第108話 真彩、悠斗の拷問受ける

文字数 5,861文字

【真言密教寺院・真正寺】

日曜日の朝、真正寺では法要が執り行われている。

真彩、休日出勤せず、朝早くから亜希の手伝いをしている。

よく動き、忙しくしている真彩。


真彩、長い廊下を急ぎ足で歩いている。

すると、今迄、真正寺で会った事のないダンディな中年男性が、前から歩いて来る。

中年男性、真彩の顔を見ると、
中年男性「えっ?……」
と、とても驚いた顔をし、フリーズする。

真彩、亜希から用事を言付かって忙しい為、中年男性に会釈すると、そそくさと歩いて行く。
   
中年男性、真彩の後ろ姿をじっと見詰める。

真彩(心の声)「んん? さっきの人、何なんだ? 何か、懐かしい感じ。んん? ひょっとして、DNA、近い人か? 私の顔見て、驚いてたなぁ……」

しばらくして、真彩、振り返り、遠のいて行く男性の後ろ姿を注視する。

     ×  ×  ×

法要が無事に終わり、参座者達を見送る真彩。

真彩、参座者達に、時には会釈し、時には手を振り、愛嬌を振り撒いている。

真彩、ふと、寺の敷地内で一番大きなクスノキに目が行く。

クスノキの陰から、若い女性が、廊下ですれ違った中年男性をじっと見ている。

真彩(心の声)「えっ? あの女性って……あぁ、あの男性の事、好きなんだ。忘れられないんだ……可哀想に……」

真彩、じーっと、その女性を見ていると、背後から亜希の声が耳に入る。

亜希「真彩! 忙しいのに今日も手伝ってくれて有難うね! 助かったよ」
   
すると真彩、笑顔で、
真彩「いえいえ、どう致しまして! あぁ、ねぇママ、あそこにいるダンディな男性って何ていう名前? 初めて見る顔だから……」
と言って、中年男性を手で指し示す。

亜希「あぁ、あの人は、岡崎さん。大学の教授されてて、長い間、アメリカに住んでたらしいよ。最近、日本に帰って来て、今、実家暮らしだって、田中さんが言ってた」

真彩「ふーん……岡崎さんって言うんだ……」

亜希「昔、ママの高校の時の同級生が付き合ってたんだけど、岡崎さんがアメリカに留学に行く事になって別れたって聞いた」

真彩「そうなんだ……」

亜希「その子、百合ちゃんって言うんだけど、名前の如く、白い百合の様に清楚で綺麗だったなぁー。頭も良かったんだよね。『高嶺の花』的な存在だったなぁ……」

真彩「へーぇ……」

亜希「皆んなが百合ちゃんって呼ぶから、ママも百合ちゃんって呼んでたけど、ママ、何か近づき難くて、親しくなれなかった。ママ、アホな事ばっかり言って楽しんでる連中と一緒に行動してたから……」

