第7話 真彩マジック発動

文字数 1,973文字

【社長室】

朝、ハーモニー社・社長室で、真彩と優衣、各々のデスクでコーヒーを飲んでいる。
作業が終わり、くつろいでいる二人。

真彩「さてさて、一斉メール送りますか。Whatever will be, will be……」

優衣「はい。皆さんの反応が楽しみです」

真彩「どんどん仕掛けるからね! 皆んなの意識、向上させるから!」

優衣「『真彩マジック』発動ですね! あぁ、でも、絶対に遣り過ぎないで下さいよ! 自分を犠牲にする行動は、NO GOOD! 絶対NGですからね!」

真彩「はーい。分かってます」

真彩(心の声)「と言いつつ、どんどん遣るでー!」

真彩の心の中は、エネルギーが燃え滾っている。
怖いもの知らず、命知らずの状態。

優衣「ホントかなー? 社長の、伸ばした『はーい』は信用出来ないからなぁー」

真彩「そう?」

真彩(心の声)「流石、秘書様……見抜かれてる……」

優衣「はい……」

真彩「じゃー、作戦第一弾、発動―!」  
    
真彩と優衣「(同時に)ケセラセラ!」
と言って、真彩がPC画面の送信をクリックする。


【営業部1課】

営業部の社員達、真彩からのメールをじっくり読んでいる。

杉山「何これ? 研修って……

◎自己啓発、モチベーション向上研修
◎課題解決ワークショップ
◎主体性を発揮する研修
◎待ち姿勢から意欲的姿勢への研修
◎マナー研修

……えぇー、まだ有るし……」

杉山、眉間に皺が寄っている。

前田「これって、全員、研修受けるんですかね?……」

杉山「えっ、明日から朝礼後、十分間清掃? こんなん今迄やったこと無かったのに……」

光「女子はやってますけど?! 男子もやれって事ですね」

杉山「俺らの意識改革で会社の業績がどう変わって行くか? やな……」

すると光、前田を見て、
光「変わったと言えば、前田さん、最近、変わりましたよね?」
と言い出す光。

杉山「そうそう、俺もそう思ってた。最近、意欲的でエネルギー漲ってる感じだよな」

光「社長に呼び出された日からですよね? 先週の木曜日でしたっけ?」

前田、少し動揺し、目が泳ぐ。

杉山、ニヤニヤしながら、
杉山「社長に何か良い事されたか???」
と前田に聞く。

光「えっ? 何々? 良い事されたの???」
と、光もニヤつきながら前田にからかう様に言う。

前田「えっ? いや、あの、まぁ、良い事は沢山して貰いましたけど……お二人が考えてる様な、そんなんじゃないですから!」

光「えっ?……ホントに良い事して貰ったの?」

前田「あー、いや、良い事って、ホントに良い事ですから。変な事じゃないですから!」

頭を横に振る前田。
しかし、言えば言う程、墓穴を掘る前田。

前田「あぁ、余計、ややっこしくなった……兎に角、社長は良い人なんで!」

光「冗談で言ったんだけど、ホントに何かあったんだ……」

秋元「?……」

前田「あっ、いや、だから、本当にそんなんじゃないですって! 社長は本当に素敵な、素晴らしい人なんで……」

前田の言葉に、秋元、独り「うんうん」と頷く。

前田、笑みを浮かべ、自分の鞄に資料を入れる。
すると、どこからともなく、真彩が突然、前田の前に現れる。

真彩「失礼! ネクタイ曲がってますよ?!」
と言って、前田のネクタイを直す真彩。

前田、驚く。
杉山、光、秋元も驚く。

真彩「『制服の乱れは心の乱れ』って誰かが言ってたなぁー……んん? 誰だっけ?」

前田「?……」
杉山「?……」
光「?……」
秋元「?……」

真彩「心乱れてますね? 前田さん……」

前田「あぁ、すいません……有難うございます」   
 
真彩「行ってらっしゃい。あぁ、ついでに、吉村社長に土曜の夜なら大丈夫って伝えて貰えます?」

前田「えっ?……あの、接待ですか???」

真彩「うーん、接待であり、デートかな? 何度も誘って来るからさぁー……無碍に出来ないでしょ? 大事な取引先だから……」

前田「えっ? ダメですよ。あの社長、凄いプレイボーイで有名ですよ?!」

真彩「そうなの? でも大事な取引先だから、一回位デートしても良いかな?……ってね……」
 
すると杉山、真彩と前田の会話に割り込んで来る。  

杉山「いやいや、行ったら社長、一発で落とされちゃいますよ?!」

真彩「えぇ? 一発で落とされちゃうの?」
真彩、笑いながらひょうきんな顔をする。

光「あの社長、カッコイイから……」

秋元「社長はアメリカに居たから知らないでしょうけど、この前までメディア騒がしてたんですよ?! 綺麗な女優さん振ったから……」

真彩「へーぇ、そうなんだ……」

前田「絶対に行っちゃーダメです!」

真彩「あぁ……心配してくれて有難う。気を付けるね!」
そう言って、その場を立ち去る真彩。

杉山、前田、秋元、光が、真彩の後ろ姿を見詰める。

秋元「大丈夫かなぁー?……」

杉山「大丈夫だろ。プレイボーイだって言ったんだから、警戒するだろ」  
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