第116話 智之と亜希

文字数 2,516文字

【中村家・リビング】

夜、智之が、鍵を開けて家の中に入って来る。

亜希、丁度、風呂から出たところで、髪の毛をタオルで巻き、リビングに行く。

すると、智之がリビングに入って来て、鉢合わせとなり、驚く亜希。


亜希「あらっ、お帰りなさい。今日は飲み会で遅くなるって言ってなかったっけ?」

智之「あぁ、そうだったんだけど……」
    
智之、何だか気恥ずかしくて、亜希の顔がまともに見れない。

亜希「けど?」

智之「うーん……」

智之、その後、言葉が出ない。

鞄を床に置き、背広を脱いでソファに置く智之。

智之の様子が何だか変なので、
亜希「えっ、体調、悪いの?」
と、心配顔で智之の顔を見る亜希。

智之「体調は大丈夫……」

亜希「んー、なら良いけど……」

亜希、冷蔵庫に入れてあるミネラルウォーターを飲む為に、台所に行く。

その間、智之は、洗面所に行き、手を石鹸で洗い、うがいをすると、またリビングに戻って来る。

智之「あぁ、もう、家事は終わったの?」

亜希、ミネラルウォーターを口にしている。

亜希、智之の質問に、少し間が空く。

亜希「うん。終わったし、歯も磨いたし、後は髪の毛乾かして寝るだけ」
と言って、微笑む亜希。

亜希「あれっ? 晩御飯、食べた?」

智之「あぁ、うん」
と言って、咄嗟に嘘をつく智之。

智之(心の声)「腹減ってるけど、今は食事どころじゃないからな……」

すると、
智之「あー、俺、風呂に入りたいんだけど……」
と、智之が言い出す。

智之、さっき真彩に教えて貰ったアドバイスに従い、実行に移すつもりだ。

亜希「あぁ、じゃー、用意するね」
と言って、風呂場に行こうとする亜希。

すると智之、
智之「あぁー、一緒に入ってくんない? 背中、流して欲しいんだけど……」
と、亜希に言う。
   
亜希「?……」

風呂から上がって髪の毛をタオルで巻いている自分の姿を、智之は目の前で見ているので、心の中で『んん?』となったが、
亜希「はい」
と、言って、バスタブにお湯を入れる準備をしに行く亜希。



【バスルーム】

亜希、智之の背中を流している。

亜希(心の声)「一体、どうしちゃったんだろう? 何か変だなぁ……大丈夫か?」

智之の背中を流し了えると、お湯を張ったバスタブに、智之と亜希が一緒に入る。
   
そして、智之、亜希の背中を見ながら、亜希の肩を揉む。

智之「右の方が凝ってるな」
と言って、一生懸命、亜希の肩を揉む智之。

亜希「そうなんだよね、凄い凝っててさぁー。あぁー、そこ、ツボ。気持ち良いー」
と言って、目を瞑って、気持ち良さそうにする亜希。

智之(心の声)「真彩の言った通りだ。右肩、凝ってたんだ……」

智之がしばらく揉んでいると、
亜希「あぁ、もう良いよ、有難う。手、疲れたでしょ、お蔭で楽になった」
と、亜希が言う。

すると智之、亜希を後ろからギュッと抱き締める。

亜希「?……」

そして、亜希の両乳房を揉む智之。

     ×  ×  ×

風呂から上がり、亜希がバスタオルで自身の身体を拭こうとすると、智之がそのバスタオルを亜希から取り上げ、亜希の身体を丁寧に拭く。

亜希「あぁ、有難う」
と、智之に言う。

亜希(心の声)「ホント、この人、どうしちゃったんだろう? 身体拭いて貰うのって、何年振りだ? いや、二十年振り位?」

智之が、亜希の身体を拭き終えると、
亜希「有難う!」
と、笑顔で言う亜希。

そして今度は、亜希が智之の身体を拭く。

亜希(心の声)「相変わらず、お腹出てないなぁー」

すると今度は、智之、ドライヤーを持ち、亜希の髪の毛を乾かしてあげる。

亜希(心の声)「わぁ、大サービスじゃん……そう言えば、昔はよくやってくれたなぁー」

髪の毛を乾かし終わると、
亜希「有難う」
と言って、智之の顔を見る。

そして、亜希が下着を身に着け様とすると、智之がそれを制止する。

智之「このままベッドに行こ?」
と言って、亜希の腕を掴む。

亜希「?……」
   
亜希、内心、驚きながらも、黙って素直に智之に従う。

智之、亜希と手を繋ぎ、全裸のまま寝室に向かう。



【寝室】

全裸の智之と亜希、ベッドに横になり、見詰め合っている。

亜希(心の声)「何か、久しぶりだなぁ……」

亜希は、智之のいつもと違う態度に戸惑っている。

すると、
智之「ごめんな……」
と言って、神妙な顔で亜希に謝る智之。

亜希「えっ?……何が?」
と言って、智之に尋ねる亜希。

智之「俺は潔白だからな! 只、病人を介助しただけだから。浮気なんてしてないからな! 亜希しか愛してないから!」

亜希(心の声)「えーっと……どうしちゃったのかな?」
と、智之の言葉に驚いている亜希。

しかし、亜希、平然と、
亜希「あぁ、そっか……」
と、一言、言葉が出る。

智之「ちゃんと誤解を解かないとって思って……『氷の世界』、嫌だから……」

すると、智之、亜希の上に覆い被さり、唇にキスをする。

そして、
智之「亜希……愛してる」
と、真顔で言う智之。

段々、興奮して来た智之。

亜希「?……」

智之「ずっとずーっと、俺と一緒に居て欲しい。死ぬまで一緒に居てくれる?」

すると亜希、智之の言動に違和感を覚え、躊躇しながらも、
亜希「はい」
と言って、微笑む亜希。

智之(心の声)「良かった……亜希を絶対に手放したくないもん……」

智之、亜希の返事に安堵する。

そして、また亜希の唇にキスをして、亜希の身体を愛撫し出す智之。  

亜希(心の声)「これは完全に、真彩に何か吹き込まれたな。『氷の世界』って何?(笑)」
 
亜希、目を瞑って、智之の行為を受け入れる。

智之、上半身から下半身に愛撫が移る。

亜希「……あぁ……」
時々、感じ入って、声が漏れる亜希。

智之「ご無沙汰して、ゴメンね」

亜希「?……」

智之、亜希に快楽を得て貰おうと、一生懸命に亜希の喜ぶ行為をしている。

智之「感じてる?」

亜希「……うん……」

智之「気持ち良い?」

亜希「……うん……」

すると智之、亜希の顔を見て、嬉しそうな顔をする。

真彩が、智之にどんな言葉を発したのか気になりながらも、智之に愛されている実感を身体に感じ、喜びを得ている亜希。
   
あの手この手と、亜希を感じさせ、亜希に尽くしている智之。

久しぶりに智之に愛されて、亜希、快感と幸福感を得ている。

亜希(心の声)「真彩のお蔭だわ……有難う、真彩……」

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