第52話 母の気持ち

文字数 1,932文字

【高槻レオマンション・806号室】

夜、無事に、自宅に帰って来た真彩。
家に着くや否や、亜希から電話が入り、亜希のお小言を頂戴している真彩。

亜希(声)「何で直ぐ逃げなかったの?! ダメじゃない! どうせ合気道の技、試したかった……ってとこでしょ?!」

真彩「あぁ……ママは何でもお見通しだね。えっ?……て言うか、何で知ってるの?」

亜希(声)「ネットで話題になってるって、悠斗が教えてくれたの。悠斗、直ぐ真彩だって分かったから心配してたよ?!」

真彩「あぁ……」

亜希(声)「優衣ちゃん、真彩を救けようとしたんでしょ?」

真彩「あぁ……うん……」

亜希(声)「SNSの動画、見たよ。優衣ちゃん、真彩の事、命懸けて守ろうとしてたから、もう、優衣ちゃんの行動に、ママ、泣いたよ……」

真彩「あぁ……そんなんもアップされてたんだ……」

亜希(声)「優衣ちゃん、真彩と違って武道なんて習ってないから、さぞ怖かっただろうね……」

真彩「あぁ……だね……明日、ちゃんと謝ります……」

亜希(声)「うん。ちゃんと謝りなさいよ!」

真彩「はーい……」

亜希(声)「あぁ、そうそう、悠斗なんだけど、先生から再検査したいって言われて、したんだけど、何とも無かった。異常無しだって……」

真彩「そっか……良かった……」

亜希(声)「先生、ビックリされてた。CTやMRIで見た画像と全然違うから、狐につままれたみたいだって、不思議がってた……あの腫瘍は何だったんだ?……って話題になってる」

真彩「そっか、そりゃーそうだろうね……」

亜希(声)「真彩のお蔭だよ。本当なら、悠斗、寝たきりの植物人間みたいになってたと思う。真彩が自分の命削って祈ってくれたから、み仏様がお力下さって、悠斗の命救けて下さったんだよ。有難うね。本当に有難う」

真彩「……」

亜希(声)「ママには、真彩みたいな凄い力ないから……」

真彩「?……」

亜希(声)「あぁ、パパも真彩の身体、とっても心配してる。本当に大丈夫?」

真彩「大丈夫だよ。全然平気」

亜希(声)「んーん、なら良いんだけど……」

真彩「あのー、そんな礼なんて言わないでよね。前も言ったけど、私にとったら、この世に存在するたった一人の兄なんだから。当然の事しただけだから。何なら私の命、全部使ってくれて良いんだから」

亜希(声)「何言ってんの?! 真彩……自分の命、大事にしてね。お願いだから。ママもこの命、全部、真彩にあげたいと思ってるんだからね! ママにとって、悠斗も真彩も、大事な大切な子どもなんだからね。解るでしょ?」

真彩「うん……解ってる……」

亜希(声)「なら良いけど……」

真彩「でもさー、ママ……」

亜希(声)「何???」

真彩「私、好奇心の方が勝っちゃうんだよね!」
と言って笑う真彩。

亜希(声)「はい???」
   
電話の向こうで呆れてる亜希。

亜希(声)「ホントにもうー! 困った子だ……」



【ハーモニー社・社長室】

朝早くから、PC操作している真彩。
片方の手に包帯が巻かれている。

その包帯が見えない様に、腕カバーをしている真彩。
そこに、優衣が社長室に入って来る。

すると、
真彩「おはようございます!」
と、笑顔で優衣に挨拶する真彩。

優衣は早めに来たので、まさか真彩が社長室に居るとは思ってもみなかった。

優衣「おぉ……おはようございます。早いですね……」

ビックリした顔で真彩に挨拶する優衣。

真彩、席を立ち、優衣の前に行く。
そして、優衣に深く頭を下げる。

真彩「昨日はすいませんでした!」

優衣「えっ?」

真彩「優衣ちゃんの言うこと聞かなかったから……」

優衣「?……」

真彩「ママに怒られた」

優衣「あぁ……」

真彩「怖い思いさせてしまって、ごめんなさい」

優衣「あの、もう、これからは危ない事は止めて下さいね、お願いします。マーちゃんといたら私の心臓いくつあっても足りないんだから……」

真彩「はい、すいません。肝に銘じて……」

優衣「ホントかなぁー?」
と言って、首を傾げる優衣。

真彩「ホント、ホント」

優衣「怪しいなぁ……?」
   
真彩、苦笑い。

真彩(心の声)「優衣ちゃん、あの時、命懸けで私の事、守ろうとしてくれて……有難うね」
  
真彩、優衣をじっと見詰める。

優衣、真彩の熱い視線を感じて、
優衣「んん? どうした???」
と、首を傾げて真彩に聞く。

真彩「うん? 優衣ちゃんが私の傍にいてくれて、嬉しいなぁー……って思ったの……」

優衣「えぇー? 何、可愛い事、言ってんの?!」
   
ちょっと照れてる優衣。

そして、真彩の頭をポンポンする優衣。

優衣「真彩は私の大事な妹だからね! 生きててくれて、有難う!」
と、意味深な事を言って、真彩をハグする優衣。

真彩、優衣の愛に包まれ、微笑む。

真彩も優衣の背中に手を回し、優衣に抱き着く。
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