五十三 雲の巨人
文字数 2,409文字
ダノマが、肩の上にあるシズクの手に、自身の両手をそっと合わせた。
「それにしても、この展開には、まいったダノマ。本当は、生き延びて、ナノマに復讐するチャンスを狙おうと考えてたダノマ。でも、シズクにそんなふうに言われてしまって、その考えが揺らいで来てしまったダノマ」
「そんな事を言うと、そこにいるAIが黙ってないぞ」
キッテが冗談めかして言う。
「当たり前ですわ。付けると言ってた監視を強化しますわ。けれど、わざわざそんな事を言った事だけは褒めてあげますわ。更正の余地はありそうですわね」
「シズクを巻き込むような事をしたら、絶対に許さないナノマ」
ナノマが言うと、空を覆っている灰色の雲が、雷のような光を発した。
「自分でシズクの傍にいたいなんて言ってたけど、今まで散々自由にやって来たから、今さら、秩序のある中で、やって行けるか自信がないダノマ」
ダノマが、シズクの手の上に乗せていた両手を、自身の胸の前に持って行く。
「俺も、戦争が終わったばかりの頃は、そんな感じだった。でも以外となんとかなるもんだ。心配するな。俺達が傍にいる」
キッテが優しい笑みを顔に浮かべた。
「ナノマ。上にいる子達は、完全に貴方の物になってますわね?」
カレルが空を見上げる。
「なってるナノマ」
「それなら、いつまでもここで話をしててもしょうがないですわ。そろそろ次に向かいたいですわ」
カレルが言い終えると、ダノマの方に顔を向けた。
「頑張ってみるダノマ」
ダノマが頷いてから言う。
「次はどこに行けばいいナノマ?」
「そういえば、まだ、誰にも、言ってなかったですわね。次は、機械化人類の国ですわ」
「機械化人類? それって、私が生きていた時代にもいた人達の事? AI達と戦う為に、機械と人の体を融合したっていう人達だよね?」
シズクは言ってから、でも、私が知っている機械化人類がいたのって千年も前だよね。その子孫達って事なのかな? でも、私が眠る前の世界の人達は、私以外はいないんだよね? 新しい小さい人類達に、機械付きの体が遺伝とかしたって事なのかな? と思い、首を捻った。
「その人達と関係はありますわ。けれど、今のこの世界になってから、新たに生み出されたので、直接的な繋がりなどはないですわ。そういう人類達の可能性を残すという事で、今現在も存在してるのですわ。彼らは、なんといえばいいのか、独特の考え方みたいな物を、持ってますの。それで、わたくし達とは、どうも、反りが合わないのですわ」
「機械化人類とは、これまた懐かしいダノマ。大AI時代の事を思い出すダノマ」
「大AI時代?」
そんな言葉、聞いた事ない。とシズクは思う。
「そうか。シズクは、大AI時代を知らないか」
キッテが言って、どこか、懐かしそうな顔をする。
「いい時代だったのか、悪い時代だったのか。わたくし達のようなタイプのAIには、なんとも言えない時代でしたわね」
「どんな時代だったの?」
「シラクラシズクには話しても構わないのですけれど、チュチュ達には、あまり、聞かせたくはない話ですわ。けれど、ここまで色々な事を話してしまってから、こんな事を言っても、今更ですわね。ナノマ。また、あの速い戦闘機になって欲しいですわ。移動しながらでも、話はできますわ」
カレルが言い終えると、皆の顔を見回した。
「了解ナノマ。では変身ナノマ」
ナノマが戦闘機に変身する。
「あいつらはどうするダノマ? 連れて行くのかダノマ?」
ダノマが空を見上げた。
「おいてってもいいと思うナノマ。もうナノマと同化してるから、皆、ナノマが今なってるような戦闘機にも、変身できるナノマ。だから、呼べばすぐにナノマ達の所に、来る事ができるナノマ」
「それなら安心ですわね」
「シズク。シズクはもう何があっても安心ナノマ」
