第125話 真彩の存在に感謝

文字数 3,538文字

【中村家(悠斗と真彩の実家)】

悠斗と真彩、実家の玄関で靴を脱いでいる。

母親の亜希が玄関にやって来て、
亜希「お帰り!」
と、笑顔で悠斗と真彩に言う。

真彩「ママ、只今!」
悠斗「只今!」

真彩、亜希に、
真彩「ケーキ買って来た」
と言って、紙袋に入っているケーキを渡す。
 
リビングのドアを開けると、新聞を読んでいる智之に挨拶する悠斗と真彩。

悠斗「只今!」
真彩「パパ、只今!」

智之「おぅ、お帰り!」
と言って、悠斗と真彩を見て笑顔の智之。

真彩「パパ、人気のケーキ屋さんのケーキ買って来たから、食べよ?」

智之「あぁ、良いねー」

真彩「珈琲? 紅茶? どっちが良い?」

智之「あぁ、紅茶が良いなぁ」

真彩「はーい」
と、笑顔で返事する真彩。

悠斗と真彩、鞄を置いて、洗面所に手を洗いに行く。

智之、亜希の顔を見て、
智之「真彩が帰って来ると、家がパーっと明るくなるなぁー」
と、微笑んで言う。

亜希「ホント。明るく照らしてくれるね」
亜希も微笑む。

真彩、台所に行き、ケーキ皿とフォークを用意する。

亜希は、電気ケトルでお湯を沸かし、真彩と一緒に飲み物の用意をする。

     ×  ×  ×  ×

智之、亜希、悠斗、真彩が応接ソファーに座り、家族団らんでおやつタイムとなる。

全員で、「頂きます!」と言って、手を合わせる。

そして悠斗、早速、ケーキを食べる。

すると、
悠斗「んん、これ、美味しい」
と言って、嬉しそうな顔をする悠斗。

真彩「悠斗はチョコ系が好きだよねー」
   
悠斗、自分が食べているケーキの一口大をフォークに乗せ、手を添えて、真彩の口元に持って行く。

悠斗「はい、あーん」    
と言って、真彩に口を開けさせ、自分のケーキを真彩の口に入れてあげる悠斗。

真彩、それを味わって食べる。

真彩「あぁ、ヘーゼルナッツ入ってる? クリームが美味しいね!」

悠斗「だろ?」
と言って、悠斗、真彩に微笑む。

真彩「私のはどうかな?」  
  
真彩、自分が食べる前に、フォークでケーキを一口大に切り、それをフォークに乗せ、手を添えて、悠斗の口に持って行く。

真彩「はい、あーん」
と言って、悠斗の口の中にケーキを入れてあげる真彩。

悠斗「あぁ、美味しい。やっぱり、あの店、生クリームが美味しいよな」
と言って、真彩に微笑む。

そして真彩、自分のケーキを食べる。

真彩「あぁ、美味しい! やっぱ、生クリームだよね! スポンジも美味しいけど」  

すると悠斗、真彩の顔を見て、  
悠斗「あっ……」
と言って、真彩の唇に付いたクリームを舐める悠斗。

真彩と悠斗、微笑み合う。   
 
母親の亜希は、二人を微笑みながら見ている。

     ×  ×  ×  ×
  
おやつを食べ終わって、リビングでくつろぐ悠斗と真彩。

悠斗、いつもの様に、絨毯の上に座り、悠斗の足の間に真彩が座る。

そして、真彩をバックハグしながらテレビを見ている悠斗。

バラエティー番組を見ながら、悠斗と真彩、爆笑している。


台所で用事をしている亜希の所に、智之がやって来る。

智之「なぁ、あの二人、あんなに仲良かったのか?」

亜希「えっ? 昔からああだけど? あぁ、パパはいつも帰るの遅かったから、二人が仲良いの知らなかったんだもんね……私の前でも平気でいちゃついてたから。でも二人にとったらあれが普通だから……」

