七十二 烏ちゃん達の帰還
文字数 2,574文字
ソーサがゆっくりと歩き出し、月世界人類の傍に行くと、月世界人類を見上げた。
「分かりやすい人ですね。話をしてみたら、意外と、素直な人なのかも知れませんね。けれど、皆さん。ここで、この月世界人類と、あれやこれやとやるよりも、母船の中にいる連中や、月世界にいる連中と話をしてみませんか? その方がここにいる、この月世界人類と話すよりも、多くの情報を得られると思います」
ソーサが言葉の途中で、振り返り、シズク達の方に顔を向ける。
「それは、確かに、そうかも知れませんわね。でも、その前に、烏ちゃん達を迎えに行った方が、いいのではないですの?」
「じゃあ、ダノマが行って来るダノマ」
ダノマが言うや否や、背中から翼を生やして、飛び立って行く。
「あ、おい。まったく。いきなり中に行ったりして大丈夫か。おかしな事をしないといいんだがな。それに、あれだ。まだ、シズクがどうしたいのか聞いてないんだぞ」
キッテが困ったような顔をした。
「キッテ。ありがとう。どうしたいかは、考えておくね」
シズクは、月世界人類の処遇を決めるという件が、あやふやになりつつあるという、事の成り行きに、少しほっとしながら、言葉を出す。
「シズクまでそんな事を言って。俺はシズクの事を、本気で心配してるんだぞ」
「うん。心配してくれて凄く嬉しい。キッテが動けるようになって、本当によかったって思っている。もうね、私はね、それだけで、大大大大大満足なんだよ」
シズクは言って、キッテに抱き付く。
「こ、こら、シズク。まったくシズクは」
キッテが嬉しそうに言い、片方の前足でシズクの頭を優しく撫でた。
「キッテだけいちゃいちゃしてずるいナノマ。ナノマも混ぜるナノマ」
ナノマがシズクに飛び付く。
「むぅぅん。チュチュも~、チュチュも~」
チュチュが、そう言ったと思うと、服を脱ぎ、シズクに向かってごろごろと転がって来た。
「なんだかなあ。これじゃ、何もなかった時の、いつもの光景じゃないか」
キッテが言って、優しい笑みを顔に浮かべる。
「そうだ。いい事を思い付いた」
シズクは、不意に頭の中にある考えが浮かんだので、声を上げた。
「どうした? 月世界人類の事で何か思い付いたのか?」
「違う。けど、こんな事があった今だからこそ、やりたいっていう事は思い付いたと思う」
「なんだ? 言ってみてくれ」
「動物達をたくさん呼んで、パーティーをしたい。烏ちゃん達やミーケへのお礼もしたいし、それから、動物達と、これから、皆で、仲良くして行こうねーって」
「パーティー? パーティーか。だが、まだ、月世界人類の事がな」
キッテが、驚いたような顔をしてから、何かを考えているような顔になる。
「じゃあ、月世界人類の事は、カレルさんとソーサさんに丸投げにする。それが私のどうしたいか。それで、それで、できるだけ早くパーティーをやるの。それじゃ、駄目?」
「丸投げってな」
「丸投げにされても困りますわ」
「丸投げですか?」
「だって、カレルさんとソーサさんが、一番、ちゃんとしてそうなんだもん。他の、キッテとか、ナノマとか、ダノマとかだと、すぐに、酷い事しようとするじゃん」
シズクは言って、むぅーっと唇を尖らせる。
「そう言われると、確かに、わたくしに任せてもらった方が、わたくし的にも安心できるような気がしてきましたわ。けれど、ソーサも、というのはちょっと心配ですわ」
「どういう事ですか?」
「月世界人類が高度な文明を持ってるのは明白ですわ。EMP対策を講じてるわたくし達に効果のあるEMP攻撃をしたのですから。そんな連中と触れ合ったら、貴方は月世界人類を崇めてしまいそうですわ」
カレルが言い終えると、探るような目でソーサを見た。
「なるほど。それは一理ありますね」
ソーサが言って微笑む。
「笑ってる場合ではないですわ」
「月世界人類は、キッテ様を恐れています。それは、もう、あんなふうになってしまうほどに。月世界人類がキッテ様を恐れている間は、我は裏切ったりはしません。力なき者に神になる資格はありませんからね」
