次々と叩きつける。
だが、15人に囲まれたうちの11人目、黒髪の男性と目が合ったとき、相手の表情が余裕を浮かべていることに、トライブは気が付いた。
トライブがアルフェイオスを振り下ろすのを待っていたかのように、黒髪の兵士が剣を高く上げ、アルフェイオスのパワーを押さえつけた。
じりじりと押し返されるトライブは、一旦剣を引き、黒髪の兵士に対して正面から迫った。
だがその時、トライブの右目に一人の兵士が斜めから迫ってくるのが映った。
それでも、トライブは動きを止めない。
黒髪の兵士の剣を今度は叩き落とし、そのまま右に剣先を向け、斜めから迫ってきた城兵の攻撃を、体すれすれのところで食い止めた。
剣先で食い止めたため、ほとんど力が入らないが、それでもトライブは相手の力が緩んだ瞬間に素早く攻撃に出た。
そのまま、トライブは取り囲んでいた15人の剣を全て落とした。15人の小部隊が立ち去った後には、地に落ちた数多くの剣が横たわっていた。
しかし、それでもトライブたちの前には100人近くの兵士が残っていた。
再びトライブはリオンの横に立ち、そのはっきりとした数を確かめる。
リオンは、向かって右側から出てくる兵士たちに向かって、一気に攻め込んでいく。ライトニングセイバーを白く輝かせ、再び次々と相手の剣を叩き落としていく。
トライブも、それに負けないように向かって左側から出てくる兵士に向かっていった。
守備範囲に待ち受けているのは、目に見えるだけでも10人。
だが、その中の一人が、エクアニア城の中では一度も見たことのない、斧と間違えられそうな巨大な剣を天高く構えていた。
トライブは、できるだけ巨大な剣から離れたところから、次々と城兵の剣を叩き落としていく。
7人、8人、そして9人目の剣が地面に落ちたとき、巨大な剣を構えた兵士が、トライブ目掛けてその剣を振り下ろした。
トライブの両目が、そのほぼ頭上を目掛けて振り下ろされる剣を捕えたとき、トライブは反射的にアルフェイオスを振り上げ、巨大な剣の勢いを止めに入った。
だが、巨大な剣の力がじりじりとアルフェイオスに食い込み、ついにトライブのひじが90度傾いてしまった。
トライブの手に、相手の力を感じなくなった。
巨大な剣が振り上げられ、再び真上からトライブを攻撃しに出たのだった。
相手の目は、殺意すら浮かべていた。
風のような一振りが、斜め上に向きを戻したアルフェイオスに容赦なく降りかかる。
相手の剣から発せられた強烈なパワーが、剣を持つトライブの右手に溢れ出る。
アルフェイオスの勢いが完全に止められ、相手の巨大な剣がトライブを正面から斬りつけにかかった。
トライブの心が叫ぶ。
それは、「剣の女王」が本気のパワーを生み出す前触れに他ならなかった。
一気に迫ってきた巨大な剣をトライブは右によけ、標的を失った相手にすぐさまアルフェイオスを力強く叩きつけた。
そして巨大な剣の剣先が地面に向けられた瞬間、トライブを苦しめた巨大な剣は地面へと突き落とされた。
肩で呼吸を繰り返すトライブは、リオンに小さくうなずいた。
これまでの城兵の中では一番の強敵を倒したが、それでも残りの城兵は80人ほど。半分近く残っていた。
まだ諦めるわけにいかない。
そうトライブが心に言い聞かせたとき、トライブたちを睨み付けていた城兵たちが、突然左右に割れた。
誰かが奥から現れるようだ。
トライブは、城の中から出てくる人物の姿をじっと見た。
そして、その人物の正体が分かったとき、思わず息を呑みこんだ。