二十七 女王の帰還
文字数 2,258文字
シズクとナノマの周りを、烏ちゃん達の群れが、シズク達に語りかけるように、鳴きながら、ゆっくりと旋回し始めたので、シズクは烏ちゃん達の群れを目で追い始める。
「ナノマ。皆連れて帰るしか、ないよね?」
シズクは、あちゃー。一羽でも、どうしようって、思っていたのに。こんなに増えちゃって。と思うと、そう言ってから、ナノマの方に顔を向けた。
「一羽ならともかく、この数を飼うというのは確かに大変だと考えるナノマ。さすがに、これは、安易に飼ってあげた方がいいとは、言えないナノマ」
「うーん。困ったね」
シズクは言って、うーん。どうしたもんかな。と思い、黙考もっこうし始める。
「シズク。烏ちゃん達の体力の事もあるナノマ。一旦、下に降りてみるというのはどうナノマ? それで、少し時間をとって、ゆっくりと考えてみるというのは駄目ナノマ?」
シズクは、そうだね。と言ってから、下に降りろ。と言って拳を握った手を下に向けた。地面の上に降り立つと、ナノマがその横に降りて来て、烏ちゃん達の群れも、シズク達の周りに降りて来る。
シズクは、思い思いの動きをしつつ、円つぶらな瞳で自分達の事を見つめている、烏ちゃん達を見つめる。
皆、一緒がいいんだよね。こうやって、烏ちゃんの事を追いかけて来て、一緒にいるんだもんね。もう。ぐじぐじ悩んでいてもしょうがない。と思った。
「ナノマ。決めた」
「急にどうしたナノマ?」
「この子達を皆連れて帰ろう」
「シズク。それでいいナノマ?」
「だって、もしも、もしもだよ。こんなに飼えないって思っちゃって、どこかに、おいて行ったりして、後から追いかけて来られたりしたら、その事に罪の意識を感じちゃうだろうし、そんなふうにしてくれた烏ちゃん達の健気けなげさを見て、私、凄く泣いちゃいそうだもん」
「シズク。シズクならきっと飼えるナノマ。ナノマと他のナノマシン達も、全力で烏ちゃん達の面倒を見るのを手伝うナノマ」
「本当に?」
シズクは、嬉しくなって、微笑んだ。
「任せるナノマ」
ナノマが嬉しそうに言う。
「じゃあ、全部やってもらっていい?」
「全部ナノマ?」
「うん。ごはんでしょ。トイレでしょ。後は、住む場所とか、ええっと、それに、キッテとチュチュ達に説明しなきゃだろうし」
「了解ナノマ。ナノマ達に全部お任せナノマ」
シズクは、あらら。そう来ちゃったか。キッテだったら、シズク。飼う事は応援するし、必要があれば手伝うが、基本的には、全部自分でやるんだ。それがシズクのためだからな。とか絶対に言うのに。と、ナノマの言葉を聞いてから、そう思う。
「ナノマ。ありがとう。でも、半分は冗談だから。私もやる。ナノマにも手伝ってもらうけど、基本的には、私がこの子達の面倒を見る」
「シズク?」
「いいの。それでいいの」
「分かったナノマ。シズクがいいなら、それでいいナノマ」
「よーし。皆。もう一度、競争ね。一番に、私の国に着いた子には、何か、ええっと、ご褒美を、女王の私からあげましょー」
シズクは言うが早いか、すぐに、全速前進!!! と拳を握った手を空に向けて言った。
「シズク。卑怯ナノマ」
シズクの背後から、ナノマの声と、烏ちゃん達の鳴き声が聞こえて来る。
「なんとでも言うがいいのです。女王はわがままなのです。おほほほほほほ」
これからは、こういうキャラもいいかな? などと思いながら、シズクは言った後で、速度を落とせ。と小さな声で言う。