ソーサが言い、真摯な表情になって、カレルを見つめた。
「急にそんな表情になって、わたくしを見つめられても困りますわ。でも、まあ、貴方は、シラクラシズク達を月世界人類の手から、守ってくれてたという事ですものね。貴方の意図がどうであれ、とりあえず、この星にいる月世界人類と交渉をする間は、一緒でいいですわ。後の事はまた考えますわ」
「なんだか、随分と偉そうな物言いですね」
「そう聞こえたのなら謝りますわ。けれど、今回の事は、この星のすべてに関わる重要な問題ですわ。力が入ってしまうのは許して欲しいですわ」
「そうですね。確かに重要な問題です。できるだけ、余計な事はしないようにしましょう」
「裏切ったりしなければ、何をしてもいいですわ」
カレルが言って、母船の方に顔を向けた。
「烏ちゃん達と、ダノマが、帰って来ましたわ」
「本当だ。烏ちゃん。ダノマ。皆無事?」
シズクは自分達の方に向かって飛んで来ていた、ダノマと烏ちゃん達に向かって、大きな声で聞いた。
「怪我はないかー。楽勝だったかー」
「月世界人類達は、もう、月世界に帰りたいと言ってたダノマ。でも、まだ、ダノマ達は何もやり返してないから、帰っては駄目だと言っておいたダノマ」
「ダノマ。そんな事を言って来たのですの?」
「言って来たダノマ。あいつら、全員、凄く弱そうだったダノマ。月世界なんてあっという間に占領できそうだダノマ」
ダノマがシズク達の傍に降り立つ。
「もうあいつらが、攻撃してくる事はないはずかー。安心するかー」
シズクの肩にとまった烏ちゃんが言い、シズクの頬に顔を擦り付けた。
「烏ちゃん。烏ちゃんのお友達も。本当にありがとう。お陰で助かった」
シズクは、肩の上にいる烏ちゃんと、自分達の周りに降り立った烏達に向かって、そう言ってから、頭を下げた。
「お礼なんていらないかー。前に助けてもらったからやっただけかー」
「烏ちゃん」
シズクは、烏ちゃんの頭をそっと撫でる。
「くすぐったいかー」
烏ちゃんが、とても気持ちよさそうに、目を細めながら言った。
「分かりやすい人ですね。話をしてみたら、意外と、素直な人なのかも知れませんね。けれど、皆さん。ここで、この月世界人類と、あれやこれやとやるよりも、母船の中にいる連中や、月世界にいる連中と話をしてみませんか? その方がここにいる、この月世界人類と話すよりも、多くの情報を得られると思います」
ソーサが言葉の途中で、振り返り、シズク達の方に顔を向ける。
「それは、確かに、そうかも知れませんわね。でも、その前に、烏ちゃん達を迎えに行った方が、いいのではないですの?」
「じゃあ、ダノマが行って来るダノマ」
ダノマが言うや否や、背中から翼を生やして、飛び立って行く。
「あ、おい。まったく。いきなり中に行ったりして大丈夫か。おかしな事をしないといいんだがな。それに、あれだ。まだ、シズクがどうしたいのか聞いてないんだぞ」
キッテが困ったような顔をした。
「キッテ。ありがとう。どうしたいかは、考えておくね」
シズクは、月世界人類の処遇を決めるという件が、あやふやになりつつあるという、事の成り行きに、少しほっとしながら、言葉を出す。
「シズクまでそんな事を言って。俺はシズクの事を、本気で心配してるんだぞ」
「うん。心配してくれて凄く嬉しい。キッテが動けるようになって、本当によかったって思っている。もうね、私はね、それだけで、大大大大大満足なんだよ」
シズクは言って、キッテに抱き付く。
「こ、こら、シズク。まったくシズクは」
キッテが嬉しそうに言い、片方の前足でシズクの頭を優しく撫でた。
「キッテだけいちゃいちゃしてずるいナノマ。ナノマも混ぜるナノマ」
ナノマがシズクに飛び付く。
「むぅぅん。チュチュも~、チュチュも~」
チュチュが、そう言ったと思うと、服を脱ぎ、シズクに向かってごろごろと転がって来た。
「なんだかなあ。これじゃ、何もなかった時の、いつもの光景じゃないか」
キッテが言って、優しい笑みを顔に浮かべる。
