第25話 2月10日 ペット墓地

文字数 2,882文字

「ぶわぁあああ~…、ざっびぃ~…。」

暖冬と言ってみたり、厳冬と言ってみたり、
何とも忙しい今日この頃である。

仕事も終わり、帰り道、
「明日は休みだし、一杯いっちゃうぅうううう!?」
何て言う相手も、お金も、何も無い私は、
小銭を握りしめ、78円の韓国海苔3パック入りを一つだけ購った。

「あつ君、急に押しかけちゃってゴメンね!
 …こんなの、迷惑だよね?…ストーカー、みたいだよね?
 …でも、あたし、逢いたくって…」

何て言ってくれる、まるで漫画に出てくるような、
そんな三文芝居の痛々しい女性がマンションの前に居るわけでもなく、

私は寒さに身を屈め、
ただただ押し黙り、帰宅をするのであった。


ガチャッ

「ただいま~…」






ふぅ~。
さてさてさて、昨晩予告した通り、
先週土曜日の夜に何が起きたのか、
語ってゆこうではないか。

そう、始まりはいつも雨、ではなく、
後輩の連絡から始まった。

そもそも彼と飲む約束をしていた私は、
ゲームの売却金、3千8百円を手に、
居酒屋へと向かった。

そこで後輩と合流。
18時半から飲み始めたのだ。

彼には色々と婚活の話を聞かせて貰った。

出会い系サイト、と言っては良くないな。
まっちんぐあぷり?だとか何とか、
そんなインスタントでコンビニエンスなものでもない、
しっかりとした、所謂結婚相談所、
のようなそれに彼は登録しているらしい。

故に、本気で結婚を考えられるパートナーを探すため、
女性も同様に高額な会員費を支払い、登録しているというのだ。

世の中金ではないが、
やはり、それ相応の行動によって、本気度は変わってくる。
…そんなもんか。

ちなみにそのサイトに登録する自身の写真は
スマホで自撮り、何てレベルではなく、
ちゃんとしたプロのカメラマンに
スタジオで撮影して貰ったものを使用するらしく、

まあ何と言うか、力の入り方がどれ程のものなのか、
色々と疎い私でさえ察することが出来る。

パネルマ…じゃなかった、写真の加工も一切行わず、
カメラマン指示のもと、最高のプロフィール写真を
作成してもらえるというのだ。

うん、高い金払ってるんだから、それくれぇは当たり前なのかね。

前置きは長くなったが、すでに後輩は何人かの女性と
食事やデートを行っており、
何でも今回の女性は(何人目かは聞いていないのだが)
とにかく気が合ったらしく、食事をしたのも二回目だというのだ。

うんうん、よかったよかった。
根はいい奴だし、上手くいってくれれば嬉しいな。
頑張れよ!後輩!

そんな具合に色々と婚活の話を聞き、
会社の話題となり、絶賛不調中の私の相棒、
グチャグチャで統率の取れていない現チーム。
強いては保身に走ってばかりの上層部なぞなぞ。

一通り話し終えた後、
昨晩記述した後輩の熱い説教へと繋がるのであった。

そして…

「んじゃあ、今日は…ガールズバー…」
「行きません!今後とも、行きません!」
「は、はは…そうか。」
「はい。厚かましいようですが、俺はそう思います。」
「うん、うんうん、わーったよ。ありがとな。」
「…いえ、こちらこそ出過ぎたこと言ったかもしれません。
 すみませんでした。」
「まあまあ、気にすんな。けーろう。」
「はい!」

「んじゃごちそうさ~ん!まったねー!」
「ご馳走様でーす!」
「あーい!あつ君またねぇ~!」

いつものやりとりである。

私はそのまま駅へと後輩を送った。
「今日はお付き合いありがとうございました!」
「いや、俺の方こそ色々とありがとな。…うん、考えるよ。」
「はい!それでは失礼します!」
「じゃあねぇ~…」

と、ここで彼と別れた。
私の心情は先述した通りのものだ。
言葉にはし難い。

…ああ、こういう時はどうしたらいいのだろう。
…こういう気持ちは何なんだろう。
…ああ、そうだ、ガールズバーへ行こう!

うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!
てんめぇえええええええええええええええええええええ!!!!!
「京都へ行こう!」みてぇなノリで急に何言いだしやがんだ!!!!

気が付くと私の体は家へと向かっていた。
想像以上に早く着いた。
そして、

やめろ、マジでやめろ…
ペット・セ〇タリーのヴィクターの気持ちだ…
頼む、それだけはやめるんだ!

2本のゲームソフトを手に取り…

野良猫、気の毒にな…
心から同情する。
だが災いはもう十分だ。
いいか、やめるんだ!

あの子の時は短すぎた…
今度は2セット、2セットなら上手くゆく…
出勤したばかりだ、ちょっと前に!

野良猫!
やめろ!頼む!
野良猫ぉおおお!
やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

そして私はそのゲームソフト2本をツ〇ヤへ持ち込み、売却。
1万とちょい、現金を手に入れた。

「あ、もしもし?ヒゲさん、あつですぅ~。」
「ああどうも!お疲れ様です!」
「今混んでる?いけそう?」
「いやぁ~今日ガラガラ!ぜひぜひ宜しくお願いしますよ!」
「おおぉ~!マジでぇ!?行く行くー!!!」
「あ、そうそう、あつさん、今日ね、
 久しぶりにフタ子さん出勤してるんだけど、指名ですかね?」
「…えっ?…あ、ああ。うん、わかった、んじゃ指名で。」
「はぁーい!ありがとうございまぁーす!
 それではお待ちしておりまーす!」
「はいどうもぉ~。そいじゃあ後程でぇす!」

…ガチャ

色々と言いたいこと、聞きたいこと、
山ほどあるぞ。
おい、もう中年でもなんでもねぇ。
ただのクソ野良猫だこのクソ莫迦野郎!!!!!!!!!!
ほんっとお前、ほんっとお前ぇええええええええええええ!!!!

ちょいちょいちょい、まぁさぁ、過ぎたことなんだしさぁ。
ほんと誰でもいいから話聞いてもらいたい気持ちだったのよぉ~。
ほら、あたしってさ、弱いとこ、あるじゃん?

って誰のマネだよ!そもそも気持ち悪ぃよ!!!
マジでお前頭どうにかなってんじゃねぇのかぁあああああああ!!!???
もぉおおおおおおおおおおうう!!!

…まあまあ。

…まず、ペット・セ〇タリーの小ネタな、これマジ誰も解らねぇから。
そんでゲーム売っちまったな。勢いで。2本とも。
それ、全財産だぞ。
で、最後、フタ子ちゃんって誰だよおい。
お前、ガールズバーで女の子となに…

あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
大変なことになってきましたねぇ~。
いやぁ、この後どうなるのでしょうか!?

…お前、話そらしたな?


予告

恋が消え、家族が去り、
傷心の野良猫に彼女は微笑む
彼女の邪な山猫のような笑顔に溶け込む野良猫
だが、彼らには過酷な運命が仕組まれていた

次回
それでも人ですか?…いえ、野良猫です

この次も、サービスサービスぅ♪

…お前、また、アレなやつだからな、それ。
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