七 塗(まみ)れる
文字数 4,017文字
チュチュが、皿の上に残っている、切り分けられたオムライスの最後の一つと、シズクの顔とを、交互に何度も見始める。
「チュチュ? どうしたの?」
「女王様。女王様。この国旗付きのを、チュチュが食べちゃっていいむ?」
「いいよ。チュチュの為にそれを残したんだから」
チュチュが、困ったような顔をする。
「むむーん。でも、この国旗は、食べる前に取って欲しいむ。この国旗は大切な物む。この国旗は女王様に持っていて欲しいむ」
「そっか。それは、そうだ。折角、皆が作ってくれた物だもんね」
シズクは、国旗に向かって、手を伸ばすと、国旗を引き抜いた。
この旗、本当によくできている。それにしても、オムライスに旗か。なんだか、子供っぽくて、かわいい。そういえば、さっき、キッテがオムライスの作り方を、ここの人達に教えたって言っていたっけ。キッテにオムライスの作り方を教えたのは、母さんなのかな? それとも、キッテが母さんのオムライスを食べて、母さんの味を覚えたのかな。この旗を立てるっていうのも、キッテが教えたって事なんだろうな。けど、うちのオムライスに旗なんて立っていたっけ? シズクは、旗をためつすがめつしつつ、そんな事を考える。
「女王様。どうしたむ?」
チュチュが心配そうな声で言う。
「なんでもぶっはあ!」
チュチュの声の様子が気になり、引き寄せられるようにして、顔の向きを変えたシズクは、チュチュの姿を見て吹き出した。
「女王様? なんでもぶっはあ! って何む?」
「私の方はいいよ。チュチュのせいで、ぶっはあ! ってなったんだから。そんな事より、チュチュ。ちょっと、それ、何?」
全裸になって、オムライスの中に飛び込でいて、オムライス塗れになっているチュチュに向かって、シズクは言った。
「オムライスを食べてるむ。自分の体よりも大きい物と接する時は、ついついこれをやってしまうむよ。他の皆だってそうしてるむ」
チュチュが、オムライスの中から出ると、皿の端に行き、シズクの足元にいる、国民達の方に顔を向けた。
「ええー!! 何これ? キッテ。キッテ。これ何? これ、何やっているの?」
「これは、まあ、俺としても、どうかとは思うんだがな。興奮すると、皆、こうなっちまうんだ。これは、もう、昔から変わってない事でな。俺も、よく飛びかかられる。まあ、かわいいから、許しちゃうんだけどな」
キッテが言い、優しい笑みを顔に浮かべた。
「え? キッテ? キッテ、どっか、壊れてない? これは、なんというか、かわいいとかじゃなくって、凄く、おかしい事だと思うけど」
はい来たー! やっぱりチュチュだけじゃなかったー! シズクは、そう思いつつ言ってから、オムライス塗れになっている国民達をじっと見つめる。
「やっぱりおかしいって。これは、酷い。酷過ぎて、言葉を失う」
シズクは、国民達を見つめたまま、誰に言うともなく、呟く。
「むむははーん。食べたむ~。食べたむ~。もう、お腹がいっぱいで、食べられないむぅ~」
チュチュが言って、皿の上に寝転んだ。
「なんで、そこで、横になる?」
チュチュを見て、シズクは言う。
「オムライスの味が残ってるお皿を、全身で堪能する為むぅ」
チュチュが皿の上で転げ回る。
「何それ。なんか、もう、チュチュ達の事が、怖くなって来た」
シズクは、転がる事に夢中になっている、チュチュをそのままに、チュチュに気付かれないようにと、そっと、皿を、自分から遠ざけるように、地面の上に置いた。
「シズク。これはこれでいいじゃないか。皆は、きっと、正直者なんだ。本当の自分を隠さないって事だ。それは、悪い事ではないと、俺は思うぞ」
キッテが言って、素敵な笑顔を見せる。
