六十二 決着
文字数 2,101文字
キッテが、溜息を吐くと片方の前足で、頭をぽりぽりとかいた。
「もう悪さをしないのなら、消すのだけは勘弁してやる」
ゴッドナノマの顔がとても嬉しそうな物になる。
「しないゴッドナノマ。もう二度と悪さなんてしないゴッドナノマ」
「信用するのですの?」
カレルが至極嫌そうな顔で言った。
「俺も似たようなもんだからな。こいつよりも悪さをしてたしな」
「キッテは違うナノマ。ナノマはキッテのデータを見て知ってるナノマ。キッテのやった事はゴッドナノマのやった事とは全然違うナノマ。キッテは軍に所属してたナノマ。命令でしか戦ってないナノマ」
「それはそうだが、それでもな」
「キッテ。またそういう事言って。女々しいっていうかなんていうか。私、そういう時のキッテの事見ていると悲しくなる」
シズクはキッテの傍に行くと、キッテに抱き付いた。
「シズク。貶けなしてるのか、心配してるのかどっちなんだ?」
キッテが優しい笑みを顔に浮かべる。
「どっちも。キッテが悪いんだからね」
シズクは言ってから、キッテのもふもふの体毛に顔を埋めた。
「それで、ゴッドナノマの事はどうするダノマ?」
「元々はナノマの問題ナノマ。ナノマに全部任せて欲しいナノマ。ナノマが責任をもって処理するナノマ」
「そうだな。それが一番いいかも知れないな」
キッテが頷く。
「ゴッドナノマもそれでいいゴッドナノマ。これからはなんでもナノマの言う事を聞くゴッドナノマ」
「随分と素直になってるナノマ。逆に怪しいナノマ。今度おかしな事をしたら、問答無用でキッテに消してもらうナノマ」
「大丈夫ゴッドナノマ。もう何もしないゴッドナノマ」
ゴッドナノマの巨大な顔や手や足が、雲海の中に消えて行く。
「これで、問題が全部片付いたと思いたいところだけれど、まだ、ソーサ達の事がありますわ」
「我らの負けみたいですね。何をしても、キッテには勝てないようです。ゴッドナノマ様が負けてしまったのですから」
ソーサが言い、その場に力なく、崩れ落ちるようにして、座り込んだ。
「そんなふうに落ち込んでても、然るべき処置はとらせてもらいますわ。差し当たっては、量子コンピューターの解体と、それらに関する技術や研究の破棄ですわね」
「なんと。我らから、進歩という大切な物を奪うのですか?」
「わたくしだって、こんな事はしたくはありませんわ。けれど、貴方達には、危険な代物のようなので、仕方がありませんわ」
「我らの希望の光が、消えてしまうのですね」
ソーサが、そこまで言って、言葉を切り、項垂れる。
「これから、どうやって、生きて行けば、いいのでしょうか」
ソーサが、聞こえるか聞こえないかくらいの、小さな声で呟いた。
「未来なんて予知しなくたっていいじゃないか。今を大切に自由に生きればいい」
キッテが言って、頭をかいていた方の前足を動かすと、シズクの頭を優しく撫でる。
「貴方はなんでもできてしまうから、そう言えるのです。我らみたいな半端者の気持ちは分からないのです」
ソーサが頭を上げて言い、何かに気が付いたような顔をする。
「貴方は、どうやって、ゴッドナノマ様に勝ったのですか? よかったら、教えてくれませんか?」
「何を考えてるのか知らないけど、もう戦いは終わってるナノマ。ゴッドナノマの意志は、ナノマが作った隔離ファイルの中に移してあるナノマ。今更何をやっても無駄ナノマ」
「何もする気はありません。ただ」
ソーサが何やらポーズをとる。
「なんですの? 何を企んでますの?」
「これからは、キッテ様とお呼びしようかと思いまして。ゴッドナノマ様を倒したお方です。キッテ様を神と崇めるのもいいかも知れません」
ソーサが爽やかな笑みを顔に浮かべた。
「切り替えはやっダノマ。怖いダノマ。でも、確かにその事はダノマも気になってるダノマ。キッテはどうやってゴッドナノマと戦ってたんだダノマ?」
キッテが、皆の顔を見回すように、顔と体を動かした。
「思考と自身の動きを高速化してただけだ。ゴッドナノマは未来予知を使って、俺の攻撃をちゃんと防いでたし、反撃もして来てた。だが俺は、防がれても攻撃されても、僅かな時間の間に何度も何度も様々な手段で攻撃を繰り返してたんだ。情報の飽和攻撃、とでも言えばいいのか。次から次へと入って来る情報の多さに、ゴッドナノマは対応できなくなったんだ」
「並列コンピューター相手に、そんな方法で挑もうと思ったなんてナノマ」
「確証はなかったが、作られた時期や、ナノマシンという特性上、俺の中身の方が性能がいいだろうと思ってな。そうなると、計算の速い方が強いからな」
「なるほどダノマ。さすがキッテダノマ。それが戦って来た経験の数の差なのかダノマ」
「相手がどんなに強そうな奴でも、戦う方法はあるって事だ」
「キッテが凄いドヤ顔してる」
「シズク。こういう時くらいいじゃないか」
「戦いは嫌いだみたいな事、言っていたのに?」
「そうだった。まったく。俺って奴は」