真彩「ふーん……」

亜希「本当は、百合ちゃんと親しくなりたかったんだけどね……」

真彩「そうなんだ……」

亜希「友達から聞いた話だと、百合ちゃん、若くして交通事故で亡くなったって……」

真彩「そうなんだ……」
   
真彩、じっと何かを考えている様子。

その真彩を、ちらっと横目で見る亜希。



【高槻レオマンション・806号室】

夜、照明を点けずに真っ暗な部屋で、缶ビール片手に、立って夜景を見ている真彩。

真彩「辛かったんだね……私を産んだお母さん……」

真彩の目から、涙が零れ落ちる。

そこに、悠斗がリビングに入って来て、照明を点ける。

悠斗、真っ暗な部屋に、まさか真彩が居るとは思わず、
悠斗「うわっ!」
と言って、驚く。

真彩「あっ……お帰り! 気付かなかった」

真彩、慌てて、悠斗に見えない様に、手で涙を拭う。

悠斗、洗面所に行き、手を洗い、うがいをする。

そして、真彩の所に来て、笑顔で真彩の顔を見る。

悠斗、真彩にハグして、只今の挨拶キスをする。

悠斗からアルコール臭がするので、
真彩「んん? かなり飲んだね。美味しい物、食べた?」
と言って、悠斗に微笑む真彩。

悠斗「うん、今日は土佐料理。かつおのたたき、美味しかったよ。あっ、おろし大蒜乗ってたかもしんない。ゴメン、臭いよね」

すると真彩、
真彩「大丈夫だよ」
と、悠斗に優しく言う。

悠斗「今度連れてくから。あぁ、先輩が『マーちゃんに宜しく!』って言ってた」

真彩「そう……」


真彩、飲み終えたビール缶をシンクで洗い、洗面所に歯を磨きに行く。

そしてリビングに戻り、悠斗に、
真彩「疲れたから先に寝るね」
と言って、自分の寝室に行こうとする。

すると、悠斗、真彩の手を掴み、そしてハグする。

悠斗「俺の可愛い可愛い sweetheart 何があった?」

真彩「えっ?……何も無いよ。疲れただけだよ」

悠斗、指で真彩の顎を上げ、真彩の目をじっと見詰める。

真彩、思わず目を反らす。

悠斗「何があったの?」

真彩「だから、何も無いってば。ごめん、ホント疲れたから」
と言って、悠斗のハグから逃れようとする真彩。

悠斗「強情だなぁー。話してくれるまで放さないからな」

真彩「もうー、放してよ! 酒臭いんだから! 酔っ払いと関わり合いたくないんですけど」

しかし、
悠斗「嫌―だね。何があったか言うまで放さない」
と言い、真彩を解放しようとはしない。

真彩「あの、本当に何でもないんだから!」

悠斗「あぁー、ほら、何かあったんだ」

真彩「もうー、悠斗には関係ないの! ホント、放して! Leave me alone!」

すると悠斗、
悠斗「ホント、強情だなぁー……」
と言って、真彩をお姫様抱っこして、悠斗の部屋に連れ込む。



【悠斗の部屋】

真彩「もうー、眠いんだから寝させてよ!」
と、怒った感じで言う真彩。

しかし悠斗、抵抗する真彩の言う事を無視して、真彩を自分のベッドに寝かし、馬乗りになる。

悠斗、真彩を上から見詰める。

そして、悠斗、真彩のパジャマズボンとパンティを強引に剥ぐ。

真彩「もうー、何すんの?! 止めてよ!」
   
真彩、抵抗するが、悠斗の力には叶わない。

すると悠斗、いきなり真彩の両脚を広げ、女性器を愛撫し出す。

真彩「もうー、酔っ払いさん、止めてよ!」

真彩、悠斗の頭を両手で下に押し、行為を止めさせ様ともがくが、悠斗は動じない。

それでも真彩、必死で左右に腰を動かし、逃げようとする。

しかし、真彩の両脚をしっかりと手で持ち、真彩が動けない様にしている悠斗。

そして、真彩が一番感じる部分を、何分も、ひたすら舌を動かし、真彩を感じさせる。

真彩「……あぁ……」
官能している真彩。

しばらくすると、真彩、頭がツーンとして、オーガズムに達し、力が抜ける。


悠斗「言う気になった?」
と、真彩に伺いを立てる悠斗。

すると、
真彩「言いたくない」
と、怒った感じで言う真彩。

悠斗「何で???」

真彩「言いたくないんだもん。誰だって言いたくない事ってあるでしょ?! 悠斗だって言いたく無い事あるでしょ? 私に隠しておきたい事とかあるでしょ?!」

悠斗「うーん……でも、知りたい。俺は真彩の全てを知りたいもん。もしそれが、俺が傷付く様な内容でも、俺は真彩の全てを知りたい。真彩の全てを愛してるから、どんな事も受け止めたい」

真彩「あのー、もうちょっとデリカシー持ってくれない? 私が嫌だって言ったら、もっと私の事、尊重してよ! 私は悠斗のペットじゃないよ?! 人間だよ?!」
と言って、怒る真彩。