ナノマが言うと、空を覆っている灰色の雲が、シズクのいる場所の上空を中心にして、渦を巻き始める。渦は、中心の部分をシズクのすぐ傍に向かって伸ばして来ると、渦ではなくなり、ただの雲の塊になってから、二つに分かれて、巨大な人の足の形になった。
「何、これ?」
シズクは、空に向かって伸びている、二つの巨大な足を見上げて、言葉を漏らす。
「シズクの言う事をなんでも聞いて、シズクを守る巨人を作ってみたナノマ。中に乗る事もできるナノマ」
ナノマの言葉に反応するように、足の上の方を覆っている雲が動くと、雲の間を割って、巨大な人の顔が、現れた。
「大きいナノマじゃん」
雲と同じ灰色の、巨大なナノマの顔を見て、シズクは大きな声を上げた。
「なんなら色も付けられるナノマ。ふふふふんナノマ」
巨人の口が動き、そんな言葉を言った。
「しかし、この大きさの巨人を作っても、まだ、雲が空を覆ってるとはな。いったい、どれくらいの数のナノマシンがいるんだ」
「数えた事がないから分からないダノマ。ただ、昔、月まで繋げた事はあったダノマ」
「月まで?」
シズクは、どれくらいの距離があるのか知らないけど、凄く遠いのだけは分かる。と思う。
「月までの距離は、大体三十八万キロメートルダノマ」
「そう、なんだ。やっぱり凄く遠いんだね」
「大した距離じゃないナノマ。光の速度で行けば一秒ちょっとで着くナノマ」
「そうなの? そうだとすると、近いのかな?」
シズクは、今は、雲に覆われていて見えない空の彼方にある、月の姿を想像する。
「それでも、じゅうぶん、遠いですわ。それにしても、凄い数のナノマシンですわね。これだけの数がいれば、その気になればなんでもできそうですわ。シズク。ナノマ。おかしな事は考えないようにして欲しいですわね。何かあったら、対応するのが大変ですわ。では、ナノマ。乗りますわよ」
カレルが言って、戦闘機になっている、ナノマに乗り込んだ。
「それにしても、この展開には、まいったダノマ。本当は、生き延びて、ナノマに復讐するチャンスを狙おうと考えてたダノマ。でも、シズクにそんなふうに言われてしまって、その考えが揺らいで来てしまったダノマ」
「そんな事を言うと、そこにいるAIが黙ってないぞ」
キッテが冗談めかして言う。
「当たり前ですわ。付けると言ってた監視を強化しますわ。けれど、わざわざそんな事を言った事だけは褒めてあげますわ。更正の余地はありそうですわね」
「シズクを巻き込むような事をしたら、絶対に許さないナノマ」
ナノマが言うと、空を覆っている灰色の雲が、雷のような光を発した。
「自分でシズクの傍にいたいなんて言ってたけど、今まで散々自由にやって来たから、今さら、秩序のある中で、やって行けるか自信がないダノマ」
ダノマが、シズクの手の上に乗せていた両手を、自身の胸の前に持って行く。
「俺も、戦争が終わったばかりの頃は、そんな感じだった。でも以外となんとかなるもんだ。心配するな。俺達が傍にいる」
キッテが優しい笑みを顔に浮かべた。
「ナノマ。上にいる子達は、完全に貴方の物になってますわね?」
カレルが空を見上げる。
「なってるナノマ」
「それなら、いつまでもここで話をしててもしょうがないですわ。そろそろ次に向かいたいですわ」
カレルが言い終えると、ダノマの方に顔を向けた。
「頑張ってみるダノマ」
ダノマが頷いてから言う。
「次はどこに行けばいいナノマ?」
「そういえば、まだ、誰にも、言ってなかったですわね。次は、機械化人類の国ですわ」
「機械化人類? それって、私が生きていた時代にもいた人達の事? AI達と戦う為に、機械と人の体を融合したっていう人達だよね?」