キッテが困ったような顔をして言ってから、にこりと笑った。
「もう悪さをしないのなら、消すのだけは勘弁してやる」
ゴッドナノマの顔がとても嬉しそうな物になる。
「しないゴッドナノマ。もう二度と悪さなんてしないゴッドナノマ」
「信用するのですの?」
カレルが至極嫌そうな顔で言った。
「俺も似たようなもんだからな。こいつよりも悪さをしてたしな」
「キッテは違うナノマ。ナノマはキッテのデータを見て知ってるナノマ。キッテのやった事はゴッドナノマのやった事とは全然違うナノマ。キッテは軍に所属してたナノマ。命令でしか戦ってないナノマ」
「それはそうだが、それでもな」
「キッテ。またそういう事言って。女々しいっていうかなんていうか。私、そういう時のキッテの事見ていると悲しくなる」
シズクはキッテの傍に行くと、キッテに抱き付いた。
「シズク。貶けなしてるのか、心配してるのかどっちなんだ?」
キッテが優しい笑みを顔に浮かべる。
「どっちも。キッテが悪いんだからね」
シズクは言ってから、キッテのもふもふの体毛に顔を埋めた。
「それで、ゴッドナノマの事はどうするダノマ?」
「元々はナノマの問題ナノマ。ナノマに全部任せて欲しいナノマ。ナノマが責任をもって処理するナノマ」
「そうだな。それが一番いいかも知れないな」
キッテが頷く。
「ゴッドナノマもそれでいいゴッドナノマ。これからはなんでもナノマの言う事を聞くゴッドナノマ」
「随分と素直になってるナノマ。逆に怪しいナノマ。今度おかしな事をしたら、問答無用でキッテに消してもらうナノマ」
「大丈夫ゴッドナノマ。もう何もしないゴッドナノマ」
ゴッドナノマの巨大な顔や手や足が、雲海の中に消えて行く。
「これで、問題が全部片付いたと思いたいところだけれど、まだ、ソーサ達の事がありますわ」
「我らの負けみたいですね。何をしても、キッテには勝てないようです。ゴッドナノマ様が負けてしまったのですから」
ソーサが言い、その場に力なく、崩れ落ちるようにして、座り込んだ。
「そんなふうに落ち込んでても、然るべき処置はとらせてもらいますわ。差し当たっては、量子コンピューターの解体と、それらに関する技術や研究の破棄ですわね」
「なんと。我らから、進歩という大切な物を奪うのですか?」
「わたくしだって、こんな事はしたくはありませんわ。けれど、貴方達には、危険な代物のようなので、仕方がありませんわ」
「我らの希望の光が、消えてしまうのですね」
ソーサが、そこまで言って、言葉を切り、項垂れる。
「これから、どうやって、生きて行けば、いいのでしょうか」
ソーサが、聞こえるか聞こえないかくらいの、小さな声で呟いた。
「未来なんて予知しなくたっていいじゃないか。今を大切に自由に生きればいい」
キッテが言って、頭をかいていた方の前足を動かすと、シズクの頭を優しく撫でる。
「貴方はなんでもできてしまうから、そう言えるのです。我らみたいな半端者の気持ちは分からないのです」
ソーサが頭を上げて言い、何かに気が付いたような顔をする。
「貴方は、どうやって、ゴッドナノマ様に勝ったのですか? よかったら、教えてくれませんか?」
「何を考えてるのか知らないけど、もう戦いは終わってるナノマ。ゴッドナノマの意志は、ナノマが作った隔離ファイルの中に移してあるナノマ。今更何をやっても無駄ナノマ」
「何もする気はありません。ただ」
ソーサが何やらポーズをとる。
「なんですの? 何を企んでますの?」
「これからは、キッテ様とお呼びしようかと思いまして。ゴッドナノマ様を倒したお方です。キッテ様を神と崇めるのもいいかも知れません」
ソーサが爽やかな笑みを顔に浮かべた。
「切り替えはやっダノマ。怖いダノマ。でも、確かにその事はダノマも気になってるダノマ。キッテはどうやってゴッドナノマと戦ってたんだダノマ?」
キッテが、皆の顔を見回すように、顔と体を動かした。
「思考と自身の動きを高速化してただけだ。ゴッドナノマは未来予知を使って、俺の攻撃をちゃんと防いでたし、反撃もして来てた。だが俺は、防がれても攻撃されても、僅かな時間の間に何度も何度も様々な手段で攻撃を繰り返してたんだ。情報の飽和攻撃、とでも言えばいいのか。次から次へと入って来る情報の多さに、ゴッドナノマは対応できなくなったんだ」
「並列コンピューター相手に、そんな方法で挑もうと思ったなんてナノマ」
「確証はなかったが、作られた時期や、ナノマシンという特性上、俺の中身の方が性能がいいだろうと思ってな。そうなると、計算の速い方が強いからな」
「なるほどダノマ。さすがキッテダノマ。それが戦って来た経験の数の差なのかダノマ」
「相手がどんなに強そうな奴でも、戦う方法はあるって事だ」
「キッテが凄いドヤ顔してる」
「シズク。こういう時くらいいじゃないか」
「戦いは嫌いだみたいな事、言っていたのに?」
「そうだった。まったく。俺って奴は」
キッテが困ったような顔をして言ってから、にこりと笑った。