七十三 ありがとう
文字数 3,310文字
カレルが、早々に、月世界人類達の処遇を決定し、月世界に、自身と、ソーサで行って来ると言い出したので、シズクは、これは大チャンスとばかりに、それなら、今すぐに、二人が行く前に、パーティーをやろう。と言い、シズク達が国に帰るとすぐに、国を挙げての、パーティーの準備が始まった。
地球に存在するすべての人類達と、AI達と、動物達にカレルが連絡を取って、動物達の秘密を人類とAIが知った事について、説明してから、人類達とAI達と動物達を集めて、パーティーを開きたいという旨を伝え、そのパーティーに参加できると言った者達を全員、ダノマの力を利用して、輸送し始める。
カレルの説明が終わると、すぐに、チュチュオネイ達とミーケ達のように、元々、交流のあった者達は、お互いに言葉を用いて、コミニュケーションを取り始め、そういう者達限定ではあったが、瞬く間に人類と動物は新たな関係を築いて行き始めていた。
「今のところは大した混乱もないようですわ。このまま何もなければ、わたくし達の仕事が減ってしまいますわね」
シズク王国の広場で、パーティーの準備をしていたシズク達の元に、少し離れた場所で、AI達と連絡をとっていたカレルが、連絡を終えて、歩いて近付いて来ると、そう言ってから、嬉しそうな、それでいて、どこか、ちょっぴり寂しそうな笑みを顔に浮かべた。
「まだまだどうなるかは分からないさ。今までの事がある。動物に酷い事をされた人類達もいるし、その逆もあるからな。その辺りの事が解決するまでは、仕事は減らないと思うぞ」
「それはなかなかに難しい問題だかー。仲良くできそうにない場所には、直接行ってみるかー。今回の、この、動物達に、こんなにも知性があるという事を、ばらしてしまった責任があるかー」
シズクの肩にとまっていた烏ちゃんが、言って、何やら、面倒臭そうな顔をする。
「それならわたくし達にも、責任の一端がありますわ。どこかに行く時は行って欲しいですわ。同行しますわ」
「私にも何かできる事があったら言って。烏ちゃん達のお陰で助かったんだもん」
シズクはそう言って、烏ちゃんの頭をそっと撫でた。
「そういう意味で言ったんじゃないかー。でも、ありがとうかー。シズクとカレルには感謝感謝だかー」
烏ちゃんが言い、目を細めて、嬉しそうな顔をする。
「女王様。もう、パーティーに参加する人類達や動物達が到着し始めてますめ。そろそろ着替えをして、挨拶に行った方がいいと思いますめ」
ミーケの背中に乗って、シズク達の傍に来た、チュチュオネイが言った。
「え~。それ、本当にやらないと駄目?」
「女王様は、この国の代表にして、今回のパーティーの主催者ですめ。それに。人類達と動物達との懸け橋的な存在ですめ。率先して、この国の国民達と他の国の国民達と動物達の皆が、仲良くできるような空気を作る責任がありますめ」
「ミーケからもお願いするにゃ。今回の事について、ミーケ達当事者に、直接話を聞きたいという動物達もいると思うにゃ。そういう動物達に話をする前に、シズクがどんな人かを知っててもらえてると助かると思うにゃ」
ミーケが言い終えると、とてもかわいい声で、にゃーん。と鳴いた。
「うーん。ずるい。ミーケにそんなふうに言われて、そんなふうにかわいく鳴かれると、断れない。けれど、ドレスを着るのは許して欲しいんだけどなあ」
「女王様は、さっきも言ったけど、この国の代表ですめ。それにですめ。動物達からしてみれば、人類の代表のような物でもありますめ。ちゃんとしないと駄目ですめ」
「もう。なんか、チュチュオネイが怖い」
「チュチュはもうドレスを着たむぅぅ。女王様、どうむぅぅ~? 惚れるむぅ? 食べたいむぅ?」
チュチュオネイと一緒に、ミーケの背中に乗っていた、チュチュが言い、着ていたドレスをすぽぽぽぽ~んと脱いだ。
「速攻で脱いでいるし」
シズクは速攻でつっこみを入れてしまう。