「キッテ。……。キッテが残念なAIになってしまったっていう事は、よく分かった。けど、キッテは私に凄くよくしてくれているから、キッテの残念なところと、皆が変態だって事に関しては、とりあえず、追求しないでおく。でも、でも、これだけは、言わせてもらう。皆が正直者だっていうキッテの言葉には、ちょっと、文句があるかも。キッテは騙されている。チュチュは、キッテに隠し事している」
「シズクに、裸になった自分の事を黙ってないと、ほっぺにちゅーするとかって、チュチュが言ってた事か?」
「知っていたの?」
「もちろん。この国の中に飛ばしてるナノマシンから、情報が入って来るからな。俺は、ここの事ならなんでも知ってる」
シズクは、わざと、嫌そうな顔を作る。
「何それ。それはそれで、引くんだけど。キッテ。キッテもかなり怖いかも」
「怖くはないと思うぞ。俺は、よくも悪くも人類じゃないからな。心はあっても、俺は、AIだからな。監視をしてても、そこには、悪意はない。その事を利用して、皆に悪さをしようなんて、絶対にそんな事は思わない」
「意味分かんない。それに、なんかそれってずるい気がする」
「そうか? そんな事はないと、思うがな。まあ、今までうまくやって来られたんだ。皆を監視する事は、皆を守る事にも繋がるしな」
「ふーん。なんかよく分かんないけど、皆とキッテがいいなら、それでいいのかもね。けど、私は監視しないでよ」
「分かった。シズクの事は監視しない。でも、心配だからな。やっぱり、ちょっとは監視する」
キッテが、困ったような、顔をして言った。
「まあ、ちょっとなら、いいけど」
シズクは、キッテったらあんな顔しちゃって。かわいそうになっちゃったじゃない。と思うと、そう言う。
「そうだ。シズクにくっ付けてるナノマシンを自立型にしちまおう。そうすれば、俺自身が、監視しなくても済む」
シズクは、わざと大げさに溜息を吐ついてみせる。
「別にいいけど、それって、結局は、ナノマシンは監視しているって事じゃないの?」
「まあ、そうなるだけだけどな。うん? ああ。そうか。そうだったな。悪い。すっかり忘れていた」
「キッテ? 何? どうしたの?」
「この世界を管理してるAI達から無線で連絡が入ったんだ。シズクが目覚めたからな。AI達が俺と話したがってる。できるだけ早く会いに来るようにって言ってる」
「私が起きたら駄目なの?」
「それはない。ただ、今後の事を話し合いに行くだけだ。シズクは、この世界に一人しかいない、旧世代の人類だからな。色々な意味で注目されてるんだ」
「なんだか、嫌な感じ」
キッテが、凛々しい顔になる。
「心配するな。何があってもシズクは俺が守る。なんなら、この世界いるAI達をすべて滅ぼしたって構わない」
「そんな事できるの?」
「俺ならできる」
シズクは、キッテの顔をじっと見つめる。
「私も手伝おっか。今の私って、この世界で一番大きい人類なんでしょ? 最強なんじゃないの?」
「AI達も小型化してるからな。今のシズクには、ナノマシンもくっ付けてあるしな。本当に最強かも知れないぞ」
シズクは、最強だって。もうこうなったら、世界征服とかしちゃう? と思う。
「さて。出かけると言っても」
キッテが途中で言葉を切った。
「どうしたの?」
「シズク。今はまだ一人にしない方がいいか? 昔からの知り合いは、俺一人だもんな」
キッテが、優しい目になって、シズクの目を見つめる。
「そうだよ。オムライスのせいで、母さんの事を思い出しだし。一人は、寂しいから、嫌だな」
シズクは言ってから、それに。この変態達で溢れている場所に、一人で取り残されるのは絶対に嫌だ。と思う。
「あの味、分かったか? あれはシズクの母親から教わった味だ。旗も気が付いたか? よく家で食べてだろ? 旗の立ってるオムライス」
「うん。味の方は、母さんの味だって思った。けど、旗なんて立っていたっけ?」