「そうだ。いい事を思い付いた」
シズクは、不意に頭の中にある考えが浮かんだので、声を上げた。
「どうした? 月世界人類の事で何か思い付いたのか?」
「違う。けど、こんな事があった今だからこそ、やりたいっていう事は思い付いたと思う」
「なんだ? 言ってみてくれ」
「動物達をたくさん呼んで、パーティーをしたい。烏ちゃん達やミーケへのお礼もしたいし、それから、動物達と、これから、皆で、仲良くして行こうねーって」
「パーティー? パーティーか。だが、まだ、月世界人類の事がな」
キッテが、驚いたような顔をしてから、何かを考えているような顔になる。
「じゃあ、月世界人類の事は、カレルさんとソーサさんに丸投げにする。それが私のどうしたいか。それで、それで、できるだけ早くパーティーをやるの。それじゃ、駄目?」
「丸投げってな」
「丸投げにされても困りますわ」
「丸投げですか?」
「だって、カレルさんとソーサさんが、一番、ちゃんとしてそうなんだもん。他の、キッテとか、ナノマとか、ダノマとかだと、すぐに、酷い事しようとするじゃん」
シズクは言って、むぅーっと唇を尖らせる。
「そう言われると、確かに、わたくしに任せてもらった方が、わたくし的にも安心できるような気がしてきましたわ。けれど、ソーサも、というのはちょっと心配ですわ」
「どういう事ですか?」
「月世界人類が高度な文明を持ってるのは明白ですわ。EMP対策を講じてるわたくし達に効果のあるEMP攻撃をしたのですから。そんな連中と触れ合ったら、貴方は月世界人類を崇めてしまいそうですわ」
カレルが言い終えると、探るような目でソーサを見た。
「なるほど。それは一理ありますね」
ソーサが言って微笑む。
「笑ってる場合ではないですわ」
「月世界人類は、キッテ様を恐れています。それは、もう、あんなふうになってしまうほどに。月世界人類がキッテ様を恐れている間は、我は裏切ったりはしません。力なき者に神になる資格はありませんからね」
ソーサが言い、真摯な表情になって、カレルを見つめた。
「急にそんな表情になって、わたくしを見つめられても困りますわ。でも、まあ、貴方は、シラクラシズク達を月世界人類の手から、守ってくれてたという事ですものね。貴方の意図がどうであれ、とりあえず、この星にいる月世界人類と交渉をする間は、一緒でいいですわ。後の事はまた考えますわ」
「なんだか、随分と偉そうな物言いですね」
「そう聞こえたのなら謝りますわ。けれど、今回の事は、この星のすべてに関わる重要な問題ですわ。力が入ってしまうのは許して欲しいですわ」
「そうですね。確かに重要な問題です。できるだけ、余計な事はしないようにしましょう」
「裏切ったりしなければ、何をしてもいいですわ」
カレルが言って、母船の方に顔を向けた。
「烏ちゃん達と、ダノマが、帰って来ましたわ」
「本当だ。烏ちゃん。ダノマ。皆無事?」
シズクは自分達の方に向かって飛んで来ていた、ダノマと烏ちゃん達に向かって、大きな声で聞いた。
「怪我はないかー。楽勝だったかー」
「月世界人類達は、もう、月世界に帰りたいと言ってたダノマ。でも、まだ、ダノマ達は何もやり返してないから、帰っては駄目だと言っておいたダノマ」
「ダノマ。そんな事を言って来たのですの?」
「言って来たダノマ。あいつら、全員、凄く弱そうだったダノマ。月世界なんてあっという間に占領できそうだダノマ」
ダノマがシズク達の傍に降り立つ。
「もうあいつらが、攻撃してくる事はないはずかー。安心するかー」
シズクの肩にとまった烏ちゃんが言い、シズクの頬に顔を擦り付けた。
「烏ちゃん。烏ちゃんのお友達も。本当にありがとう。お陰で助かった」
シズクは、肩の上にいる烏ちゃんと、自分達の周りに降り立った烏達に向かって、そう言ってから、頭を下げた。
「お礼なんていらないかー。前に助けてもらったからやっただけかー」
「烏ちゃん」
シズクは、烏ちゃんの頭をそっと撫でる。
「くすぐったいかー」
烏ちゃんが、とても気持ちよさそうに、目を細めながら言った。