シズクは言ってから、でも、私が知っている機械化人類がいたのって千年も前だよね。その子孫達って事なのかな? でも、私が眠る前の世界の人達は、私以外はいないんだよね? 新しい小さい人類達に、機械付きの体が遺伝とかしたって事なのかな? と思い、首を捻った。
「その人達と関係はありますわ。けれど、今のこの世界になってから、新たに生み出されたので、直接的な繋がりなどはないですわ。そういう人類達の可能性を残すという事で、今現在も存在してるのですわ。彼らは、なんといえばいいのか、独特の考え方みたいな物を、持ってますの。それで、わたくし達とは、どうも、反りが合わないのですわ」
「機械化人類とは、これまた懐かしいダノマ。大AI時代の事を思い出すダノマ」
「大AI時代?」
そんな言葉、聞いた事ない。とシズクは思う。
「そうか。シズクは、大AI時代を知らないか」
キッテが言って、どこか、懐かしそうな顔をする。
「いい時代だったのか、悪い時代だったのか。わたくし達のようなタイプのAIには、なんとも言えない時代でしたわね」
「どんな時代だったの?」
「シラクラシズクには話しても構わないのですけれど、チュチュ達には、あまり、聞かせたくはない話ですわ。けれど、ここまで色々な事を話してしまってから、こんな事を言っても、今更ですわね。ナノマ。また、あの速い戦闘機になって欲しいですわ。移動しながらでも、話はできますわ」
カレルが言い終えると、皆の顔を見回した。
「了解ナノマ。では変身ナノマ」
ナノマが戦闘機に変身する。
「あいつらはどうするダノマ? 連れて行くのかダノマ?」
ダノマが空を見上げた。
「おいてってもいいと思うナノマ。もうナノマと同化してるから、皆、ナノマが今なってるような戦闘機にも、変身できるナノマ。だから、呼べばすぐにナノマ達の所に、来る事ができるナノマ」
「それなら安心ですわね」
「シズク。シズクはもう何があっても安心ナノマ」
ナノマが言うと、空を覆っている灰色の雲が、シズクのいる場所の上空を中心にして、渦を巻き始める。渦は、中心の部分をシズクのすぐ傍に向かって伸ばして来ると、渦ではなくなり、ただの雲の塊になってから、二つに分かれて、巨大な人の足の形になった。
「何、これ?」
シズクは、空に向かって伸びている、二つの巨大な足を見上げて、言葉を漏らす。
「シズクの言う事をなんでも聞いて、シズクを守る巨人を作ってみたナノマ。中に乗る事もできるナノマ」
ナノマの言葉に反応するように、足の上の方を覆っている雲が動くと、雲の間を割って、巨大な人の顔が、現れた。
「大きいナノマじゃん」
雲と同じ灰色の、巨大なナノマの顔を見て、シズクは大きな声を上げた。
「なんなら色も付けられるナノマ。ふふふふんナノマ」
巨人の口が動き、そんな言葉を言った。
「しかし、この大きさの巨人を作っても、まだ、雲が空を覆ってるとはな。いったい、どれくらいの数のナノマシンがいるんだ」
「数えた事がないから分からないダノマ。ただ、昔、月まで繋げた事はあったダノマ」
「月まで?」
シズクは、どれくらいの距離があるのか知らないけど、凄く遠いのだけは分かる。と思う。
「月までの距離は、大体三十八万キロメートルダノマ」
「そう、なんだ。やっぱり凄く遠いんだね」
「大した距離じゃないナノマ。光の速度で行けば一秒ちょっとで着くナノマ」
「そうなの? そうだとすると、近いのかな?」
シズクは、今は、雲に覆われていて見えない空の彼方にある、月の姿を想像する。
「それでも、じゅうぶん、遠いですわ。それにしても、凄い数のナノマシンですわね。これだけの数がいれば、その気になればなんでもできそうですわ。シズク。ナノマ。おかしな事は考えないようにして欲しいですわね。何かあったら、対応するのが大変ですわ。では、ナノマ。乗りますわよ」
カレルが言って、戦闘機になっている、ナノマに乗り込んだ。