シズクとナノマと烏ちゃん達の群れは、抜きつ抜かれつしながら、飛んで行く。緑豊かな森を通り過ぎ、緩やかに吹く風に、草の優しく揺れる、永遠に続いているのではないのだろうかと思うほどの、広さのある草原の上を、皆で、ダンスでも踊っているみたいに、絡み合いながら、飛び越して、やがて、烏ちゃん達の群れが、最初に、シズク王国の領空内に到達した。
「あーあ。負けちゃった」
シズクは、国の外と中とを隔てている、山のようになっている所の、内側の地面の上に、降り立つと、上空を旋回している、烏ちゃん達の姿を見ながら言った。
「シズクは優しいナノマ」
ナノマがシズクの横に降りる。
「ナノマだって優しい」
シズクはナノマに笑顔を向ける。
「かあーかあー」
烏ちゃん達の群れが降りて来ると、烏ちゃんがシズクの肩にとまって鳴き、シズクの頬の辺りに顔を擦り付けて来る。
「ちょっと、烏ちゃん、くすぐったい」
シズクは、言って、烏ちゃんの頭を撫でた。
シズクの周りに降りていた烏達が、一斉に鳴くと、皆揃って飛んで、シズクの頭や肩の上にとまろうとする。
「ちょ、ちょっと、それは無理だから。駄目だって」
シズクは、なんだか楽しくなって、笑いながら言い、烏ちゃん達から逃げるように、歩き出す。
「シズク。大丈夫ナノマ?」
「うん。大丈夫。烏ちゃん達から、凄く、なんていうのか、優しさっていうか、気遣いっていうか、そういうのが伝わって来るの。だから、全然平気」
シズクは、烏ちゃん達と戯じゃれ合いながら、チュチュ達の住む家のある方向に向かって、進んで行き始める。
「女王様が帰って来ため」
チュチュオネイの大きな声がして、たくさんの猫達の走っている足音が聞こえて来る。
「ぶゔ~ん。女王様むぅぅぅ。どういう事むぅぅぅ。その烏達は何むぅぅぅ。浮気むぅぅぅ。女王様は、酷いむぅぅぅん」
チュチュの嫉妬に狂った叫び声が、猫達の足音の背後から、聞こえて来た。
「ナノマ。皆連れて帰るしか、ないよね?」
シズクは、あちゃー。一羽でも、どうしようって、思っていたのに。こんなに増えちゃって。と思うと、そう言ってから、ナノマの方に顔を向けた。
「一羽ならともかく、この数を飼うというのは確かに大変だと考えるナノマ。さすがに、これは、安易に飼ってあげた方がいいとは、言えないナノマ」
「うーん。困ったね」
シズクは言って、うーん。どうしたもんかな。と思い、黙考もっこうし始める。
「シズク。烏ちゃん達の体力の事もあるナノマ。一旦、下に降りてみるというのはどうナノマ? それで、少し時間をとって、ゆっくりと考えてみるというのは駄目ナノマ?」
シズクは、そうだね。と言ってから、下に降りろ。と言って拳を握った手を下に向けた。地面の上に降り立つと、ナノマがその横に降りて来て、烏ちゃん達の群れも、シズク達の周りに降りて来る。
シズクは、思い思いの動きをしつつ、円つぶらな瞳で自分達の事を見つめている、烏ちゃん達を見つめる。
皆、一緒がいいんだよね。こうやって、烏ちゃんの事を追いかけて来て、一緒にいるんだもんね。もう。ぐじぐじ悩んでいてもしょうがない。と思った。
「ナノマ。決めた」
「急にどうしたナノマ?」
「この子達を皆連れて帰ろう」
「シズク。それでいいナノマ?」
「だって、もしも、もしもだよ。こんなに飼えないって思っちゃって、どこかに、おいて行ったりして、後から追いかけて来られたりしたら、その事に罪の意識を感じちゃうだろうし、そんなふうにしてくれた烏ちゃん達の健気けなげさを見て、私、凄く泣いちゃいそうだもん」
