第81話 咆哮
文字数 1,550文字
「マルネロ、エネギオス、二人をアストリアたちのところへ。このまま寝かしておいては可哀想だ」
「う、うん……」
マルネロは頷く。そして、まともには直視できないような状態のスタシアナとエリンをマルネロがその胸にそっと抱きよせた。その姿を見てクアトロの中で更なる怒りが膨れ上がっていく。
「クアトロ、無茶はするなよ。ヴァンエディオ、すぐに戻る。頼むぞ」
エネギオスの言葉にヴァンエディオが無言で頷いた。
「根絶やし? 魔族風情が我ら天使を相手にして大口を叩くな。摂理を変えることは許しません。我が名はミネル。偉大なる神の代行者です!」
ミネルの言葉と共にクアトロとヴァンエディオを目掛けて上空から天使の大群が一斉に降下してくる。
空を埋めつくすかのごとく滑空してくる天使たちを迎撃しようと、ヴァンエディオが灰色の球体を無数に出現させる。
だが、その灰色の球体を掻い潜った数体の天使たちがクアトロとヴァンエディオに向かってくる。
「神炎!」
クアトロは球体を掻い潜ってきた数名の天使を炎で包みながら、尚も肉薄してくる二人の天使を長剣で瞬時に斬り伏せた。
たった二人とはいえ魔族相手に接近戦では分が悪いと判断したのか、天使たちがクアトロたちと距離を取り始めた。遠方からの魔法でことを決しようと判断したようだった。
「天使も存外に腰抜けだな。言っただろう? お前らはここで根絶やしだと!」
クアトロはそう言って長剣を鞘に収めると、広げた両手を空中にとどまっている天使たちに突き出した。
天使たちはクアトロの言葉などは意に介さず、宙に止まったままで魔法を発動させようとしている。
「貴様らは地上でも天上でもない虚無に飲み込まれろ。螺旋穿孔!」
クアトロの言葉が終わると、上空にいる天使たちの更なる上空に黒い雲状の巨大な渦が出現した。その出現した渦へ瞬く間に数百の天使たちが叫び声、悲鳴と共に飲み込まれていく。
大半の天使たちはその巨大な渦に飲み込まれたかもしれない。だが、巨大な渦から逃れることができた天使は、まだ軽く数えても百や二百はいるようだった。
クアトロは上空にいる天使たちを睨みつけながら片膝をついた。急激に大きな魔力を消費したため、体への負担が著しい。
「クアトロ様!」
ヴァンエディオが灰色の球体を射出しながら、珍しく鋭い口調で叫んだ。荒い息を吐くクアトロを心配してのことだろう。
「大丈夫だ。少しだけ休めば何とかなる」
「休んでいられる時間を作れるか……ですね」
「牽制できるか?」
「……無理ですね。天使の数が多すぎますので」
こともなげにヴァンエディオが言う。
だが、もう少し持ち堪えられれば、エネギオスやマルネロが戻ってくるはずだった。そうなれば活路も見出せるだろう。
クアトロは再度、上空の天使たちを睨みつけた。天使たちはヴァンエディオから打ち出される灰色の球体を避けながら、クアトロとヴァンエディオに魔法を一斉に射出しようとしていた。
流石に不味いなとクアトロは思う。
ならば、どうするか?