智之「あぁ、そう言えば、小っちゃい頃、あの二人、いつもピッタリくっついてたなぁー」

亜希「うん。一卵性双生児って感じ」

智之「はぁ……俺、全然、知らなかった。会社だったら、管理職、失格だな」  
  
亜希「まぁ、家での管理職は失格だけど、会社ではパーフェクトヒューマンだから、良いんじゃないの?」
と言って、智之に微笑む亜希。

真彩、時々、振り返って悠斗に笑顔を振り撒く。
すると悠斗、その度に真彩にキスをする。

真彩「ねぇねぇ、パパ、ママ、これ面白いよ! 見て見て?!」    
と、智之と亜希を呼ぶ真彩。

可愛く言う真彩に、メロメロな智之。
智之「なになに?」
と、直ぐに悠斗と真彩の所に行く。

そして亜希も、
亜希「何? 格付け?」  
と言って、悠斗と真彩の所に行く。
  
亜希(心の声)「はぁー、何て幸せなんでしょう。百合ちゃん、真彩を私に授けてくれて、本当に有難うね。感謝してます」


バラエティー番組が終わり、静かになると智之が、
智之「お前達、ずっと仲良くいてくれよ」
と、真面目な顔で、悠斗と真彩に向かって言う。

真彩「んん? パパ、何かあったの?」

すると、
智之「あぁ、この前、高校時代の友達と飲んでたんだけど、そいつの息子が最近、離婚してな……まだ結婚して一年なのに……」
と、話し出す智之。

真彩「離婚の原因は?」

智之「あぁ、息子が浮気したらしい……と言うか、結婚前に何人かの女性と並行して付き合ってたみたいで……」

真彩「あらら。じゃー、元カノの一人と浮気したって事?」

智之「あぁ、そうみたい。一人か二人か知らんけど」

真彩「へーぇ、じゃー、その息子さん、きっとカッコイイんだろうね」

智之「いや、一度会った事あるけど、そんなにカッコイイとは思わんかった。でも、愛想が良いし、気遣いが出来るなって思った。父親曰く、人を喜ばせる才能あるって。まぁ、八方美人なんだろうな」

悠斗「よく気が付いてマメな人って事か……」

真彩「八方美人なんだ。じゃぁ、パパと悠斗と一緒ジャン」

真彩の言葉に即、反応し、智之と悠斗が怪訝そうな顔で真彩を見る。

すると、
真彩「あっ、元へ。私もでーす。すいません!」
と言って、てへぺろする真彩。

悠斗「んん?」

亜希「でも、女性は、そういう人に魅かれるからね」

亜希の言葉に、智之が即、反応して、亜希の顔を見る。

真彩「そうだよね、気遣い出来て、喜ばせてくれたら好きになっちゃうよね」

真彩の言葉に、悠斗も即、反応して、真彩を見る。

真彩「自分が、一緒にいて楽しかったり、気を遣わないで済む人って最高だけど、でも、相手の心は違うかもね。一生懸命に気を使ってるから、だから、別の人に癒しを求めちゃうかもね。知らんけど……」

智之「それでな、その息子、離婚調停中の嫁に刺されそうになったんだって」

真彩「?……」

悠斗「えっ?! 怖っ」

亜希「怖いね。で、無事だった訳?」

智之「あぁ、通りかかった女性が救けてくれて、無傷で無事だったって」

悠斗「えっ? でも、刺されそうになったって事は、刃物持ってたって事だよね?」

智之「あぁ、そんなに大きくないナイフ持ってたらしい」

亜希「怖っわっ。えぇー、でも、未遂かもしれないけど、傷害罪になるのかな?」

悠斗「いや、法律上、傷害未遂罪っていうのは無いんじゃない? 暴行罪になると思うけど?」

亜希「暴行罪って、拘留されて懲役とかになるのかな?」

すると悠斗、直ぐにスマホで調べる。

悠斗「あぁ、二年以下の懲役または三十万円以下の罰金、拘留って書いてる。あっ、殴る、蹴る、突き飛ばしたり、物を投げたりも、これに該当するんだってさー」

亜希「えぇ? そんなの、男子だったら、友達同士で普通にやってない?」

悠斗「やってるね。俺達は冗談でやってたけど」

亜希「でも、その時は未だ、離婚成立してないから奥さんな訳でしょ? その奥さんが暴行罪で捕まるって、かなりショックだよね」

智之「あぁ、でも、その、止めてくれた女性が、二人の中に入ってくれて、仲裁してくれたんだって。どっちもどっちだからって、和解に導いてくれたって言ってた」

亜希「で、二人共、納得した訳?」

智之「うん。嫁さんも正気に返ったみたいで、自分のしようとした事が恐ろしくなったって。息子の方も、嫁さんにそんな行為をさせてしまったのが自分のせいだって、自覚して、反省したらしい」

亜希「そうなんだ。じゃー、警察沙汰にはならなかったんだね」

智之「あぁ。届けは出さなかったって」

亜希「それは良かったね」

悠斗「でも、元の鞘に収まるのは無理でしょ?」

智之「あぁ、流石にな。でも、円満離婚したらしいわ」

亜希「良かった。でも、その元お嫁さん、精神的に大丈夫かな? そんな恐ろしい事した訳だから……」

真彩「あぁ、彼女、霊媒体質で、憑依されただけだから、大丈夫だよ。今後、気を付ける様に言っておいたし、もし憑依されて、自分の感情がコントロール出来なくなったら、咒を唱えるんだよって言っておいたから」

智之「?……」
亜希「?……」
悠斗「?……」

智之、亜希、悠斗が、「えぇー?!」と言って、身体をのけぞり、真彩の顔を見詰めている。

真彩「咒を書いたカード、渡しといたから大丈夫だと思う」
と、平然と言う真彩。

真彩の言葉に驚きを隠せない智之、亜希、悠斗。

まじまじと真彩の顔を見ている三人。

しかし、真彩は、サスペンスドラマが始まり、食い入る様にテレビ画面をじっと見ている。
 


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