第56話 ストーカー美紀にお仕置き

文字数 3,387文字

【ハーモニー社・社長室】

社長室で、真彩、PC操作をしながら、優衣とあーだこーだと言い合っている。

すると、真彩のスマホにメッセージが入る。
真彩、画面を見て、フリーズする。

優衣「んん? どうかした?」

真彩「あぁ……ママからなんだけど……日曜日、実家に集合だって。原宿の件、パパの耳に入っちゃったみたい……」

優衣「あらら……」

真彩「顔見せに行かないとダメみたい……」

優衣「……あぁ……」

真彩「ママにお小言貰って終わりかと思いきや……ふーん……絶対君主のパパの言う事に逆らえないからなぁー……」

真彩、困惑顔。



【カフェバー「Route72」】

カフェバー「Route72」に、賑やかな連中が入って来た。
賑やかな連中は、悠斗の大学時代のテニスサークル仲間だ。
悠斗の退院祝いと、同窓会を兼ねての集まりだった。

悠斗を含め、男八人、女七人が集まったので、店の中は一気に賑やかになった。

これで、悠斗のストーカー、岡田美紀が来れば、全員集合となる。

池本が悠斗に小声で話し掛ける。

池本「あの子、来るかなぁー?」

悠斗「多分、来るよ。俺が元気になったって聞いた訳だから……」

池本「どんな顔、するんだろうな? もう、騙されるなよ! また迫って来たら、俺が助けるからな!」

悠斗「あぁ、大丈夫だよ。今度はこっちが仕掛けるから……」
と言って、池本に微笑む悠斗。

池本「そっか、それは楽しみだ」

池本、悠斗に微笑む。

すると、店のドアが開き、岡田美紀が店内に入って来る。

女友達に手招きされて、美紀、皆が集まっている席にやって来る。

悠斗、美紀をじっと見ている。

悠斗(心の声)「俺にセクハラした女……俺に障害が残ると聞いた途端、俺を即座に見捨てた女……可愛い顔して、残念だな……」

池本(心の声)「どの面下げて来てるんだ? 悠斗にセクハラして、悠斗の事、見捨てたくせに……」
   
池本、美紀に対して腹が立っている。
美紀の顔も見たくない状態の池本。
   
皆が揃い、乾杯となる。

前回、悠斗が倒れた時、参加出来なかった者達は、久しぶりの再会を喜んでいる。
皆、それぞれに会話をし、場を楽しんでいる。

悠斗、店のオーナーの松本やスタッフがビールを運ぼうとしているので、それを手伝いに行く。

甲斐甲斐しく動いて、松本やスタッフを助ける悠斗。

そして、仲間が次から次へと悠斗に話し掛け、体調を気遣っている。

美紀は、元気になった悠斗をちらちら見て、悠斗と話す機会を探っている。

そして、悠斗が一人になると、すぐさま、悠斗の所に行く美紀。

美紀「悠斗先輩、元気になって良かったー」
と、笑顔で可愛く言う美紀。

悠斗(心の声)「来たか……」

池本、美紀を見る。

池本(心の声)「やっぱりな……」

すると悠斗、優しい口調で、
悠斗「あぁ、有難うねー。お陰様でね」
と笑顔で美紀に言う。

美紀「私、部署が変わって仕事が忙しくて、残業ばっかりだったから、お見舞いに行けなくてごめんなさい……」
と、しおらしく謝る美紀。

すると悠斗、
悠斗「部署変わったら、仕事覚えないといけないから大変だね……」
と、優しく美紀に言う。

美紀「あぁ、でも、もう、覚えましたから、大丈夫です。残業もしなくて良くなりましたし……」

悠斗「おっ、流石だね。覚えるのが早いんだね」
と、笑顔で美紀を持ち上げる悠斗。

美紀「あの、悠斗先輩、また、家に遊びに来ませんか? また悠斗先輩が好きな料理、作りますから! それに、また、ちょっと相談したい事、あるんです」

二人の会話を、皆、興味深く、聞き耳立てている。

悠斗が元気になったので、また美紀が悠斗を誘惑するだろうと皆、想像していた。

悠斗が美紀にセクハラされた事は、全員、知っている。
そして、悠斗が倒れた際、悠斗を見捨てた事も。

悠斗「えぇ? 行っても良いの?」
と、嬉しそうに言う悠斗。

美紀「はい。勿論です。いつでも来て下さい!」
美紀も嬉しそうに言う。

悠斗「でもさぁー、前みたいにアルコール沢山飲ませて、俺を襲わない?」

美紀「えっ?……」

悠斗が、皆の前で二人の秘め事を言うので、戸惑う美紀。

悠斗「俺、目が覚めた時、裸にされてたからビックリしたよ。美紀ちゃんも裸で俺の横に寝てたし……」

平然と皆の前で言う悠斗に、驚く美紀。  