「立ってたぞ。ああ。でも、シズクが、小さい頃だけだったか。小学校の、二年生くらいからは、旗は立ててなかったもな」
キッテの言葉を聞いたシズクは、オムライスに旗。旗。旗。旗。旗。と思いながら、記憶を探る。
「そうだ。そうだ。思い出した。思い出した。旗は、確かに立っていた。色々な国の国旗があって、毎回違うのを、母さんがわざわざ自分で作ってある中から、選んで立ててくれていて。私が、二年生の時に、もう子供じゃないんだからって、怒ったんだ。そしたら、母さんが、じゃあ、旗はもうやめようって言って」
母さん、ちょっとだけ、寂しそうな顔してから、そうだね。もう大きくなったんだもんね。って言って、笑っていたっけ。あの時は、そうだよ。なんて言って、そのまま、何も思わなかったけど、こうして思い出すと、なんか、結構、酷い事しちゃったような気がして来た。と、シズクは言っている途中で、そう思うと、無意識のうちに言葉切った。
「シズク。ぼーっとしてどうした? 大丈夫か?」
「え? うん。ちょっと、昔の事、思い出していた。あの時、学校でさ。友達と、オムライスの話になって、うちのは旗が立っているって言ったら、それは、お子様ランチだ。お子様ランチなんて、幼稚園までだぞ。なんて、言われて、皆にバカにされてさ。それで、母さんに、あんな事を言ったんだった」
「女王様~。酷いむぅぅ。いつの間に、チュチュの乗ってるお皿を下に置いたむぅぅ。チュチュは、悲しいむうぅぅ。女王様は冷たいむぅぅ。うえぇぇぇん」
チュチュの泣き声が聞こえて来る。
「チュチュ。そんな格好で泣かれても。どうしていいか、分からないんだけど」
チュチュの方に目を向けたシズクは、オムライス塗れで、皿の上に寝転んだまま、泣きじゃくっているチュチュを見て、チュチュが泣いているのはかわいそうだとは、思うけど、チュチュは、オムライス塗れで、しかも、変態だからな。こんなふうに泣かれても、これは、どう思えばいいんだろう? と思い、もう、何度目になるのか、また、盛大な溜息を吐いた。
「チュチュ? どうしたの?」
「女王様。女王様。この国旗付きのを、チュチュが食べちゃっていいむ?」
「いいよ。チュチュの為にそれを残したんだから」
チュチュが、困ったような顔をする。
「むむーん。でも、この国旗は、食べる前に取って欲しいむ。この国旗は大切な物む。この国旗は女王様に持っていて欲しいむ」
「そっか。それは、そうだ。折角、皆が作ってくれた物だもんね」
シズクは、国旗に向かって、手を伸ばすと、国旗を引き抜いた。
この旗、本当によくできている。それにしても、オムライスに旗か。なんだか、子供っぽくて、かわいい。そういえば、さっき、キッテがオムライスの作り方を、ここの人達に教えたって言っていたっけ。キッテにオムライスの作り方を教えたのは、母さんなのかな? それとも、キッテが母さんのオムライスを食べて、母さんの味を覚えたのかな。この旗を立てるっていうのも、キッテが教えたって事なんだろうな。けど、うちのオムライスに旗なんて立っていたっけ? シズクは、旗をためつすがめつしつつ、そんな事を考える。
「女王様。どうしたむ?」
チュチュが心配そうな声で言う。
「なんでもぶっはあ!」
チュチュの声の様子が気になり、引き寄せられるようにして、顔の向きを変えたシズクは、チュチュの姿を見て吹き出した。
「女王様? なんでもぶっはあ! って何む?」
「私の方はいいよ。チュチュのせいで、ぶっはあ! ってなったんだから。そんな事より、チュチュ。ちょっと、それ、何?」
全裸になって、オムライスの中に飛び込でいて、オムライス塗れになっているチュチュに向かって、シズクは言った。
「オムライスを食べてるむ。自分の体よりも大きい物と接する時は、ついついこれをやってしまうむよ。他の皆だってそうしてるむ」
