第35話 2月15日 物忘れ

文字数 1,845文字

ふぅ…。

ここまで話が出来ていると、
「つくったんじゃね?」だの、
「もったんじゃね?」だの思われてしまうが、
それでも構わない。

本当に、
現実世界のほうが何十倍も面白く、そして残酷なのだから。

今朝のことである。
父から着信があった。

「おお、あつか?」
「あ、親父?おはよう、どうしたの?」
「うん、おはよう。実はな、お母さんの叔父さん、
 じいちゃんの一番下の弟が急に逝っちまったらしくてな…」
「え?俺面識ある?」
「いや、無いとは言い難いが、覚えちゃねぇだろ?」
「うん、申し訳ないけど全然…。」
「おう、でだ、とにかくお通夜だの何だので
 俺とお母さん手伝いに行かなきゃならなくなってな。」
「うん。」
「大変申し訳ないんだが、今日の飲み会は延期ってことで宜しく頼むよ。」
「そっかぁ。いやいや、ことがことだし、気にしないでくれ。」
「うん。ああ、相棒と後輩にも宜しく伝えておいてな。」
「ああ、解った。」

今日は私の相棒と、後輩を連れて、
両親の家へ一杯飲みに行く約束をしていたのだ。

両親は私の甥っ子二人の面倒を見ており、
4人で暮らしていた。
子供たちも含め、全員相棒と後輩との面識があったのだが、

高校二年生と中学二年生の甥っ子二人は学校のこともあり、
相棒と後輩には何年も会っていなかったのだ。

久しぶりに会いたい、という甥っ子たちの要望で、
今回の家飲みが決定したはずだったが、
先述した訃報により、延期となってしまったのである。

「ああ、そうそう、あつ。」
「ん?なに?」
「お前にこの間借りた2万円、ちょうどそっちの方行くついでに返すよ。
 いやぁ~助かったよ。ありがとな。」
「え?あ、ああ。」
「んじゃあ、お昼過ぎかな?また連絡するよ。それじゃあ。」
「…あ、ああ。んじゃ、そっちも気ぃつけて。」

…私は本当に物忘れの天才らしい。
確かに、酔っぱらっていたがうろ覚えがある。

高校二年生になる上の子は、大学受験を目前に控え
それに伴い、
所謂予備校というやつへ通わせている。
勿論本人の意思であり、とにかく頑張っているのだ。
故に、やりたいことはやらせてやりたい、との両親の思いで、
多少金額が張ろうとも通わせているのであった。

しかし年末、色々と出費が重なってしまったらしく、
たまたま飲みに来ていた私が、足りない分を補う、
という形をとった、らしい?のだ。
(どうせ酔っぱらって大見得きったのであろう)

その定期預金が今、まさに解約されようとしていた。

私はすぐさま相棒と後輩へ連絡をし、
諸事情故に本日の家飲みが中止になる旨を伝え、
改めて、他所へ飲みに行く段取りをしたのだ。

って、ちょ、え?
飲み行くのかぁあああああああああああああああああああああああ!!!!
中止でいいじゃねぇかぁあああああああああああ!!!!

だってぇ、金出来たんだもの。

莫迦!!!
「返さなくていいよ。そっちで使ってね。」
くれぇ言えねぇのかよぉおお!?
おぉおいいいい!!!!!
さんじゅうはっさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!

うん、まあ、金ないしね!
背に腹は、ってやつだね!!!



ほんっとクソ莫迦中年野良猫だ…。


話はここで終わらない。
つい先ほど、ガールズバーのフタ子から連絡があったのだ。

「バレンタインのチョコあってね、来れるなら確保しておくー!」

はい、きたぁー!!!
これきたぁああああああああ!!!!
これ一斉送信の営業ですからぁあああああああああああああ!!!!

…そうかなぁ?

お前莫迦かぁ!!!???
しっかりしろよ俺ぇええええええええええええ!!!!
飲みに行くのはいいけど、
ガールズバーはやめとけぇえええええええええええええええええ!!!!

という訳で、私は父から2万円を返してもらい、
相棒と後輩と3人で今晩飲みに行くこととなり、
おまけにガールズバーで働く女性からの誘惑L〇NEも受け取ったのだ。

さてさて、中年野良猫に待ち受けているものは何なのか!?
今晩!!!こう、ご期待!!!!!!

…久しぶりにこいつやっちまうんだなぁ~。
…どうせ行くんだろ?それで明日、二日酔いで
やっちまった~っていうんだろ?
くれぇにしか思われてねぇよ!!!!!
もう頼むよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
俺ぇええええええええええええええええ!!!!!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み