「シズク。シズクならきっと飼えるナノマ。ナノマと他のナノマシン達も、全力で烏ちゃん達の面倒を見るのを手伝うナノマ」
「本当に?」
シズクは、嬉しくなって、微笑んだ。
「任せるナノマ」
ナノマが嬉しそうに言う。
「じゃあ、全部やってもらっていい?」
「全部ナノマ?」
「うん。ごはんでしょ。トイレでしょ。後は、住む場所とか、ええっと、それに、キッテとチュチュ達に説明しなきゃだろうし」
「了解ナノマ。ナノマ達に全部お任せナノマ」
シズクは、あらら。そう来ちゃったか。キッテだったら、シズク。飼う事は応援するし、必要があれば手伝うが、基本的には、全部自分でやるんだ。それがシズクのためだからな。とか絶対に言うのに。と、ナノマの言葉を聞いてから、そう思う。
「ナノマ。ありがとう。でも、半分は冗談だから。私もやる。ナノマにも手伝ってもらうけど、基本的には、私がこの子達の面倒を見る」
「シズク?」
「いいの。それでいいの」
「分かったナノマ。シズクがいいなら、それでいいナノマ」
「よーし。皆。もう一度、競争ね。一番に、私の国に着いた子には、何か、ええっと、ご褒美を、女王の私からあげましょー」
シズクは言うが早いか、すぐに、全速前進!!! と拳を握った手を空に向けて言った。
「シズク。卑怯ナノマ」
シズクの背後から、ナノマの声と、烏ちゃん達の鳴き声が聞こえて来る。
「なんとでも言うがいいのです。女王はわがままなのです。おほほほほほほ」
これからは、こういうキャラもいいかな? などと思いながら、シズクは言った後で、速度を落とせ。と小さな声で言う。
シズクとナノマと烏ちゃん達の群れは、抜きつ抜かれつしながら、飛んで行く。緑豊かな森を通り過ぎ、緩やかに吹く風に、草の優しく揺れる、永遠に続いているのではないのだろうかと思うほどの、広さのある草原の上を、皆で、ダンスでも踊っているみたいに、絡み合いながら、飛び越して、やがて、烏ちゃん達の群れが、最初に、シズク王国の領空内に到達した。
「あーあ。負けちゃった」
シズクは、国の外と中とを隔てている、山のようになっている所の、内側の地面の上に、降り立つと、上空を旋回している、烏ちゃん達の姿を見ながら言った。
「シズクは優しいナノマ」
ナノマがシズクの横に降りる。
「ナノマだって優しい」
シズクはナノマに笑顔を向ける。
「かあーかあー」
烏ちゃん達の群れが降りて来ると、烏ちゃんがシズクの肩にとまって鳴き、シズクの頬の辺りに顔を擦り付けて来る。
「ちょっと、烏ちゃん、くすぐったい」
シズクは、言って、烏ちゃんの頭を撫でた。
シズクの周りに降りていた烏達が、一斉に鳴くと、皆揃って飛んで、シズクの頭や肩の上にとまろうとする。
「ちょ、ちょっと、それは無理だから。駄目だって」
シズクは、なんだか楽しくなって、笑いながら言い、烏ちゃん達から逃げるように、歩き出す。
「シズク。大丈夫ナノマ?」
「うん。大丈夫。烏ちゃん達から、凄く、なんていうのか、優しさっていうか、気遣いっていうか、そういうのが伝わって来るの。だから、全然平気」
シズクは、烏ちゃん達と戯じゃれ合いながら、チュチュ達の住む家のある方向に向かって、進んで行き始める。
「女王様が帰って来ため」
チュチュオネイの大きな声がして、たくさんの猫達の走っている足音が聞こえて来る。
「ぶゔ~ん。女王様むぅぅぅ。どういう事むぅぅぅ。その烏達は何むぅぅぅ。浮気むぅぅぅ。女王様は、酷いむぅぅぅん」
チュチュの嫉妬に狂った叫び声が、猫達の足音の背後から、聞こえて来た。