四十 提案
文字数 2,146文字
シズクは、微かに目を伏せると、急に、そんな事聞かれても、どう答えればいいのか分からない。と思う。
「さっきの俺の質問の答えがまだだが、それはもういい。そんな事より、そんな質問は無意味だ。シズクはまだ子供で、色々な事を学んで行ってる最中だ。どうしたいのかなんて聞かれても答えられるはずがないし、仮に答えられたとしても、それは、今後変化して行くかも知れないんだからな」
「そうだとしても、聞かないといけませんの。彼女の持つ力はあまりにも大きく強いのですわ。彼女がその気になれば、わたくし達だってどこまで抵抗できるか分かりませんわ」
「私は、自分の力で、誰かに何か悪い事をしようなんて思ってない」
カレルがキッテに言った、力云々(ちからうんぬん)の言葉を聞いて、自分が責められているような気がして、悲しくなったシズクは、その気持ちをかき消そうと思い、大きな声で言う。
「本当にそうですの? チュチュやチュチュオネイやカラスちゃんが、悪意を持ってこの地を訪れた他の国の者に、怪我をさせられたとしたら? そういう事があっても、何もしないと言えますの?」
シズクは、そんな事があったら、私は、どうするんだろう? と思うと、すぐには、言葉を返す事ができなかった。
「シズクは絶対に、相手を傷付けるような事はしない。それにシズクの事は、いつも俺が見てる。だから、これ以上、こんな事は聞かなくていい」
キッテが強い口調で言う。
「酷い事を聞いてるという自覚はありますわ。けれど、これは大事な事ですの。確証が得られない限り、この話をやめる事はできませんわ」
「確証も何も、お前がシズクと俺を、信じればいいだけの話だ」
「キッテとはもう随分と長い付き合いですもの。個としてのわたくしは、シラクラシズクとキッテの事は信じるに値すると思ってますわ。けれど、この世界を管理してるAIとしての、わたくしとしては、話が違って来てしまうのですわ」
キッテとカレルの言葉を聞きながら、そんな事があったら、私は、どうするんだろう? と思い続けつつ、私は、なんて、答えればいいんだろう? と考えていた、シズクの頭の中に、ある一つの考えが閃いた。
「何か、私が悪い事をしないって証明できるような事はない? 私がこれをすれば信じられるみたいな事」
シズクは言ってから、カレルの顔に目を向ける。
「シズク。そんな事はしなくていい。おいAI。この話はもう終わりだ。これ以上続けようとするなら、俺にも考えがある」
キッテが言って、カレルに向けている目を、睨むように細める。
「キッテ。ありがとう。でも、私なら大丈夫だから、だから、えっと、カレル、さん。話を続けて」
「シズク」
キッテが、困ったような声を出す。
「シラクラシズク。……。それは、とてもいい、提案ですわ。けれど、ちょっと待って欲しいですわ。貴方に何をしてもらうか考えますわ」
「おい。調子に乗るな。俺は賛成してないんだからな」
「キッテ。お願い」
「シズク」
キッテが先ほどよりも、さらに困ったような声を出す。
「考えがまとまりましたわ。貴方には二つの事をお願いしますわ。一つは、暗黒大陸の調査。もう一つは、とある国への訪問ですわ。この二つは、わたくし達、AIの力をもってしても、処理が難しい事柄なのですの。だから、貴方の力を貸して欲しいのですわ」
カレルの言葉を聞いたキッテが、酷く怒った顔をして、低い唸り声を発した。
「ふざけるな。それは、お前達の仕事だ。シズクに押し付けるな」
「確かに、押し付けるような形になってしまうのですけれども、それだけではないのですわ。シラクラシズクがこの世界で生きて行くという事は、何かしらの形でこの世界に関わる事になるという事ですわ。そうなると、シラクラシズクは、ただのこの国の国民、いえ、女王というわけにはいかなくなりますわ。それは、シラクラシズクの存在を知ったほかの国の者達が、必ずその力を求めてこの国を訪れる事になるからですわ。わたくし達のために働いておけば、その時に、シラクラシズクが、わたくし達、管理する者の側にいるという事の証明にもなりますわ。それは、シラクラシズクというこの世界で最強ともいえる力が、一国だけの物ではないという事を、示す意味でも必要な事なのですわ」
カレルが言い終えると、キッテが、とても不愉快そうな表情をする。
「キッテ。私のために怒ってくれてありがとう。でも、私、やる」
「やらなくていい。もっともらしい事を言ってるが、こんなのただの屁理屈だ。シズクの立ち位置なんて俺がどうにでも説明できるし、この国に誰が来たって、俺が追っ払える」
「キッテ。あまり目立つような事をしては、貴方の立場が悪くなりますわ。それに。貴方はこの世界の者達には、あまり深くは干渉できない。前に、そういう約束したはずですわ」
カレルが、悲しそうな顔をする。
「そんな事は、今は、どうでもいい。シズクをお前達の事情に巻き込むな。シズク。もう話は終わった。部屋に戻ろう」
キッテが、もう、話は終わりだとばかりに、立ち上がった。
「チュチュは、チュチュは、皆に仲良くして欲しいむ」
