第59話 2月27日 テスト

文字数 1,765文字

「ぶわぁ!…ざっびぃいいいい!!!」

最寄り駅へと到着した私を
凍てつく風が出迎えてくれた。

いつものように酒の肴を購うために買い物はせず、
とある場所へと向かう。

そこは、ガールズ…ではなく、
先述した英会話教室だ。

面白いことに、この教室では、
授業を受けるにあたって、
自分がどれほどの能力なのか、
一度無料のテストを受けるという。

それが今日である。

あらかじめ早めに到着し、
早めにことを済ませようかと考えていたが、
…浅はかであった。

それはそうだ。
飽く迄教室。時間通りにスケジュールは組まれている。

あ~あ、とやるせない心持でもって、
ぼけぇ~っと、独り待合室で待つ。

およそ20分後、ようやく個室へと通され、
モニター越しに外国人の講師とやり取りを始めた。

ちっ、また男かよ。

…お前なに目的で行ってんだクソ莫迦中年野良猫。

15分の簡単なテスト。
主に何を喋っているのか、それに対する受け答えや、
簡易な質問といった内容だった。

一通りテストを終え、待合室に戻る。
すぐに私のテスト結果が来るはずだったのだが、
何やら手違いがあったらしく、ここでも少し待たされる。

ふぅ~。早くけぇーって酒飲みてぇ…。

そして結果が出た。

聞いて驚け!!!
結果、私の能力は、


…下から3番目である。

いよぉっしゃぁあああああああああああああ!!!!

…えっ?お前、全然ダメじゃん。

うんうん、いいのだ。
変に忖度され、過大評価されても困るし、
私は基礎の基礎から学び直したかったのだ。

次の日曜、3月1日に本手続きをしに教室へと再訪し、
来週の水曜日から授業を受けることにした。

この歳以前、私の業務はゲーム制作のディレクションであり、
素行や態度の悪さで注意されることは多々あるが、

…おいおい、38歳、そもそもそれもダメだからなぁあああああああ!!!

…うっせぇなぁ~。
えーっと、そう、そういった人間性の否定はされるものの、
業務の内容であったり、制作物の注意といったことは
ほぼされないし、逆にするのが仕事でもある。

故に、今の自分にとって、誰かに自身の能力、技能を採点され、
またそれが余り芳しくない内容だという事実は、
実に面白いのだ。

帰路、高まる胸でガールズバー…には寄らず、寄ろうとも思わず、
酒の肴を購いに、嫌々コンビニへと立ち寄る。

余り好まぬ理由として、栄養面は置いておいたとしても、
何より割高なのだ。
性根が吝嗇でもって、そういった少しでも安く購うといった性癖、
というよりも染みついた本能が拒むのだ。
しかしそこは背に腹がなんとやら。
とりあえずチーカマ4本入り一つと、あたりめを一袋購う。

あれ?二つで2百円ちょっとかぁ。まあいい。
しかし、韓国海苔はオアズケかぁ~。

ボソボソと呟きながら帰宅した。

そして今。

ふと気づいたことがある。
強がりではなく、本当に、そこらへんに、
楽しみなど転がっているのだと。

それを私は今まで自分自身で拒んでいただけなのだと。

どうも物創りという職業は何かに憑かれる節があり、
それが何なのかは解らない。

とにかく今は、酒は飲むにしろ、女性とみだりに遊ぶことよりも
一つ、楽しみを見つけた気がする。

それをどう見るか、どう見えるか、
そもそも見ようとするか否か、
そういったことは、結句、自身が決めることなのだ。

よし、この調子で、中年野良猫の懺悔録から、
サクセスストーリーに改編だぜぇえええええええええええええええええええ!!!

よぉよぉよぉ、おい、俺。
クソ莫迦中年野良猫。

なんだよ気持ちよく〆たのによぉ~。

うん、今日はいい。
シラフでその行動、良い、ってか、まず、
当たり前なぁあああああああああああああああああああ!!!!
そして問題は明日の飲み会だからなぁああああああああああああああ!!!
言うは易しぃいいいいいいいいいい!!!!

あいあい、まあ見ていてくれ!!!
この俺の、さくせ…

どうせ、やっちまった~って土曜日の朝に嘆くのがオチだからな!!!

…ふぅ~。
さくせすすとーりぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!

カタコトじゃねぇか!!!
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