第67話 俺がぶっ壊してやる
文字数 2,196文字
クアトロとアストリア、そしてダースの三人は古代種のドラゴン、スモールゴブリンたちとともにパラン神殿まで落ち延びていた。
パラン神殿。かつてアストリアが魔人の王、ナサニエルに捕らえられていた神殿である。
程なくしてそこへワイバーンに乗ったエネギオス、マルネロ、そしてヴァンエディオがそれぞれスモールゴブリンに連れられて合流してきた。
「この飛竜もろりろり姫が寄越したのか?」
「いえ、これはおそらく、こちらのドラゴンさんが……」
アストリアの言葉が分かっているのか、古代種のドラゴンが誇らしげに鼻息を吐き出した。
その鼻息だけでスモールゴブリンたちは、たたらを踏んでいる。
「なるほどな。お前の子分ってことか」
エネギオスの言葉に頷くように、再び古代種のドラゴンは鼻息を吐き出している。
「エネギオスさん、その怪我は……?」
アストリアはそう言ってエネギオスの所へ駆け寄ると、即座に治癒魔法を施し始めた。
「大丈夫よ、アストリア。転んだだけみたいだから」
マルネロが全くもって心配ないといった顔で、そんなアストリアに声をかけた。
「転ぶか、馬鹿!」
大人しくアストリアの治療を受けながら、エネギオスはマルネロに反論する。
アストリアに治療を受けるエネギオス。筋肉ごりらの分際で生意気だと思ったが、アストリアに怒られそうなのでクアトロはそれを口にするのを思いとどまった。
「クアトロ様、ご無事で」
そんなクアトロにヴァンエディオが近寄ってきた。
「他の将兵は無事に逃げ出せたのか?」
「全てとは言いませんが、大半は無事に逃げ出せたはずです。天使や魔人もやはり深追いはしなかったようですので」
「やはり狙いはアストリアのみということか……」
クアトロの言葉にヴァンエディオは頷く。
「でも、今ひとつ分からないわよね。アストリアが何で狙われているのか」
マルネロが、もっともな疑問を呈した。それはクアトロも同意見だった。器だ何だと言われても、クアトロ自身も今ひとつ腹落ちしないのが本当のところだった。
「マルネロさん、皆さんもですが、この世界は分からないことが多すぎると思ったことはありませんか?」
「どういう意味だ?」
クアトロが言葉を返した。
「例えば天使……そういえば、スタシアナさんやエリンさんの姿が見えないですね」
ヴァンエディオは気がついたように言う。
「何かトルネオも連れて、天上に向かったらしいわよ」
マルネロの言葉にヴァンエディオは軽く頷いた。
「ほう……天上ですか。それは興味深いですね。それでは今、マルネロさんが言った天上とはどこにあるのでしょうか?」
「それはこことは違う世界だろ?」
クアトロはそんなの当たり前だと言わんばかりの口調で言う。
「違う世界とはどういった所なのでしょうか?」
「それは、何だ、あれだろう。なあ、マルネロ」
「へ? あたし? どういった所って言われても、違う世界は違う世界じゃないの? そうとしか聞いたことはないわよ」
「おかしいとは思いませんか。違う世界がどのような物なのかも知らないのに、私たちはそれを自然と受け入れているのですよ?」
「まあ、そう言われてみれば……な」
クアトロは今ひとつ納得できないといった感じで頷いた。
「ことは天上だけではないですね。魔人や天使にしても魔族や人族の上位眷属ということだけで、我々は何もよく知らないままでそれを受け入れているのですよ。」
んー……今ひとつヴァンエディオの言うことが分からないとクアトロは思う。
「おい、エネギオス、ヴァンエディオが何を言ってるか分かるか?」
「お、俺か? 要は何だかわからない物に俺たち魔族は囲まれているということだろう」
……何だその頭が悪そうな答えはとクアトロは思う。
「マルネロはどうだ?」
「え? 私? わ、分からないものを分からないままにしているのが分からないってことでしょう?」
……何だその分からないだらけは。分からないだらけで俺が全く分からない。
クアトロは心の中で呟きながらマルネロを呆れたような目で見る。
「そ、そういうクアトロはどうなのよ! ヴァンエディオの言ってたことが分かったの?」
マルネロが呆れたような顔をしているクアトロに反論してくる。
「……分かるはずがないだろう」
胸を張るクアトロをマルネロとエネギオスが遠い目で見る。
「おい、その目は止めろ。王を見る目じゃないぞ!」
「ま、まあクアトロさん、落ち着いて下さい」
アストリアが苦笑しながら怒るクアトロを止めに入った。
「でも、確かに私たちは全てのことを疑問も持たずに受け入れている気がします。天使、魔人、天上……もっと言えば、神や魔神の存在もそうなのでしょう」
「……駄目だ、よく分からん。ヴァンエディオ、もっと簡単に言え」
怒り始めたクアトロにヴァンエディオは苦笑しながら口を開いた。
「この世の理。我々の周りにあるその全てが不確かな物ばかりなのに、我々は疑問も持たずに受け入れ過ぎだということです。そもそもの発端であった邪神の復活話も然りですね。この辺りにアストリア様の真実が関わってくるのではないかと私は思っています」
「何? アストリアが関わっているのか? アストリア、安心しろ。そんなもんは俺がぶっ壊してやる!」
意気込んでそう宣言するクアトロだった。