悠斗「そんなに怒らないでよー。こんなに真彩の事、愛してるのに……」
と、ちょっといじけた感じで言う悠斗。

真彩「もうー、酔い冷ましてよ! 酔っぱらいは嫌いだよ! 悠斗、酔っぱらったらしつこいんだから」
と言うと、真彩、頬っぺたを膨らす。


すると悠斗、またさっきの体勢を取り、真彩の感じる部分を愛撫する。

真彩「もうー! ダメだってば! 今感じたとこなんだから! 止めてよ!」

しかし、悠斗、真彩の言う事を無視し、行為を続ける。

真彩「もうー、人権侵害だよ!」

すると、
悠斗「えぇ? でも、真彩ちゃん、気持ち良いでしょ?」
と、可愛い感じで言う悠斗。

真彩「気持ち良いもなにも、こっちが嫌って言ってるんだから、そういう問題じゃないでしょ! これって、強姦だよ?!」
と、悠斗に怒る真彩。

しかし、悠斗、真彩の言う事を無視して、真彩を感じさせる事に力を注いでいる。

真彩「ちょっとー、酷い。拷問なんですけど……あぁもうダメ……」

悠斗(心の声)「ヤッター……落とした!」

真彩「……あぁ……」
真彩、またエクスタシー頂点に達し、力が抜ける。

ぐったりしている真彩。


悠斗、真彩の顔を見て、
悠斗「言う気になった? それとも、まだして欲しい?」
と、笑顔で言う。

真彩「あぁ、もうダメ。分かったから。話すから」
  
悠斗「もうー、ホント、強情なんだから……顎が外れそうだよ」
と言いながら、顎を触っている悠斗。

真彩「もうー……」
と言って、真彩、頬っぺたを膨らませ、悠斗を睨む。


真彩、濡れた部分をテッシュで拭き、悠斗に剝がされたパンティーとパジャマズボンを履く。

真彩、怒った感じで、
真彩「ねぇ……元カノさん達にもこんな事してたの?」
と、わざと皮肉って、悠斗に言う。

すると悠斗、真彩の顔を見て、
悠斗「バーカ。こんな事する訳ないだろ?! こんな事したら、それこそ人権侵害で、性犯罪、強姦罪で捕まるわ。真彩にしかする訳ないだろ?! 本当に愛してる人にしかしないよ!」

真彩「もうー、ホント酷いよ。ペットにもこんな事しないでしょ?! 私はペット以下か?」
と言って、頬っぺたを膨らませている真彩。

悠斗「それだけ真彩を深く愛してるって事だろ? 顎が外れる寸前だぞ?! 俺、どんだけ頑張ったか!」

真彩「もうー」

悠斗、怒った真彩の顔を覗き込み、微笑む。

真彩(心の声)「もうー、元カレ達にこんな事された事なかったのに……ホント、悠斗は強引なんだから……でも、こんな事、心底、愛してないとしないか。顎が外れそうになる位、頑張ったんだもんね……」

     ×  ×  ×

悠斗と真彩、ベッドの上に座り、話し合っている。

悠斗、真彩の手を握り、時々、頷きながら真彩の話を聞いている。

悠斗「そうかー。真彩が感じたんなら、そうなんだろうなぁー。でも、真彩の本当の両親がどんな人達か分かって良かったね。ずっと、どんな人達か分からないから、怖がってたからさぁー」

真彩「えっ? 怖がってたの、知ってたの?」

悠斗「うん」

真彩「そっか。もし変な人達だったら嫌だなってずっと思ってたから……ホントに怖かったから。悠斗と別れようって思ったのも、この事もあったから……」

悠斗(心の声)「白状した。やっぱりこれが大きな原因か……」

真彩「子どもを捨てるような人の血を引いてるから、自分も同じ因縁持ってると思うと、結婚なんてしちゃーいけないって思ったし……」

悠斗「そっか……」

真彩「……うん」
と頷く真彩。

悠斗「で、どうするの?」

真彩「何が?」
と言って、悠斗の目を見る真彩。

悠斗「名乗り出ないの? DNA鑑定で証明出来るけど」

真彩「絶対にそんな事しない! それを言われると思ったから、絶対言いたくなかったの!」
と、怒った口調で言う真彩。

悠斗「えっ? 何で?」

真彩「世の中、知らなくて良い事もあるでしょ? 知る事で辛い想いや嫌な想いする人達も出て来ると思うし。パパとママに嫌な想いさせたくないもん。私の事、本当の娘だと思ってくれてるから。こんなに愛情注いでくれてるパパとママに絶対知られたくない」