残る全ての魔力でもう一度、特大魔法を発動させるか。それともこの天使たちの指揮者らしき薄い茶色の頭をしたあの天使を狙うか。
「クアトロ様!」
クアトロが次の一手を決めかねていると、ヴァンエディオが再び警告めいた調子でクアトロの名を呼んだ。
気がつくとクアトロたちの眼前に広がる大地の上にいくつもの揺らぎが起っていた。
空間転移。それもかなりの数だった。揺らぎがおさまればそこから魔人たちが姿を見せることは間違いなかった。
次から次へと……だな。
クアトロが心の中で呟いた。
その時だった。上空で大気を切り裂き、聞いた者の魂が消し飛ぶかのような咆哮が上がった。それと同時に巨大な黒い影が天使たちの遥か上から滑り降りてくる。
「う、うん……」
マルネロは頷く。そして、まともには直視できないような状態のスタシアナとエリンをマルネロがその胸にそっと抱きよせた。その姿を見てクアトロの中で更なる怒りが膨れ上がっていく。
「クアトロ、無茶はするなよ。ヴァンエディオ、すぐに戻る。頼むぞ」
エネギオスの言葉にヴァンエディオが無言で頷いた。
「根絶やし? 魔族風情が我ら天使を相手にして大口を叩くな。摂理を変えることは許しません。我が名はミネル。偉大なる神の代行者です!」
ミネルの言葉と共にクアトロとヴァンエディオを目掛けて上空から天使の大群が一斉に降下してくる。
空を埋めつくすかのごとく滑空してくる天使たちを迎撃しようと、ヴァンエディオが灰色の球体を無数に出現させる。
だが、その灰色の球体を掻い潜った数体の天使たちがクアトロとヴァンエディオに向かってくる。
「神炎!」
クアトロは球体を掻い潜ってきた数名の天使を炎で包みながら、尚も肉薄してくる二人の天使を長剣で瞬時に斬り伏せた。
たった二人とはいえ魔族相手に接近戦では分が悪いと判断したのか、天使たちがクアトロたちと距離を取り始めた。遠方からの魔法でことを決しようと判断したようだった。
「天使も存外に腰抜けだな。言っただろう? お前らはここで根絶やしだと!」
クアトロはそう言って長剣を鞘に収めると、広げた両手を空中にとどまっている天使たちに突き出した。
天使たちはクアトロの言葉などは意に介さず、宙に止まったままで魔法を発動させようとしている。
「貴様らは地上でも天上でもない虚無に飲み込まれろ。螺旋穿孔!」
クアトロの言葉が終わると、上空にいる天使たちの更なる上空に黒い雲状の巨大な渦が出現した。その出現した渦へ瞬く間に数百の天使たちが叫び声、悲鳴と共に飲み込まれていく。
大半の天使たちはその巨大な渦に飲み込まれたかもしれない。だが、巨大な渦から逃れることができた天使は、まだ軽く数えても百や二百はいるようだった。
クアトロは上空にいる天使たちを睨みつけながら片膝をついた。急激に大きな魔力を消費したため、体への負担が著しい。
「クアトロ様!」
ヴァンエディオが灰色の球体を射出しながら、珍しく鋭い口調で叫んだ。荒い息を吐くクアトロを心配してのことだろう。
「大丈夫だ。少しだけ休めば何とかなる」
「休んでいられる時間を作れるか……ですね」
「牽制できるか?」
「……無理ですね。天使の数が多すぎますので」
こともなげにヴァンエディオが言う。
だが、もう少し持ち堪えられれば、エネギオスやマルネロが戻ってくるはずだった。そうなれば活路も見出せるだろう。
クアトロは再度、上空の天使たちを睨みつけた。天使たちはヴァンエディオから打ち出される灰色の球体を避けながら、クアトロとヴァンエディオに魔法を一斉に射出しようとしていた。
流石に不味いなとクアトロは思う。
ならば、どうするか?
残る全ての魔力でもう一度、特大魔法を発動させるか。それともこの天使たちの指揮者らしき薄い茶色の頭をしたあの天使を狙うか。
「クアトロ様!」
クアトロが次の一手を決めかねていると、ヴァンエディオが再び警告めいた調子でクアトロの名を呼んだ。
気がつくとクアトロたちの眼前に広がる大地の上にいくつもの揺らぎが起っていた。
空間転移。それもかなりの数だった。揺らぎがおさまればそこから魔人たちが姿を見せることは間違いなかった。
次から次へと……だな。
クアトロが心の中で呟いた。
その時だった。上空で大気を切り裂き、聞いた者の魂が消し飛ぶかのような咆哮が上がった。それと同時に巨大な黒い影が天使たちの遥か上から滑り降りてくる。