第69話 悠斗のスパイ、優衣

文字数 1,531文字

【ハーモニー社・社長室】

朝、自分のデスクで、PCに向かってにやついてる真彩。
いつも真剣な顔でPC画面と向き合っている真彩なのだが、今日は様子が何だか変なので、気になっている優衣。

優衣、真彩をちらちらと見ている。

我慢出来ずに、
優衣「あの……聞きたいんだけど……」
と、真彩に声を掛ける優衣。

真彩「んん?」
真彩、笑顔で優衣の顔を見る。

優衣「あの、しょーもない質問なんだけどさぁ……」

真彩「うん?」

優衣「今までズボンスーツだったのがスカートって、何で? それに、マーちゃんの好きな黒じゃないし……」

真彩「あぁ、黒はさぁー、白以外の全ての色が入ってるから、私はどんな色とも合う、和合の色だと思ってて、自分にとっては最高の色なんだけどね」

優衣「……」

真彩「でも、スカート姿が見たいって悠斗が言うし、色も、たまには明るい色を着て欲しいって言うもんだから……」
と言って、微笑む真彩。

優衣「へーぇ、悠ちゃんの顔なんて見たくない、存在消したいって言ってた人がねー」
と言って、呆れ顔の優衣。

しかし、真彩を見て微笑む優衣。

そして、
優衣「で、何でずっとにやついてるの?」
と、首を傾げて真彩を見る。

真彩「えっ? にやついてる? 私……」
直ぐ、両手で頬を抑える真彩。

優衣「はいな。会った時からずっとにやついてるますがな!」
と言って、微笑む優衣。

真彩「だって、ずっと悠斗が愛してるって念を送って来るから……」

優衣「えぇ?」

真彩「ちゃんと仕事してるのか?……って、心配になるよ」
と言って、恥ずかし気も無くのろける真彩。

優衣「はぁ……心配なのは、貴女も同じですがね。しっかし、ずっと閉ざしてた扉の鍵を壊して、やっと開けれたと思ったらこれか? 閉ざしてなかったら、あんな辛い想いしなくて済んだのに……」

真彩「そうだね……でも、これが自分の因縁なんだよね。そこを通って初めて気付いて、解る事ってあるでしょ? 例えば、車で通っても、道端の小さな花なんて気付かないけど、歩いてたら、あっ、こんな所に可愛い花が咲いてたんだ……って気付けるジャン」

優衣「うん……」

真彩「いつも幸せで、何不自由なく、悩みもなく過ごしていたら、他人の痛みって、自分事として考えられないと思うんだよね。あぁ、まぁ、人によるだろうけど。私の場合は、気付けなかったと思う。だから、そういう事も勉強しなさい!……って修行を与えられたんだと思う」

優衣「まぁ、そうかもしれないけど……周りの人達に心配掛けた訳だし、多大なる影響受けた人達もいる訳だからね」

真彩「あぁ、はい。それは反省してます。和くんにもちゃんと謝りに行きます。潤先輩にも、期待持たせたボーイフレンド達にも……」

優衣「あぁ、ダメダメ! メールにしなよ?! 会わない方が良いよ! 会っちゃダメ!」

真彩「えっ? そう???」

優衣「うん。失礼と思うだろうけど、でも、会わない方が良い。会うと情にほだされるから。LINEで充分!」

真彩「ふーん‥‥‥じゃー、そうする」

優衣「それにしても……元の鞘に収まって、良かった、良かった」

真彩「あぁ、悠斗に、『何で佐伯先輩と一緒だった所にいたの?』って聞いたら、たまたま見かけたから……って言ってたけど、まさか優衣ちゃんが連絡したんじゃないよね?」

真彩の言葉に少し動揺する優衣。

しかし、
優衣「えぇ? してないよ」
と、とぼける優衣。

優衣(心の声)「危ない、危ない。悠ちゃんのスパイだってバレてないよね?」

すると真彩、優衣をじっと見詰める。

優衣「?……」
   
真彩に見詰められ、背筋が伸びる。

そして、
真彩「優衣ちゃん……有難う……」
と言って、神妙な面元で優衣に頭を下げる真彩。

しかし優衣、敢えてひょうきんな顔をする。

言わずとも、通じ合ってる真彩と優衣。
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