「シズク。びしっと決めて、皆に宣言してやれ。皆で仲良くしましょうってな。人類に対しては、シズクの影響力は抜群なはずだからな。それだけで、揉め事は随分減ると思うぞ」
「揉め事なんて本当に起こると思う?」
シズクは、急に不安になって、キッテに聞いた。
「確実に起こるだろうな。動物達と小さくなった人類達の間には、色々あったからな。だが、今回の、月世界人類から動物達が、自分達の為という事もあったとはいえ、この星を、この星の人類を、シズクやチュチュ達を、守ったという事実もあるからな。それを知れば、考えを改めようと思ってくれる者達も、出て来るはずだ」
「それだけじゃないかー。シズクが前に助けてくれた事を動物達に伝えるかー。逆もあるという事も知らせるんだかー」
「お互いに仲良くすれば、いい事があるという事を、お互いに悪い印象を持ってる、者達に知ってもらえば、きっと、揉め事は減りますわ」
「そういう事だから、ドレスですめ」
シズクは、大げさに項垂れながら、うん。分かった。と、至極、元気のなくなった声で返事をし、着替えをする為に、自分の部屋へとキッテとともに向かった。
「なあ、シズク。シズクは、月世界に行ってみたくはないのか?」
着替えを始めると、キッテが器用に前足や口を使って、シズクの着替えを手伝いながら言う。
「え? なんで?」
「シズクと同じ大きさの人類がいたんだ。月世界というのはどんな場所かとか、月世界人類はどんな連中かとか、気にならないのか?」
「気にならない。というか、いきなり来てあんな事をした連中だよ? また会いたいとかって思うと思う?」
シズクは、怒っているんだぞ~。とアピールする為に、わざと、ふーんふーんと、鼻息を荒くする。
「そうだが、そんな奴らばかりでもないだろう。いい連中もいるんじゃないか?」
シズクはキッテを睨むように見た。
「なんでそんな事言うの?」
「いや、別に、特に、意味はないんだが、ただ」
「ただ、何?」
「こっちのこの世界では、経験できないような事が、向こうではできるんじゃないかと、思ってな」
「そんな事ってある?」
「そりゃ、あるだろう」
「どんな事?」
「それは」
キッテがそこまで言って、何かを考えているような顔になって、沈黙した。
「ぶっぶー。時間が切れ」
「時間切れってな。もう少し考えれば何か浮かぶはずだ」
「ねえ、キッテ。月世界にはさ、いつでも行けると思うんだけど、違う?」
「ああ、まあ、そうだな。カレルとソーサの事だ。地球に来た奴らの処遇も、全然緩かったしな。交流が生まれるようになるだろうな」
「でしょ。だったら、こっちの世界の事を、今は、もっと、大切にしたい。チュチュとかチュチュオネイとか。ミーケとか烏ちゃんとか。ナノマとかダノマとか」
「離れたくないって事か?」
「うん。だって、ほら。私、一度全部失っちゃっているからね。こう見えても、私って、結構、悲劇のヒロインだし」
キッテが声を上げて笑った。
「笑うとこじゃない」
「そうだな。俺が悪かった」
「でも、キッテがいてくれた。それで、千年も、寝ている私を守ってくれていて、こんな国を作ってくれていて、皆に会わせてくれた」
シズクは、そこで言葉を切って、キッテの顔をじっと見つめる。
「お、おい。なんだ、急に?」
キッテが、戸惑っているような顔をした。
「なんでもない」
「おい。なんでもないってなんだ。この流れだと、キッテありがとうとか、大好きだとかって、そういう事を言う流れだったはずだぞ」
「キッテが、そう思っているって、伝わって来たからやめた」
「な、なんだって? 伝わってたのか?」
「うん。顔に出ていた。髭とかも、ぴくぴく動いていたし」
「俺の髭って、そういう時に動くのか?」
「うん。ぴくぴくとかぴんぴんとかって。何を考えているのか、凄く分かりやすいから」
「そうだったのか。全然気が付いていなかった」
キッテがしょんぼりとする。
