第51話 2月24日 紺碧の晴空

文字数 1,509文字

朝。

私はいつもと同じ時間に家を出た。
天気は良いが未だに肌寒い。

祝日だけに人もまばらだが、
仕事なのか、学生なのか、
私と同目的であろう者らも見かけたりして、
檄を飛ばしたい衝動にも駆られる。

繁華街を抜け、駅を目指せば、
設置されているベンチに腰掛け、
酒を呷る者も見かける。

「…あらぁきっと、街の賢者だな。」

なぞ、胸中呟いたりもしてみる。

駅構内は、祝日だというのに
そこまで人は少なくはなく、
それぞれ何かしらの役目を果たそうとしているのか、
どのような目的があるのかしら?
なぞ、他愛のないことまで脳裏を廻る。

昨晩は酒こそ抜いたが、
いつもの不眠でもって大して眠れず、
おまけに寝坊。
とりあえずあるものを容器に詰め、
弁当とも言えぬ、形容しがたいその栄養群を持ち、
身なりを整え家を出たのであった。

10時40分頃出社。
成果物を確認すべく、自身の環境の構築を行う。
その間、あまりの空腹に耐えきれなかったので
何か購おうとすぐそばのスーパーへと赴く。

陰惨な気持ちだ。
明日は給料日だが、手持ちは1千2百円とちょい。
〇払いはもう利用できない。

悩んだ私は、粉末状のスープと炭酸水を購った。
2百円とチョットの出費である。
本当は、このスープと共に、
何か噛み応えのあるパンが食べたかったのだが、
致し方のないことだ。

帰り道、何ともいたたまれない心情になった。
情けなく、憐れでみっともなく、
私はパン一つ購えないのか、と。

暖かいはずの陽光でさえ、
どこか私を責めているような気がして、
雲一つない、紺碧の晴空は、
一層虚しさを増した。

なげぇえええええええええええええええええええええ!!!!!
お前ぇ語りなげぇんだよ莫迦!!!
そして暗ぇええええええええええええええ!!!
天気良いんだしスカっとしろよ中年野良猫ぉお!!!!

…やぁ。

うんうん、猛省してるみたいだな。
そういうのは時間差で来るものだからな。
うん、ざまぁあああああああああああああああああああああああ!!!

…何とでも言ってくれ給え。

1万だ。1万残っていたらもそっと元気はあったのかもな?





どうせ夜中の2時くれぇまで飲んでたんだろぉ?
俺さ、若干感じたんだよな。
お前が敢えて家に置いておいた金持って店行った時の記憶。

えっ?

「無」だったよ。



おっかねぇだろ?
酒の力で押さえつけられたとはいえ
何かを感じることくれぇは出来るさ。
…お前からは何も感じなかった。
それがそこにあるからそうする、みてぇなさ、
なんとも悍ましい感情さ。

…マジかぁ。

うん。
だからな、恒常性の維持って話、よくすんだろ?
もうアレなのさ。お前は飲んで酔ったら、
あの店行く、って本能にインプットされちゃっている訳よ。
で、行ったら行ったで楽しくなって有り金はたいちまう。

…確かになぁ。
おっかねぇ話だが、行くまいと思っていても、
いざ酔って金あると、もうそれが当然のように、
うん、無意識で身体が動いている感じはあるなぁ。

だろぉ?
こいつは一種の病気。
でもなぁ、フタ子なら、
「飲み過ぎてない?」だの言ってくれるし、
お前も何だかんだで自制保とうとしてるしな。
何よりあいつは上がるのが早い。

…うん。

まぁさ、飲みに行くなとは言わねぇし、
酒を止めろとも言わねぇ。
一歩ずつ更生してくんだな、中年野良猫。

だなぁ~。


私は会社に戻り、成果物の確認が出来るよう
環境の構築が終わるのをスープを啜りながら待っていた。

さぁ~て、てきと~に頑張るぞい!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み