第118話 企業の戦略

文字数 2,122文字

【ハーモニー社・社長室】

真彩と優衣、それぞれのパソコン画面を見ながら、ニコニコしている。

真彩「面白っ! どの店舗も楽しいハロウィンイベントになりそう」

優衣「社長に来て貰いたいって、沢山の店舗から依頼あるけど……身体は一つしかないからねぇー」

真彩「まぁね。でも、必要とされて嬉しい限りですわ」

優衣「でも、十月三十一日なんて、アッという間だね」

真彩「だね。でも、古代ケルト人の文化を、何で真似するんだろうね? 」

優衣「あぁ、十一月一日が新年で、前日の十月三十一日に先祖の霊が戻って来るから、霊を迎える為の魔よけの儀式でしょ?」

真彩「うん。日本はお盆がある訳だからさぁー、大阪は八月十五日だから、十三日は迎え盆で、十六日は送り盆って、ちゃーんと霊を迎える風習って、昔からあるのにね」

優衣「まぁ、キリスト教と合わさって、風習がヨーロッパからアメリカに伝わって、それが日本に持ち込まれて流行っちゃったからね」

真彩「何でも流行らせて金儲けに結び付けるからなぁー。お菓子メーカーとか雑貨店が儲ける為に、ハロウィンを定着させちゃったからね」

優衣「あぁ、母が、三十年前はこんなハロウィンの行事なんて無かったって言ってた。こんなに流行るなんて、思ってもみなかったって……」

真彩「大体さぁー、Trick or Treat(トリック・オア・トリート)が気にくわないわ」

優衣「えっ? あぁ、『お菓子くれなきゃイタズラするぞ!』だもんね……同意見です」

真彩「まぁでも、ウチの会社も、ハロウィンを上手く利用して儲けようと企んでるけどね」
と言って笑う真彩。

優衣「ですね……」

真彩「しっかし、バレンタインも、チョコ売る為に仕掛けられたものだし、恵方巻も大阪の海苔問屋が海苔を売る為に仕掛けた訳だからねぇー。結局は、企業の経営戦略に消費者が上手く誘導されてる訳だもんね」

優衣「ですねー」

真彩「まっ、初めに考案した人の勝ちって事だよね。今後も、色んな企業の戦略に消費者は惑わされるんだろうね……」

優衣「何か、操られてる様で腹立たしいけど、結構、乗っかっちゃってるからねー。バレンタインチョコも好きな人に上げてるし、恵方巻も毎年食べてるし、ハロウィンも仮装した事あるし」

真彩「だね」

優衣「あぁー、そう言えば、マーちゃんって、バレンタインの時、何故か沢山チョコ貰ってたよね?」

真彩「あぁ……女の子によく告られてたからね……」

優衣「ふーん。あぁ、ねぇ、マーちゃんが本命にチョコ上げたのって、何回ある?」

真彩「本命にチョコ上げたの? うーん……あぁ、そう言えば、悠斗しかいないな」

優衣「えぇ?! 悠ちゃんだけ?」

真彩「うん。優衣ちゃんは?」

優衣「私は三回かな?」

真彩「ふーん……意外だわ。もっと多いと思った」

優衣「それを言うなら、マーちゃんの方が意外だよ。だって、悠ちゃん一人なんて……」

真彩「だって、元カレ達は友チョコ、義理チョコに値するから」

優衣「えぇ? そうなの? だって、元カレ達の事、好きだった訳でしょ? なのに何で友チョコ、義理チョコに範囲指定される訳?」

真彩「あぁ、言ってなかったっけ? 私、人を好きになれないって……」

優衣「えぇ? 初耳……」

真彩「皆んなさぁー、芸能人とかアイドル見てキャーキャー言ってるけど、私、そんなの全く興味ないし、好きな芸能人もいないんだよね」

優衣「そうなんだ。あぁ、でも、私もだわ。周りはキャーキャー言って喜んでても、私、いつも冷めてたわ」

真彩「私、人の顔見たらその人の性格、分かっちゃうから。好きになった人でも、嫌な部分が見えたら、サーッて冷めちゃうんだよね……」

優衣「そっか……」

真彩「人を好きになれないから、取り敢えず、告ってくれた人と付き合って、好きになろうと努力しただけだから……」

優衣「ふーん」

真彩「でも、悠斗だけは小さい頃から好きだった。悠斗、表裏が無くて、綺麗な心だから。小さい頃はLIKEだったけど、大きくなってLOVEになった」

優衣「ふーん……そんなん、悠ちゃんが聞いたら喜ぶだろうね」

真彩「そうかな? あっ、ねぇ、三回、本命さん達に渡して、勝率は?」

優衣「いや、勝率って……付き合ってた彼氏達に渡した訳だから、勝率は百パーセントだよ」

真彩「そうなんだ。あぁ、そう言えば、知り合いの女の子で、好きな人に何回も告ってチョコ渡して、何回も断られて、確か、四回目か五回目でやっと恋が成就した人がいたなぁー。私だったら一回断られたら即、諦めるけど。つーか、自分から告白なんて出来ないわ」

優衣「ふーん、その人、根性あるよね。私も一回断られたら、きっと落ち込んで、逆にその人の事、嫌いになると思う。だって、プライド傷付けられた訳だから」

真彩「プライドかぁー。あぁ、そうだよね。でも、折角、成就した恋なんだけど、実際、付き合ったら、男性と価値観が違って、今、破局寸前らしいわ」

優衣「やっぱり、付き合ってみないと分からないもんね……」

真彩「うん。外見と中身は違うよね。中々、見抜けないし、価値観なんて、育った環境によって、人それぞれだもんね」

優衣「人と付き合うのも修行だよね」

真彩「ホント、何でも修行だよ」

真彩と優衣、顔を見合わせ、微笑み合う。

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