今まで黙って話を聞いていたチュチュが、泣きそうな顔になりながら、大きな声で言った。
「さっきの俺の質問の答えがまだだが、それはもういい。そんな事より、そんな質問は無意味だ。シズクはまだ子供で、色々な事を学んで行ってる最中だ。どうしたいのかなんて聞かれても答えられるはずがないし、仮に答えられたとしても、それは、今後変化して行くかも知れないんだからな」
「そうだとしても、聞かないといけませんの。彼女の持つ力はあまりにも大きく強いのですわ。彼女がその気になれば、わたくし達だってどこまで抵抗できるか分かりませんわ」
「私は、自分の力で、誰かに何か悪い事をしようなんて思ってない」
カレルがキッテに言った、力云々(ちからうんぬん)の言葉を聞いて、自分が責められているような気がして、悲しくなったシズクは、その気持ちをかき消そうと思い、大きな声で言う。
「本当にそうですの? チュチュやチュチュオネイやカラスちゃんが、悪意を持ってこの地を訪れた他の国の者に、怪我をさせられたとしたら? そういう事があっても、何もしないと言えますの?」
シズクは、そんな事があったら、私は、どうするんだろう? と思うと、すぐには、言葉を返す事ができなかった。
「シズクは絶対に、相手を傷付けるような事はしない。それにシズクの事は、いつも俺が見てる。だから、これ以上、こんな事は聞かなくていい」
キッテが強い口調で言う。
「酷い事を聞いてるという自覚はありますわ。けれど、これは大事な事ですの。確証が得られない限り、この話をやめる事はできませんわ」
「確証も何も、お前がシズクと俺を、信じればいいだけの話だ」
「キッテとはもう随分と長い付き合いですもの。個としてのわたくしは、シラクラシズクとキッテの事は信じるに値すると思ってますわ。けれど、この世界を管理してるAIとしての、わたくしとしては、話が違って来てしまうのですわ」
キッテとカレルの言葉を聞きながら、そんな事があったら、私は、どうするんだろう? と思い続けつつ、私は、なんて、答えればいいんだろう? と考えていた、シズクの頭の中に、ある一つの考えが閃いた。
「何か、私が悪い事をしないって証明できるような事はない? 私がこれをすれば信じられるみたいな事」
シズクは言ってから、カレルの顔に目を向ける。
「シズク。そんな事はしなくていい。おいAI。この話はもう終わりだ。これ以上続けようとするなら、俺にも考えがある」
キッテが言って、カレルに向けている目を、睨むように細める。
「キッテ。ありがとう。でも、私なら大丈夫だから、だから、えっと、カレル、さん。話を続けて」
「シズク」
キッテが、困ったような声を出す。
「シラクラシズク。……。それは、とてもいい、提案ですわ。けれど、ちょっと待って欲しいですわ。貴方に何をしてもらうか考えますわ」
「おい。調子に乗るな。俺は賛成してないんだからな」
「キッテ。お願い」
「シズク」
キッテが先ほどよりも、さらに困ったような声を出す。
「考えがまとまりましたわ。貴方には二つの事をお願いしますわ。一つは、暗黒大陸の調査。もう一つは、とある国への訪問ですわ。この二つは、わたくし達、AIの力をもってしても、処理が難しい事柄なのですの。だから、貴方の力を貸して欲しいのですわ」
カレルの言葉を聞いたキッテが、酷く怒った顔をして、低い唸り声を発した。
「ふざけるな。それは、お前達の仕事だ。シズクに押し付けるな」
「確かに、押し付けるような形になってしまうのですけれども、それだけではないのですわ。シラクラシズクがこの世界で生きて行くという事は、何かしらの形でこの世界に関わる事になるという事ですわ。そうなると、シラクラシズクは、ただのこの国の国民、いえ、女王というわけにはいかなくなりますわ。それは、シラクラシズクの存在を知ったほかの国の者達が、必ずその力を求めてこの国を訪れる事になるからですわ。わたくし達のために働いておけば、その時に、シラクラシズクが、わたくし達、管理する者の側にいるという事の証明にもなりますわ。それは、シラクラシズクというこの世界で最強ともいえる力が、一国だけの物ではないという事を、示す意味でも必要な事なのですわ」
カレルが言い終えると、キッテが、とても不愉快そうな表情をする。
「キッテ。私のために怒ってくれてありがとう。でも、私、やる」
「やらなくていい。もっともらしい事を言ってるが、こんなのただの屁理屈だ。シズクの立ち位置なんて俺がどうにでも説明できるし、この国に誰が来たって、俺が追っ払える」
「キッテ。あまり目立つような事をしては、貴方の立場が悪くなりますわ。それに。貴方はこの世界の者達には、あまり深くは干渉できない。前に、そういう約束したはずですわ」
カレルが、悲しそうな顔をする。
「そんな事は、今は、どうでもいい。シズクをお前達の事情に巻き込むな。シズク。もう話は終わった。部屋に戻ろう」
キッテが、もう、話は終わりだとばかりに、立ち上がった。
「チュチュは、チュチュは、皆に仲良くして欲しいむ」
今まで黙って話を聞いていたチュチュが、泣きそうな顔になりながら、大きな声で言った。