「なんてね。嘘だよ。嘘。キッテ。ありがとう。今までの事、全部。キッテが私と一緒にいてくれて、本当によかった」
シズクは言って、キッテに抱き着いた。
地球に存在するすべての人類達と、AI達と、動物達にカレルが連絡を取って、動物達の秘密を人類とAIが知った事について、説明してから、人類達とAI達と動物達を集めて、パーティーを開きたいという旨を伝え、そのパーティーに参加できると言った者達を全員、ダノマの力を利用して、輸送し始める。
カレルの説明が終わると、すぐに、チュチュオネイ達とミーケ達のように、元々、交流のあった者達は、お互いに言葉を用いて、コミニュケーションを取り始め、そういう者達限定ではあったが、瞬く間に人類と動物は新たな関係を築いて行き始めていた。
「今のところは大した混乱もないようですわ。このまま何もなければ、わたくし達の仕事が減ってしまいますわね」
シズク王国の広場で、パーティーの準備をしていたシズク達の元に、少し離れた場所で、AI達と連絡をとっていたカレルが、連絡を終えて、歩いて近付いて来ると、そう言ってから、嬉しそうな、それでいて、どこか、ちょっぴり寂しそうな笑みを顔に浮かべた。
「まだまだどうなるかは分からないさ。今までの事がある。動物に酷い事をされた人類達もいるし、その逆もあるからな。その辺りの事が解決するまでは、仕事は減らないと思うぞ」
「それはなかなかに難しい問題だかー。仲良くできそうにない場所には、直接行ってみるかー。今回の、この、動物達に、こんなにも知性があるという事を、ばらしてしまった責任があるかー」
シズクの肩にとまっていた烏ちゃんが、言って、何やら、面倒臭そうな顔をする。
「それならわたくし達にも、責任の一端がありますわ。どこかに行く時は行って欲しいですわ。同行しますわ」
「私にも何かできる事があったら言って。烏ちゃん達のお陰で助かったんだもん」
シズクはそう言って、烏ちゃんの頭をそっと撫でた。
「そういう意味で言ったんじゃないかー。でも、ありがとうかー。シズクとカレルには感謝感謝だかー」
烏ちゃんが言い、目を細めて、嬉しそうな顔をする。
「女王様。もう、パーティーに参加する人類達や動物達が到着し始めてますめ。そろそろ着替えをして、挨拶に行った方がいいと思いますめ」
ミーケの背中に乗って、シズク達の傍に来た、チュチュオネイが言った。
「え~。それ、本当にやらないと駄目?」
「女王様は、この国の代表にして、今回のパーティーの主催者ですめ。それに。人類達と動物達との懸け橋的な存在ですめ。率先して、この国の国民達と他の国の国民達と動物達の皆が、仲良くできるような空気を作る責任がありますめ」
「ミーケからもお願いするにゃ。今回の事について、ミーケ達当事者に、直接話を聞きたいという動物達もいると思うにゃ。そういう動物達に話をする前に、シズクがどんな人かを知っててもらえてると助かると思うにゃ」
ミーケが言い終えると、とてもかわいい声で、にゃーん。と鳴いた。
「うーん。ずるい。ミーケにそんなふうに言われて、そんなふうにかわいく鳴かれると、断れない。けれど、ドレスを着るのは許して欲しいんだけどなあ」
「女王様は、さっきも言ったけど、この国の代表ですめ。それにですめ。動物達からしてみれば、人類の代表のような物でもありますめ。ちゃんとしないと駄目ですめ」
「もう。なんか、チュチュオネイが怖い」
「チュチュはもうドレスを着たむぅぅ。女王様、どうむぅぅ~? 惚れるむぅ? 食べたいむぅ?」
チュチュオネイと一緒に、ミーケの背中に乗っていた、チュチュが言い、着ていたドレスをすぽぽぽぽ~んと脱いだ。
「速攻で脱いでいるし」
シズクは速攻でつっこみを入れてしまう。
「シズク。びしっと決めて、皆に宣言してやれ。皆で仲良くしましょうってな。人類に対しては、シズクの影響力は抜群なはずだからな。それだけで、揉め事は随分減ると思うぞ」
