五十八 対話
文字数 2,140文字
カレルと目が合ったシズクは、ちょっとキッテ、なんでここで私? カレルさんも、そんなんに見つめないで。私、なんにもできないよ? と思う。
「シラクラシズク。お願いしますわ。何かいい解決案を出して欲しいですわ」
「え? 急に、ええっと、急じゃなくってもだけど、そんな事言われても」
シズクは、慌てて、言葉を返す。
「未来予知ができるんだったら、全部無意味ナノマ。シズクにもナノマ達にもできる事は何もないと思うナノマ」
「確かにそうだダノマ。ここで何かをやってもその結果がどうなるかを、そっちのあんたは知ってるはずなんだからダノマ」
「その通りです。我はこれから起こる事を全部知っています。貴方達が我らに対抗する手段は、一つしかありません」
「一つ? 未来予知に対抗する手段なんてあるの?」
シズクは、思わず大きな声を上げた。
「はい。あります。それは、ナノマがダノマから得た既知の巨大数を使っても、数値化ができないほどの数のナノマシンを使って未来を予知する事です」
「並列コンピューターとして使うって事ナノマ?」
「そうです。しかも、貴方は自我を持つAIです。貴方がその中に加われば、いえ、違いますね。もう、貴方と融合したナノマシン達は自我を持っているはずですから、それらが並列コンピューター化して、未来予知をすれば、我らの未来予知とは、もっと違った、もっと正確な、結果を得る事ができるかも知れません。我らよりも正確に、未来予知ができれば、貴方達は、我らよりも先に未来を変える事ができるはずです。そうなれば、貴方達の望む未来を選ぶ事ができると思います」
「どうして、そんな事を、わたくし達に教えるのですの?」
カレルが自身の中に生まれた疑念から来る、表情や声音の変化を、包み隠さずにそう言った。
「貴方達と争いたくて、未来予知をしているのではありませんからね。我らは未来に起こるであろう、人類が再び犯す過ちを、誰かが不幸になる争いを、なくしたくてやっているのです。ですから、貴方達が我らに対抗して、何かしらの行動をする事は、もちろん、そのやり方によりますけど、やり方さえ間違えてなければ、やっていただいた方がありがたいのです」
「だったら、最初からそのように言えば、よかったのですわ」
カレルが不機嫌そうに言う。
「今までの会話の一連の流れは、予知した未来を確定させるために必要なプロセスなのです。この流れでないと、我らの求める未来には辿り着けないのです」
「それは、なんていうか、改めて、そういう言い方をされると、先を読まれてるような実感があるような気がして、事実、読まれてるのでしょうけれど、少々、面白くないですわね」
「なんだか、さっきよりも、不思議な感じがして来たナノマ。何をやっても、先に読まれてるのかナノマ。そうだナノマ。こっちも、早速、未来予知をやってみるナノマ。どんな感じがするのか楽しみナノマ」
「ちょっと待ったダノマ。ふふふーん。ダノマは騙されないダノマ。ナノマがどんな未来予知をするか、そもそもナノマが未来予知をするかどうか、そんな事も、あんたは、未来予知で知ってるはずダノマ。本当の目的はなんだダノマ?」
ソーサが、新たなポーズをとると、にこっと微笑んだ。
「本当の目的ですか。本当の目的は、そうですね。未来予知が可能になった事で世界は大きく変わります。それによって来る新世界の事を、未来の事を、もっとたくさん、もっと詳しく、知る事ですかね。我は、きっと、来たるべき新世界の事を、色々と知りたいのだと思います」
「どうしてそんなに未来を知りたいんだダノマ?」
「我ら機械化人類は、純粋な生物でもなければ、純粋な機械でもありません。ですから、自分達の行く末がついつい気になってしまうのです。我らはこの世界に存在していていいのか。それとも、いなくなった方がいいのか。常に我らはそんな事を自問自答しているのです。未来の事が分かれば、我らはどうやって生きて行けばいいのかが、分かると思のです」
「争いをなくしたいという話は、どこに行ったのですの?」
「それももちろん考えています。それが一番ですよ。我らの存在意義に関しての話は、おまけです」
「どうも、言ってる事にまとまりがなくって、よく分かりませんわね」
「分からないと思います。我らは、独自の進化を遂げた何者かですから。思考も感覚も皆様とは違いますから」
ソーサが言って、どこか悲し気だが、誇らし気な、笑顔を見せた。
「未来予知をやってみたナノマ。むーんナノマ。これは、なんともいえない、変な感じがするナノマ」
「どんな未来が見えたんだダノマ?」
「それは、一言では言い表す事ができないナノマ。ただ」
ナノマが言葉を切るとシズクを見つめた。
「ナノマ? どうしたの?」
「ナノマは、シズクとはずっと一緒にはいられないんだナノマ。シズクは、ナノマよりも、先に、この世界からいなくなってしまうんだナノマ」
ナノマがシズクの傍に来て、シズクを抱き締める。
「ちょっと、ナノマ?」