チュチュが、オムライスの中から出ると、皿の端に行き、シズクの足元にいる、国民達の方に顔を向けた。
「ええー!! 何これ? キッテ。キッテ。これ何? これ、何やっているの?」
「これは、まあ、俺としても、どうかとは思うんだがな。興奮すると、皆、こうなっちまうんだ。これは、もう、昔から変わってない事でな。俺も、よく飛びかかられる。まあ、かわいいから、許しちゃうんだけどな」
キッテが言い、優しい笑みを顔に浮かべた。
「え? キッテ? キッテ、どっか、壊れてない? これは、なんというか、かわいいとかじゃなくって、凄く、おかしい事だと思うけど」
はい来たー! やっぱりチュチュだけじゃなかったー! シズクは、そう思いつつ言ってから、オムライス塗れになっている国民達をじっと見つめる。
「やっぱりおかしいって。これは、酷い。酷過ぎて、言葉を失う」
シズクは、国民達を見つめたまま、誰に言うともなく、呟く。
「むむははーん。食べたむ~。食べたむ~。もう、お腹がいっぱいで、食べられないむぅ~」
チュチュが言って、皿の上に寝転んだ。
「なんで、そこで、横になる?」
チュチュを見て、シズクは言う。
「オムライスの味が残ってるお皿を、全身で堪能する為むぅ」
チュチュが皿の上で転げ回る。
「何それ。なんか、もう、チュチュ達の事が、怖くなって来た」
シズクは、転がる事に夢中になっている、チュチュをそのままに、チュチュに気付かれないようにと、そっと、皿を、自分から遠ざけるように、地面の上に置いた。
「シズク。これはこれでいいじゃないか。皆は、きっと、正直者なんだ。本当の自分を隠さないって事だ。それは、悪い事ではないと、俺は思うぞ」
キッテが言って、素敵な笑顔を見せる。
「キッテ。……。キッテが残念なAIになってしまったっていう事は、よく分かった。けど、キッテは私に凄くよくしてくれているから、キッテの残念なところと、皆が変態だって事に関しては、とりあえず、追求しないでおく。でも、でも、これだけは、言わせてもらう。皆が正直者だっていうキッテの言葉には、ちょっと、文句があるかも。キッテは騙されている。チュチュは、キッテに隠し事している」
「シズクに、裸になった自分の事を黙ってないと、ほっぺにちゅーするとかって、チュチュが言ってた事か?」
「知っていたの?」
「もちろん。この国の中に飛ばしてるナノマシンから、情報が入って来るからな。俺は、ここの事ならなんでも知ってる」
シズクは、わざと、嫌そうな顔を作る。
「何それ。それはそれで、引くんだけど。キッテ。キッテもかなり怖いかも」
「怖くはないと思うぞ。俺は、よくも悪くも人類じゃないからな。心はあっても、俺は、AIだからな。監視をしてても、そこには、悪意はない。その事を利用して、皆に悪さをしようなんて、絶対にそんな事は思わない」
「意味分かんない。それに、なんかそれってずるい気がする」
「そうか? そんな事はないと、思うがな。まあ、今までうまくやって来られたんだ。皆を監視する事は、皆を守る事にも繋がるしな」
「ふーん。なんかよく分かんないけど、皆とキッテがいいなら、それでいいのかもね。けど、私は監視しないでよ」
「分かった。シズクの事は監視しない。でも、心配だからな。やっぱり、ちょっとは監視する」
キッテが、困ったような、顔をして言った。
「まあ、ちょっとなら、いいけど」
シズクは、キッテったらあんな顔しちゃって。かわいそうになっちゃったじゃない。と思うと、そう言う。
「そうだ。シズクにくっ付けてるナノマシンを自立型にしちまおう。そうすれば、俺自身が、監視しなくても済む」
シズクは、わざと大げさに溜息を吐ついてみせる。
「別にいいけど、それって、結局は、ナノマシンは監視しているって事じゃないの?」
「まあ、そうなるだけだけどな。うん? ああ。そうか。そうだったな。悪い。すっかり忘れていた」