美紀「えっ? 先輩、嫌だなぁー、そんな事、しませんよ!」
と言って、苦笑いの美紀。
 
聞き耳立てている仲間達、全員、美紀に注目する。

悠斗「また俺にアルコール飲ませて、泥酔状態にして、気持ち良い事してくれるの? 楽しみだなぁー」
   
悠斗、わざと美紀に向かって笑顔で言う。

すると咄嗟に、
美紀「先輩、変な冗談止めて下さいよ! 酔ってますよね?」
と言って、誤魔化そうとする美紀。

悠斗「えぇー、何恥ずかしがってんの?! 俺と美紀ちゃんは、裸の付き合いした仲だろ?」
美紀、悠斗の発言に大いに戸惑っている。

しかし、美紀、開き直って、
美紀「そうですよ。悠斗先輩と私はそういう仲ですからね!」
と言って、今度は、自慢げに言う美紀。
   
皆んな、悠斗と美紀を見て、ニタニタし始める。

池本「へーぇ、そんな仲なんだ……」

美紀は、悠斗と関係を持ち、悠斗は自分に気があるという事を皆に知らしめ、自慢しようと思った。

すると悠斗、
悠斗「実は、俺の脳の腫瘍ってさー、手術出来ない所にあってね、その内、寝たきりになるんだよね……」

美紀「えっ?」
 
美紀、悠斗の言葉に驚く。
そして、仲間達も驚いている。

悠斗「時々、手足が痺れてさぁー、介護も必要になりそうなんだよね……仕事も出来なくなると思う」
と、平然と言う悠斗。

美紀「えっ? 治ったんじゃないんですか?」

悠斗「あぁ、治ってはいないよ?! だって、脳の危険な箇所に腫瘍あるから、手術出来ないんだもん。手術しても植物人間になる可能性大なんだってさー」

美紀「えぇー?……」

悠斗「このままだと、俺、その内、寝たきりになるから、美紀ちゃん、俺の世話してくれる? 俺、男性機能、果たせないから、美紀ちゃんが俺を慰めてくれる?」

悠斗、わざと破廉恥な事を言い、美紀の顔を見て、微笑んでいる。

悠斗「美紀ちゃんに介護して貰うの、嬉しいわ」
と言って、美紀を見て微笑んでいる悠斗。

しかし、美紀は、悠斗の言葉に青ざめている。

美紀「……」

悠斗「?……」


美紀「……ごめんなさい、介護なんて無理です」

悠斗「えぇ? 大学に入ってから俺の事、ずっと好きだったって言ってくれたのに? あんなに慰めてくれて、愛してくれたのに?」
   
悠斗、首を傾げて、美紀の顔をじっと見ている。

圧力を掛けるかの様な悠斗の言葉に、たじろぐ美紀。

すると美紀、いたたまれず、
美紀「ごめんなさい……無理です!」
と、悠斗に謝る美紀。

悠斗「えぇー、俺の事、見捨てるの?」

美紀「ごめんなさい……無理なんで……私、帰ります……」
と言うと、美紀、自分の鞄を持つ。

すると悠斗、美紀に甘える様な口調で、
悠斗「えぇー、美紀ちゃん、帰っちゃうの? 俺の傍にいてくれないの? ずーっと俺の傍にいて、介護してよー!」
と、甘えた感じで言う悠斗。

美紀「ごめんなさい。私の事、忘れて下さい!」
と悠斗に言うと、一人、逃げる様に店を出て行く美紀。

池本から事情を聞いて知っている仲間達は、それぞれに笑い出す。

池本「やっぱりな……」

池本、悠斗の横に来る。

池本「仕返し出来たな」

悠斗「あぁ」

池本「もう二度とお前には近付かないだろうな。ストーカーから完全解放されて、良かったな!」

悠斗「あぁ。ちょっとは堪えただろう。でも、俺、別に嘘はついてないんだけどな……」

池本「えっ?」

悠斗「だって、年取って、死ぬ前って寝たきりになるだろうし、またストレス溜めたら体内の悪い物が暴れ出して、また脳の手術出来ない箇所に出来るかもしれないから……」

池本「あぁ……」

悠斗「大分、先の事なのに……」
と言って、笑う悠斗。

悠斗、仲間に大きな声で、
悠斗「皆んなを巻き込んで、ごめんな! でも、助かったよ」
と言って、皆に頭を下げる。

仲間達は皆んな笑顔で、悠斗がきちんと、ストーカーから逃れられた事に拍手を送る。
悠斗、ホッとした表情。

   
そこに、真彩と優衣が店に入って来る。
賑やかな店内に驚く真彩と優衣。

悠斗が仲間達と楽しそうにしているのを見て、真彩、ホッとする。

真彩(心の声)「元気そうで良かった……」

真彩、悠斗の頭の事が心配だったので、悠斗の元気そうな姿を見て、安心する。
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