第84話 不死者の王として
文字数 1,640文字
「クアトロー」
上空から聞き覚えがある天真爛漫な声が聞こえてきた。
「へ?」
クアトロが慌てて仰ぎ見ると、スタシアナが漆黒の翼を広げて上空から自分に向けて急降下してくる。その背後にはエリンもいた。
「え?」
隣のマルネロもそれ以上の言葉が出てこないようだった。
スタシアナは急降下すると、そのままクアトロの首に自分の両手を回してぶら下がる。
「ス、スタシアナ、何で……?」
満面の笑みを浮かべているスタシアナにクアトロは辛うじてそれだけを言った。
「えへっ。ぼくもエリンも、こぴーで復活なんですよー。ほら、見て下さい。ぼく、翼の色も染め直したんですよー。前よりももっと綺麗な黒なんですよー」
「へ? こぴー?」
「そうなんですよー」
スタシアナは嬉しそうに頷いている。
「天使は個体のこぴーという手段で永遠に近い時間を生きてますからね。そうでなければ、人と同じ形態の生物が数百年も生きるなんておかしな話じゃないですか。それこそ不死者じゃあるまいし」
トルネオがもっともらしい口調でそんなことを言っている。
……駄目だ。トルネオの言ってることがまるで分からない。
クアトロは説明を求めてマルネロに視線を向けた。しかし、マルネロも死んだと思っていたスタシアナやエリンが、急に何事もなかったかのように現れたので呆けたような顔をしているだけだった。トルネオが言っていることを理解しているようには思えなかった。
「まあ、クアトロ様とマルネロさんには少しだけ難しかったですかね」
……あ、今、おっさん骸骨が馬鹿にした。
トルネオの言っていることは何だかよく分からなかったが、自分が馬鹿にされたことはよく分かるクアトロだった。クアトロが長剣を握っていた手に力を込めると、それに気がついたトルネオが慌てて口を開いた。
「い、嫌ですよ、クアトロ様。ちょっとした冗談じゃないですか。それよりもこぴーを行ったのは、このわたしですからね。完璧ですよ。完璧! 記憶も含めて外見的にも内部的にも劣化なんて少しもありませんからね」
トルネオが早口で捲し立てる。このわたしとは、どのわたしなのだとクアトロは思う。
「そうなんですよー。クアトロにぱんつを見られたことも覚えているんですよー」
「そうでしてよ。私もクアトロにぱんつを覗かれたことを覚えていてよ」
スタシアナに続けてエリンもそんなことを言い出した。
……いや、衛兵さんに怒られそうなそんなことは、劣化とやらで忘れてもらってよかったんだが。それに、エリン、皆が誤解する。あれは覗いたんじゃないぞ。見えたんだ……。
クアトロは心の中でそう呟く。
「まあ、今はクアトロ様がもの凄い変態大魔王という話は置いといてですね……」
「トルネオ、本当に斬るぞ……」
「へ? あは、あはは……」
トルネオは笑って誤魔化すと次いで真面目な口調で話を始める。
「クアトロ様、エネギオスさんたちを呼んで頂きましょうか。そろそろ、この一連の話に決着をつけてもよい頃合いかと。何せこの神殿の地下には自称、神がおりますからね。」
「え? トルネオがなんでそんなことを知ってるわけ?」
マルネロが不思議そうな顔でもっともな疑問を口にした。今の言葉は、この一連の出来事に関してある程度のことをトルネオが知っているような口ぶりだった。
……理由は分からないが、面白おっさん骸骨のくせに生意気だぞとクアトロは思う。
「まあ、わたしは不死者の王ですからね。大概のことは知っていますよ」
マルネロの問いかけに対して答えになっていないことを言いながら、トルネオが偉そうに胸を張ってみせた。そして、更に言葉を続ける。
「それよりも今回の一件、わたしはかなり気に入らないですね。自称、神とやらには不死者の王として何か言わないと気が済みません」
何でトルネオがここまで偉そうなのか分からないし、何故ここで不死者の王が出てくるのかも今ひとつ分からないクアトロだった。だが、クアトロはそんなトルネオの言葉に押されるように黙って頷いたのだった。