「……いや、そういうことじゃねえと思うぞ」
エネギオスが呆れた様子でクアトロに言うのだった。
パラン神殿。かつてアストリアが魔人の王、ナサニエルに捕らえられていた神殿である。
程なくしてそこへワイバーンに乗ったエネギオス、マルネロ、そしてヴァンエディオがそれぞれスモールゴブリンに連れられて合流してきた。
「この飛竜もろりろり姫が寄越したのか?」
「いえ、これはおそらく、こちらのドラゴンさんが……」
アストリアの言葉が分かっているのか、古代種のドラゴンが誇らしげに鼻息を吐き出した。
その鼻息だけでスモールゴブリンたちは、たたらを踏んでいる。
「なるほどな。お前の子分ってことか」
エネギオスの言葉に頷くように、再び古代種のドラゴンは鼻息を吐き出している。
「エネギオスさん、その怪我は……?」
アストリアはそう言ってエネギオスの所へ駆け寄ると、即座に治癒魔法を施し始めた。
「大丈夫よ、アストリア。転んだだけみたいだから」
マルネロが全くもって心配ないといった顔で、そんなアストリアに声をかけた。
「転ぶか、馬鹿!」
大人しくアストリアの治療を受けながら、エネギオスはマルネロに反論する。
アストリアに治療を受けるエネギオス。筋肉ごりらの分際で生意気だと思ったが、アストリアに怒られそうなのでクアトロはそれを口にするのを思いとどまった。
「クアトロ様、ご無事で」
そんなクアトロにヴァンエディオが近寄ってきた。
「他の将兵は無事に逃げ出せたのか?」
「全てとは言いませんが、大半は無事に逃げ出せたはずです。天使や魔人もやはり深追いはしなかったようですので」
「やはり狙いはアストリアのみということか……」
クアトロの言葉にヴァンエディオは頷く。
「でも、今ひとつ分からないわよね。アストリアが何で狙われているのか」
マルネロが、もっともな疑問を呈した。それはクアトロも同意見だった。器だ何だと言われても、クアトロ自身も今ひとつ腹落ちしないのが本当のところだった。
「マルネロさん、皆さんもですが、この世界は分からないことが多すぎると思ったことはありませんか?」
「どういう意味だ?」
クアトロが言葉を返した。
「例えば天使……そういえば、スタシアナさんやエリンさんの姿が見えないですね」
ヴァンエディオは気がついたように言う。
「何かトルネオも連れて、天上に向かったらしいわよ」
マルネロの言葉にヴァンエディオは軽く頷いた。
「ほう……天上ですか。それは興味深いですね。それでは今、マルネロさんが言った天上とはどこにあるのでしょうか?」
「それはこことは違う世界だろ?」
クアトロはそんなの当たり前だと言わんばかりの口調で言う。
「違う世界とはどういった所なのでしょうか?」
「それは、何だ、あれだろう。なあ、マルネロ」
「へ? あたし? どういった所って言われても、違う世界は違う世界じゃないの? そうとしか聞いたことはないわよ」
「おかしいとは思いませんか。違う世界がどのような物なのかも知らないのに、私たちはそれを自然と受け入れているのですよ?」
「まあ、そう言われてみれば……な」
クアトロは今ひとつ納得できないといった感じで頷いた。
「ことは天上だけではないですね。魔人や天使にしても魔族や人族の上位眷属ということだけで、我々は何もよく知らないままでそれを受け入れているのですよ。」
んー……今ひとつヴァンエディオの言うことが分からないとクアトロは思う。
「おい、エネギオス、ヴァンエディオが何を言ってるか分かるか?」
「お、俺か? 要は何だかわからない物に俺たち魔族は囲まれているということだろう」
……何だその頭が悪そうな答えはとクアトロは思う。
「マルネロはどうだ?」
「え? 私? わ、分からないものを分からないままにしているのが分からないってことでしょう?」
……何だその分からないだらけは。分からないだらけで俺が全く分からない。
クアトロは心の中で呟きながらマルネロを呆れたような目で見る。
「そ、そういうクアトロはどうなのよ! ヴァンエディオの言ってたことが分かったの?」
マルネロが呆れたような顔をしているクアトロに反論してくる。
「……分かるはずがないだろう」
胸を張るクアトロをマルネロとエネギオスが遠い目で見る。
「おい、その目は止めろ。王を見る目じゃないぞ!」
「ま、まあクアトロさん、落ち着いて下さい」
アストリアが苦笑しながら怒るクアトロを止めに入った。
「でも、確かに私たちは全てのことを疑問も持たずに受け入れている気がします。天使、魔人、天上……もっと言えば、神や魔神の存在もそうなのでしょう」
「……駄目だ、よく分からん。ヴァンエディオ、もっと簡単に言え」
怒り始めたクアトロにヴァンエディオは苦笑しながら口を開いた。
「この世の理。我々の周りにあるその全てが不確かな物ばかりなのに、我々は疑問も持たずに受け入れ過ぎだということです。そもそもの発端であった邪神の復活話も然りですね。この辺りにアストリア様の真実が関わってくるのではないかと私は思っています」
「何? アストリアが関わっているのか? アストリア、安心しろ。そんなもんは俺がぶっ壊してやる!」
意気込んでそう宣言するクアトロだった。
「……いや、そういうことじゃねえと思うぞ」
エネギオスが呆れた様子でクアトロに言うのだった。