第27話 2月11日 独歩

文字数 2,394文字

昼過ぎ。

「あ、お茶もうねぇや…。
 冷蔵庫には…油揚げしかねぇじゃねぇか!」

欲にまみれ、散財の限りを尽くした私は、…非常に貧窮している。
自業自得と言えばそれまでなのだが、後悔などはない!
そう、生きている!それだけで十分ではないか!

…ごめん、ウソ、辛い…。

まあ、クヨクヨしてても始まらねぇし、
百均ロー〇ンでも行くかな!!!

天気もいいので散歩がてら、私は買い出しへと行く。
(散歩って…お前ほんと野良猫かよ…)


「るんるん♪誰か餌くれねぇかな♪」

くれるか!
余っててもお前ぇみてぇな中年野良猫には誰もやらねぇ!

まあまあ、そうしどいこと言うなよ…。

「しっかし、天気いいし、人多いなぁ。
 まあ、祝日だものな。」

先述した通り、住んでいる街はそれなり、
というか大分活気のある街なので、
周りを見渡せば家族、子連れ、カップル、老夫婦、カップル、学生、カ…

あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

気が狂うわ!!!!

私は日陰者のような気持ちでもって、大通りを外れ、
それこそ野良猫のように人通りの少ない裏路地を通って目的地へと向かった。

…だってぇ、独りで淋しいやん?
…家族とかカップル観ると、淋しさ増すやん!?

コソコソとしばらく歩き、間もなく目的地へ到着。

「お!!!!もやし、29円が20円引きぃ!?
 やっべ!すんげーラッキーじゃん!!!
 しかも4つもある!!!!」

それを幸か不幸かと感じるのは自分自身であって、
例え些細なことにでもそう感じられるということは、
一種の才能なのではないか、
そう誰かに言われたことを思い出した。

「…と、あとはお茶だな。よしよしよし、玉子も買っておこう。」

もやし4つと8個入り玉子1パック、2Lの緑茶一本、
これだけ買っても300円いかない!
しかも〇払いだから実質0円!!!!
※来月電話代と共に請求されます

「いやぁ~、良い買い物したなぁ。」

冷蔵庫に目立ってあったものは確かに油揚げだけだったが、
ニンニクやら各種調味料はストックしてある。

ニンニクに玉子ともやし、それで味付けは中華ダシの素、
これで十分だぜ!

「さて、晩飯はおうけい。
 肴には、…韓国海苔が残っていたし、大丈夫だな。」

余計な買い物はせず、結句散歩もせずに帰路へと就く、
そんな中年野良猫38歳。
哀愁漂う中年野良猫38歳。
誰も居ない、独りぼっちの中年野良ね…

あああああああああああああああああ!!!
もういい!!!黙れ!!!

ふぅ…。

帰路、不意に遠くを見てみる。

紺碧の晴空に鎮座する太陽。
それから放たれ続けている陽光は温かいのに、
風は寒く凍てついている。

「おおお!寒いなぁ~。」
「うん、寒いねぇ。」

イチャイチャしやがって。
ちくしょう、幸せにな。離れるんじゃねぇぞ。

孤独を背負い、
トボトボと歩きながら淋しさを引きずる。
…空を見上げた。
「な、涕がこぼれちゃうからじゃないんだからねっ!」

…ははは。
まあ、いっか!

孤独でふと思い出したが、こんな話をよく聞く。

「あたし、独りが好きなんだよねぇ。」
「独りでいるの、大好き。」
「独りの時間が欲しいぜぇ~。」

上記の台詞をシャアシャアと抜かす連中にそっと言ってやりたい。

うっせぇばぁああああああああああああああああああああああああか!!!!!
…と。

こういった、いかにも自分語りの好きそうな、
そんなあたかも意識の高そうな方々は!
きっと下記のような傾向にあるはずだ。

・仕事が充実している
・職場の同僚と仲がいい
・友人知人が多い
・付き合いがいい
・パートナーがいる
・多趣味
・交友関係が広い
・家族がいる
・生活に余裕がある

…あったりめぇだろ!!!!
そりゃあキャバ嬢やホステスといった感情商売の連中もそうだが、
そんだけ人と触れ合ってりゃあ嫌でも独りになりてぇし、
そんな時間が欲しくて仕方ねぇさ!!!

俺見て見ろみろ俺ぇえええええええええええ!!!!

・仕事がつまらない
・職場の同僚に怖がられている
・友人知人がいない
・付き合いが悪い
・パートナーがいない
・無趣味
・交友関係が無い
・家族がいない
・生活に余裕がない

俺みてぇに孤独舐めまわしてからもっぺん同じこと言ってみろってんだタコ助ぇ!!!

…すみません、取り乱しました。

しかし、私の相棒はこの心情を察してくれた。

「いやぁ、確かに俺独りになりたいときあるけどさ、
 何だかんだ付き合い多いし、フットサルやってるし、
 カミさんいるしなぁ。
 あつみてぇにずっと独りだったら、そりゃあ淋しいよ。
 俺も上京したての時、独りで淋しかったもの。」

確かに、私にも家族がいたときは自分独りの時間が欲しいと、
そう感じることも少なくはなかった。

しかし、実際に本物の孤独に身を置くと、
尋常じゃないほどに淋しい!!!
いやこれマジ!!!!

…って、それ、俺自身が望んで作っちゃってる環境なんだけどねぇ。

友達つくりゃあいいじゃん、
彼女つくりゃあいいじゃん、
付き合い良くすりゃいいじゃん、
交流の幅広げればいいじゃん。

それだけなのだ。

うん、このままでいいや。
こっちのが、楽だ。

「俺が愛を信じたってさ、きっといなくなるんだろ?
 それならいらないよ。…哀しすぎるから。」

ってお前、それ、またどっかの歌詞だろ…。
すぐそうやって悪ふざけするクセなおせぇええええええええ!!!
だから誰からも本気にされねぇんだよぉおおおおおおおおおおおおおお!!!

てへっ♪

いや~~~~しかし、…空っぽだ。

午後はY〇〇T〇beで過去のラジオでも聴くかなぁ~。
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