「シズク。シズク。さよならは嫌ナノマ。ナノマはずっとずっとシズクと一緒にいたいナノマー」
ナノマが声を上げて泣き始めた。
「シラクラシズク。お願いしますわ。何かいい解決案を出して欲しいですわ」
「え? 急に、ええっと、急じゃなくってもだけど、そんな事言われても」
シズクは、慌てて、言葉を返す。
「未来予知ができるんだったら、全部無意味ナノマ。シズクにもナノマ達にもできる事は何もないと思うナノマ」
「確かにそうだダノマ。ここで何かをやってもその結果がどうなるかを、そっちのあんたは知ってるはずなんだからダノマ」
「その通りです。我はこれから起こる事を全部知っています。貴方達が我らに対抗する手段は、一つしかありません」
「一つ? 未来予知に対抗する手段なんてあるの?」
シズクは、思わず大きな声を上げた。
「はい。あります。それは、ナノマがダノマから得た既知の巨大数を使っても、数値化ができないほどの数のナノマシンを使って未来を予知する事です」
「並列コンピューターとして使うって事ナノマ?」
「そうです。しかも、貴方は自我を持つAIです。貴方がその中に加われば、いえ、違いますね。もう、貴方と融合したナノマシン達は自我を持っているはずですから、それらが並列コンピューター化して、未来予知をすれば、我らの未来予知とは、もっと違った、もっと正確な、結果を得る事ができるかも知れません。我らよりも正確に、未来予知ができれば、貴方達は、我らよりも先に未来を変える事ができるはずです。そうなれば、貴方達の望む未来を選ぶ事ができると思います」
「どうして、そんな事を、わたくし達に教えるのですの?」
カレルが自身の中に生まれた疑念から来る、表情や声音の変化を、包み隠さずにそう言った。
「貴方達と争いたくて、未来予知をしているのではありませんからね。我らは未来に起こるであろう、人類が再び犯す過ちを、誰かが不幸になる争いを、なくしたくてやっているのです。ですから、貴方達が我らに対抗して、何かしらの行動をする事は、もちろん、そのやり方によりますけど、やり方さえ間違えてなければ、やっていただいた方がありがたいのです」
「だったら、最初からそのように言えば、よかったのですわ」
カレルが不機嫌そうに言う。
「今までの会話の一連の流れは、予知した未来を確定させるために必要なプロセスなのです。この流れでないと、我らの求める未来には辿り着けないのです」
「それは、なんていうか、改めて、そういう言い方をされると、先を読まれてるような実感があるような気がして、事実、読まれてるのでしょうけれど、少々、面白くないですわね」
「なんだか、さっきよりも、不思議な感じがして来たナノマ。何をやっても、先に読まれてるのかナノマ。そうだナノマ。こっちも、早速、未来予知をやってみるナノマ。どんな感じがするのか楽しみナノマ」
「ちょっと待ったダノマ。ふふふーん。ダノマは騙されないダノマ。ナノマがどんな未来予知をするか、そもそもナノマが未来予知をするかどうか、そんな事も、あんたは、未来予知で知ってるはずダノマ。本当の目的はなんだダノマ?」
ソーサが、新たなポーズをとると、にこっと微笑んだ。
「本当の目的ですか。本当の目的は、そうですね。未来予知が可能になった事で世界は大きく変わります。それによって来る新世界の事を、未来の事を、もっとたくさん、もっと詳しく、知る事ですかね。我は、きっと、来たるべき新世界の事を、色々と知りたいのだと思います」
「どうしてそんなに未来を知りたいんだダノマ?」
「我ら機械化人類は、純粋な生物でもなければ、純粋な機械でもありません。ですから、自分達の行く末がついつい気になってしまうのです。我らはこの世界に存在していていいのか。それとも、いなくなった方がいいのか。常に我らはそんな事を自問自答しているのです。未来の事が分かれば、我らはどうやって生きて行けばいいのかが、分かると思のです」
「争いをなくしたいという話は、どこに行ったのですの?」
「それももちろん考えています。それが一番ですよ。我らの存在意義に関しての話は、おまけです」
「どうも、言ってる事にまとまりがなくって、よく分かりませんわね」
「分からないと思います。我らは、独自の進化を遂げた何者かですから。思考も感覚も皆様とは違いますから」
ソーサが言って、どこか悲し気だが、誇らし気な、笑顔を見せた。
「未来予知をやってみたナノマ。むーんナノマ。これは、なんともいえない、変な感じがするナノマ」
「どんな未来が見えたんだダノマ?」
「それは、一言では言い表す事ができないナノマ。ただ」
ナノマが言葉を切るとシズクを見つめた。
「ナノマ? どうしたの?」
「ナノマは、シズクとはずっと一緒にはいられないんだナノマ。シズクは、ナノマよりも、先に、この世界からいなくなってしまうんだナノマ」
ナノマがシズクの傍に来て、シズクを抱き締める。
「ちょっと、ナノマ?」
「シズク。シズク。さよならは嫌ナノマ。ナノマはずっとずっとシズクと一緒にいたいナノマー」
ナノマが声を上げて泣き始めた。