「キッテ? 何? どうしたの?」
「この世界を管理してるAI達から無線で連絡が入ったんだ。シズクが目覚めたからな。AI達が俺と話したがってる。できるだけ早く会いに来るようにって言ってる」
「私が起きたら駄目なの?」
「それはない。ただ、今後の事を話し合いに行くだけだ。シズクは、この世界に一人しかいない、旧世代の人類だからな。色々な意味で注目されてるんだ」
「なんだか、嫌な感じ」
キッテが、凛々しい顔になる。
「心配するな。何があってもシズクは俺が守る。なんなら、この世界いるAI達をすべて滅ぼしたって構わない」
「そんな事できるの?」
「俺ならできる」
シズクは、キッテの顔をじっと見つめる。
「私も手伝おっか。今の私って、この世界で一番大きい人類なんでしょ? 最強なんじゃないの?」
「AI達も小型化してるからな。今のシズクには、ナノマシンもくっ付けてあるしな。本当に最強かも知れないぞ」
シズクは、最強だって。もうこうなったら、世界征服とかしちゃう? と思う。
「さて。出かけると言っても」
キッテが途中で言葉を切った。
「どうしたの?」
「シズク。今はまだ一人にしない方がいいか? 昔からの知り合いは、俺一人だもんな」
キッテが、優しい目になって、シズクの目を見つめる。
「そうだよ。オムライスのせいで、母さんの事を思い出しだし。一人は、寂しいから、嫌だな」
シズクは言ってから、それに。この変態達で溢れている場所に、一人で取り残されるのは絶対に嫌だ。と思う。
「あの味、分かったか? あれはシズクの母親から教わった味だ。旗も気が付いたか? よく家で食べてだろ? 旗の立ってるオムライス」
「うん。味の方は、母さんの味だって思った。けど、旗なんて立っていたっけ?」
「立ってたぞ。ああ。でも、シズクが、小さい頃だけだったか。小学校の、二年生くらいからは、旗は立ててなかったもな」
キッテの言葉を聞いたシズクは、オムライスに旗。旗。旗。旗。旗。と思いながら、記憶を探る。
「そうだ。そうだ。思い出した。思い出した。旗は、確かに立っていた。色々な国の国旗があって、毎回違うのを、母さんがわざわざ自分で作ってある中から、選んで立ててくれていて。私が、二年生の時に、もう子供じゃないんだからって、怒ったんだ。そしたら、母さんが、じゃあ、旗はもうやめようって言って」
母さん、ちょっとだけ、寂しそうな顔してから、そうだね。もう大きくなったんだもんね。って言って、笑っていたっけ。あの時は、そうだよ。なんて言って、そのまま、何も思わなかったけど、こうして思い出すと、なんか、結構、酷い事しちゃったような気がして来た。と、シズクは言っている途中で、そう思うと、無意識のうちに言葉切った。
「シズク。ぼーっとしてどうした? 大丈夫か?」
「え? うん。ちょっと、昔の事、思い出していた。あの時、学校でさ。友達と、オムライスの話になって、うちのは旗が立っているって言ったら、それは、お子様ランチだ。お子様ランチなんて、幼稚園までだぞ。なんて、言われて、皆にバカにされてさ。それで、母さんに、あんな事を言ったんだった」
「女王様~。酷いむぅぅ。いつの間に、チュチュの乗ってるお皿を下に置いたむぅぅ。チュチュは、悲しいむうぅぅ。女王様は冷たいむぅぅ。うえぇぇぇん」
チュチュの泣き声が聞こえて来る。
「チュチュ。そんな格好で泣かれても。どうしていいか、分からないんだけど」
チュチュの方に目を向けたシズクは、オムライス塗れで、皿の上に寝転んだまま、泣きじゃくっているチュチュを見て、チュチュが泣いているのはかわいそうだとは、思うけど、チュチュは、オムライス塗れで、しかも、変態だからな。こんなふうに泣かれても、これは、どう思えばいいんだろう? と思い、もう、何度目になるのか、また、盛大な溜息を吐いた。