第3話 1月17日 貧窮

文字数 1,340文字

かかか、金がない…

「がははははは!」

笑うなタコ助!元はと言えばお前の酒癖の悪さが招いたことだろう!

はぁ…。金曜だというのに、一週間の終わりだというのに…
金もなく、特定の異性もおらず、ただ家に居る…。

莫迦やらなければ今頃は誰かと居酒屋で楽しんでいたはずなのに…。

あああああああああ!!!!!
ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!

…いや待てよ。
結句、今日誰かと飲んでまたやらかしていたんじゃねぇか?

否否否!自分を信じてやれぇ!

「がはははは!」

…やっぱ信じられねぇ。

野良猫に首輪を付けたところで野良の性根は治らず、
やはりこれらは俺の性癖として諦めるべきなのであろうか…。

知るか!そんなもん!だから何だって言うんだタコ!

俺は俺だ!それ以外の何者でもねぇ!
生きているだけで幸せだ!

もっと幸せになりてぇんだったら
相応の行動を取らなくちゃいけねぇ。

これらの喜劇は俺自身の行動が招いたことだ!
誰のせいでも何のせいでもねぇ!

言い訳はしねぇ!



…ゴメン、やっぱうそ、すげぇ言い訳させて。

俺は弱くて淋しがり屋で、そのくせ我儘で…。
酒を飲むと気持ちが楽になって現実から逃げることが出来るんだ…。

7年連れ添った子連れの女性に捨てられ…
こいつが最後だと一年岡惚れしたキャバ嬢には振られ…
次から次へと相手を変えてみてもしっくりはこず…

って女ばっかじゃねぇかクズ!
38歳にもなって何やってんだよ!

…解ってはいる。…ああ、解ってはいるのさ。

大手ゲーム会社を馘首されたことも、
キャバ嬢とは言え心底惚れた女とも上手くいかなかったことも。

未だにパニック障害を罹患し、自律神経がズタボロで不眠が続き、
安定剤と睡眠薬に頼っていることも。

拾って貰ったくせに、今の職場に遣り甲斐を見出せないことも、
そしてそれらの全てを洗い流すために酒に溺れていることも。

何もかも解っている。何もかも解ってはいるんだ。

何一つ解決出来ずに、解決しようともせずに。
ザラついた不毛なそれらを、
ズルリズルリと引きずりながら俺は生きているんだ。

イキってみても、トンガってみても、何だかんだ淋しくて、
時々思い出す幸せが尚更残酷で。
俺は弱いから、だから酒と女性に逃げてしまっているんだ。

だから何だタコ!
仕様がねぇだろうが!

…とは言え、金が無くても、酒や女性に溺れてみても、
まだ生きているからマシな方だ。

身体を壊したり、ましてや死んでしまったら元も子もない。

実際、体調不良を無視したまま、酒と煙草に溺れた後輩は、
数年前に逝ってしまった。

俺は過去形に何てなりたくない。
あいつはいい奴だった、だなんて言われたくない!

生きて生きて、足掻いて足搔いて、そして、戦って、笑いながら死ぬんだ。

よし、スッキリした!

淋しいし、悪魔の誘惑が絶えないけれど、
グッと堪えてあと一週間、何とか生き抜いてやるぜ!

どうか皆さん、どんなに残酷に打ちのめされたとしても
俺のように自棄を起こさないで下さい。

ただただ、虚しさしかそこには残りません。

どうか皆さん、明るく、楽しく、生きていきましょう!
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