悠斗「……そっか……」

真彩「この事、パパとママには絶対に、絶対に言わないでよ! 絶対、内緒だよ! 私の親は、パパとママだけなんだから!」

悠斗「父さんと母さんの事を想って、気を使って言いたくなかったんだな。分かったよ。絶対に言わないから」

真彩「……」

真彩、肩を落とし、下を向いている。

悠斗「拷問受けても、絶対に言わないから安心して?!」
と、笑顔で言う悠斗。

すると真彩、直ぐに悠斗を見て、
真彩「もうー! 何それ、酷い!」
と言って頬っぺたを膨らませ、悠斗の胸を押す真彩。

その膨らんだ真彩の頬っぺたを、悠斗、両手で抑えてへこます。
   
そして、真彩の頭を優しくポンポンする悠斗。

悠斗「真彩……」
と言って、真彩をじっと見詰める悠斗。

真彩「うん?」
と言って、悠斗を見る真彩。

悠斗「生まれて来てくれて有難う。愛してるよ」
と、悠斗、優しく真彩に言う。

そして、真彩を抱き締める。

真彩「……うん……」

真彩、悠斗に抱き締められ、安堵の顔。

悠斗「でもさー、母さん、気付いたと思うよ? きっと。真彩が母さんに『ダンディな男性は誰?』って聞いた時点で……」

真彩「えっ?……」

悠斗、ハグを解き、真彩の手を握り、真彩の目をじっと見る。

悠斗「母さんを誰だと思ってるんだ? 家ではのほほんとして、天然で、ドジで、可愛い母さん演じてるけど、お寺での母さんはまるで真逆の、別人だろ? テキパキ動いて、いつも皆んなの相談に乗って、他の僧侶の人達に的確な指示出すリーダーだぞ?!」

真彩「……あぁ……」

悠斗「それに母さん、小さい頃から修行して霊能者でもあり、位の高い僧侶だぞ?! 母さん、ああ見えて、鋭いよ?! ひょっとして、俺達以上に鋭いかも? 隠してるけど……」

真彩「えぇ?……」

悠斗「知らない振りしてくれてるだけだよ。母さんは多分、全てお見通しだと思うよ?」

真彩「……そう……なのかな? 私の前では、いつも優しくて、天然なママだから、そんな事、想ったこと無かった。言われてみると、確かにママ、鋭いわ。私が困ったが事あった時、いっつもタイミング良く連絡くれるし……」

悠斗「真彩のちょっとした変化、直ぐ見抜くからなぁ……昔からそうだったよ」

真彩「えぇ? そうだったの?」
と、真彩、悠斗の顔を見る。

すると悠斗、真彩に微笑む。

悠斗「それにさー、その岡崎さんが真彩を見て驚いた顔したという事はだな、真彩が産みの親の百合さんによく似てたから驚いた訳だろ? きっと」

真彩「あぁ……」

悠斗「という事はだな、真彩が成長するにつれ、母さん、同級生の百合さんと真彩が似てるって気付いたと思うけど?」

真彩「えっ?……あぁ、そうか……」

悠斗「母さん、薄々分かってたと思うよ?」

真彩「そう……なんだ……」

悠斗「母さん、俺たちの一枚も二枚もうわてだと思う」

真彩「……そうか……」

悠斗「頑張って拷問に耐えたのに、無駄だったね」
と言って、真彩の顔を覗き込んで笑顔で言う悠斗。

真彩「もうー、酷い! 悠斗のバカ! 悠斗なんて大嫌い!」

真彩、頬っぺたを膨らませ、怒った顔で言う。

しかし悠斗、笑って、
悠斗「俺は大好きだよ。可愛い可愛い、マーヤちゃん」
と言って微笑む。
   
そして悠斗、また真彩を抱き寄せる。

悠斗「愛してるよ、真彩」
   
真彩「……うん……」
と、はにかんだ感じで言う真彩。

真彩、悠斗に抱かれ、温かい気持ちになる。
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