上空から聞き覚えがある天真爛漫な声が聞こえてきた。
「へ?」
クアトロが慌てて仰ぎ見ると、スタシアナが漆黒の翼を広げて上空から自分に向けて急降下してくる。その背後にはエリンもいた。
「え?」
隣のマルネロもそれ以上の言葉が出てこないようだった。
スタシアナは急降下すると、そのままクアトロの首に自分の両手を回してぶら下がる。
「ス、スタシアナ、何で……?」
満面の笑みを浮かべているスタシアナにクアトロは辛うじてそれだけを言った。
「えへっ。ぼくもエリンも、こぴーで復活なんですよー。ほら、見て下さい。ぼく、翼の色も染め直したんですよー。前よりももっと綺麗な黒なんですよー」
「へ? こぴー?」
「そうなんですよー」
スタシアナは嬉しそうに頷いている。
「天使は個体のこぴーという手段で永遠に近い時間を生きてますからね。そうでなければ、人と同じ形態の生物が数百年も生きるなんておかしな話じゃないですか。それこそ不死者じゃあるまいし」
トルネオがもっともらしい口調でそんなことを言っている。
……駄目だ。トルネオの言ってることがまるで分からない。
クアトロは説明を求めてマルネロに視線を向けた。しかし、マルネロも死んだと思っていたスタシアナやエリンが、急に何事もなかったかのように現れたので呆けたような顔をしているだけだった。トルネオが言っていることを理解しているようには思えなかった。
「まあ、クアトロ様とマルネロさんには少しだけ難しかったですかね」
……あ、今、おっさん骸骨が馬鹿にした。
トルネオの言っていることは何だかよく分からなかったが、自分が馬鹿にされたことはよく分かるクアトロだった。クアトロが長剣を握っていた手に力を込めると、それに気がついたトルネオが慌てて口を開いた。
「い、嫌ですよ、クアトロ様。ちょっとした冗談じゃないですか。それよりもこぴーを行ったのは、このわたしですからね。完璧ですよ。完璧! 記憶も含めて外見的にも内部的にも劣化なんて少しもありませんからね」
トルネオが早口で捲し立てる。このわたしとは、どのわたしなのだとクアトロは思う。
「そうなんですよー。クアトロにぱんつを見られたことも覚えているんですよー」
「そうでしてよ。私もクアトロにぱんつを覗かれたことを覚えていてよ」
スタシアナに続けてエリンもそんなことを言い出した。
……いや、衛兵さんに怒られそうなそんなことは、劣化とやらで忘れてもらってよかったんだが。それに、エリン、皆が誤解する。あれは覗いたんじゃないぞ。見えたんだ……。
クアトロは心の中でそう呟く。
「まあ、今はクアトロ様がもの凄い変態大魔王という話は置いといてですね……」
「トルネオ、本当に斬るぞ……」
「へ? あは、あはは……」
トルネオは笑って誤魔化すと次いで真面目な口調で話を始める。
「クアトロ様、エネギオスさんたちを呼んで頂きましょうか。そろそろ、この一連の話に決着をつけてもよい頃合いかと。何せこの神殿の地下には自称、神がおりますからね。」
「え? トルネオがなんでそんなことを知ってるわけ?」
マルネロが不思議そうな顔でもっともな疑問を口にした。今の言葉は、この一連の出来事に関してある程度のことをトルネオが知っているような口ぶりだった。
……理由は分からないが、面白おっさん骸骨のくせに生意気だぞとクアトロは思う。
「まあ、わたしは不死者の王ですからね。大概のことは知っていますよ」
マルネロの問いかけに対して答えになっていないことを言いながら、トルネオが偉そうに胸を張ってみせた。そして、更に言葉を続ける。
「それよりも今回の一件、わたしはかなり気に入らないですね。自称、神とやらには不死者の王として何か言わないと気が済みません」
何でトルネオがここまで偉そうなのか分からないし、何故ここで不死者の王が出てくるのかも今ひとつ分からないクアトロだった。だが、クアトロはそんなトルネオの言葉に押されるように黙って頷いたのだった。