「揉め事なんて本当に起こると思う?」
シズクは、急に不安になって、キッテに聞いた。
「確実に起こるだろうな。動物達と小さくなった人類達の間には、色々あったからな。だが、今回の、月世界人類から動物達が、自分達の為という事もあったとはいえ、この星を、この星の人類を、シズクやチュチュ達を、守ったという事実もあるからな。それを知れば、考えを改めようと思ってくれる者達も、出て来るはずだ」
「それだけじゃないかー。シズクが前に助けてくれた事を動物達に伝えるかー。逆もあるという事も知らせるんだかー」
「お互いに仲良くすれば、いい事があるという事を、お互いに悪い印象を持ってる、者達に知ってもらえば、きっと、揉め事は減りますわ」
「そういう事だから、ドレスですめ」
シズクは、大げさに項垂れながら、うん。分かった。と、至極、元気のなくなった声で返事をし、着替えをする為に、自分の部屋へとキッテとともに向かった。
「なあ、シズク。シズクは、月世界に行ってみたくはないのか?」
着替えを始めると、キッテが器用に前足や口を使って、シズクの着替えを手伝いながら言う。
「え? なんで?」
「シズクと同じ大きさの人類がいたんだ。月世界というのはどんな場所かとか、月世界人類はどんな連中かとか、気にならないのか?」
「気にならない。というか、いきなり来てあんな事をした連中だよ? また会いたいとかって思うと思う?」
シズクは、怒っているんだぞ~。とアピールする為に、わざと、ふーんふーんと、鼻息を荒くする。
「そうだが、そんな奴らばかりでもないだろう。いい連中もいるんじゃないか?」
シズクはキッテを睨むように見た。
「なんでそんな事言うの?」
「いや、別に、特に、意味はないんだが、ただ」
「ただ、何?」
「こっちのこの世界では、経験できないような事が、向こうではできるんじゃないかと、思ってな」
「そんな事ってある?」
「そりゃ、あるだろう」
「どんな事?」
「それは」
キッテがそこまで言って、何かを考えているような顔になって、沈黙した。
「ぶっぶー。時間が切れ」
「時間切れってな。もう少し考えれば何か浮かぶはずだ」
「ねえ、キッテ。月世界にはさ、いつでも行けると思うんだけど、違う?」
「ああ、まあ、そうだな。カレルとソーサの事だ。地球に来た奴らの処遇も、全然緩かったしな。交流が生まれるようになるだろうな」
「でしょ。だったら、こっちの世界の事を、今は、もっと、大切にしたい。チュチュとかチュチュオネイとか。ミーケとか烏ちゃんとか。ナノマとかダノマとか」
「離れたくないって事か?」
「うん。だって、ほら。私、一度全部失っちゃっているからね。こう見えても、私って、結構、悲劇のヒロインだし」
キッテが声を上げて笑った。
「笑うとこじゃない」
「そうだな。俺が悪かった」
「でも、キッテがいてくれた。それで、千年も、寝ている私を守ってくれていて、こんな国を作ってくれていて、皆に会わせてくれた」
シズクは、そこで言葉を切って、キッテの顔をじっと見つめる。
「お、おい。なんだ、急に?」
キッテが、戸惑っているような顔をした。
「なんでもない」
「おい。なんでもないってなんだ。この流れだと、キッテありがとうとか、大好きだとかって、そういう事を言う流れだったはずだぞ」
「キッテが、そう思っているって、伝わって来たからやめた」
「な、なんだって? 伝わってたのか?」
「うん。顔に出ていた。髭とかも、ぴくぴく動いていたし」
「俺の髭って、そういう時に動くのか?」
「うん。ぴくぴくとかぴんぴんとかって。何を考えているのか、凄く分かりやすいから」
「そうだったのか。全然気が付いていなかった」
キッテがしょんぼりとする。
「なんてね。嘘だよ。嘘。キッテ。ありがとう。今までの事、全部。キッテが私と一緒にいてくれて、本当によかった」
シズクは言って、キッテに抱き着いた。