38 ハッピーエンドとバッドエンド
文字数 2,613文字
アリスとソフィアは、手を離さずに竜巻の風が送り届けるままに吹き飛ばされた。
そして、ほんの数秒意識が飛んだ後、背中から軽く叩きつけられる衝撃で我に返った。
お菓子のお城から2kmほどは飛ばされたように、目をゆっくり開いたアリスには見えた。
アリスは、真横に叩きつけられたソフィアの体を軽く揺すった。
バトルでかなりの体力を使っていたソフィアは、お菓子のお城にいる時からボロボロで、すぐに目を覚ましてはくれない。
それでも、アリスはソフィアの呼吸をかすかに感じ、それを信じて、何度か体を左右に揺らしたのだった。
そして、1分が経った。
アリスは、ソフィアから目を反らして、遠くに行ってしまったお菓子のお城をじっと見つめた。
アリスもモンキも去ったお菓子のお城からは竜巻が消え、ラフレシアたちの行方すら伺うことができなかった。
ソフィアはゆっくりと起き上がり、お菓子のお城に目を移しながら、そっと言った。
そんな簡単な話じゃない。
パティスリーも、ラフレシアも、それにボスモンキーも……、生き物として大事なものを失っているように、私には見えた。
それって、一言じゃ言い表せないような気がするけど……、例えば他人を信じるとか、他人を思いやるとか……。そんなのが、あのお城から何一つなくなっているような気がする。
そう言って、アリスはもう一度お菓子のお城をじっと眺めた。
少なくとも、ラフレシアとボスモンキーが戦っているような様子は見えなかった。
ラフレシアが、ボスモンキーの楽しみを取るというしぐさは、アリスの目には見えなかった。
これからどうする?
1.アリスもお菓子のお城に入れたんだから終わりにする
2.お菓子のお城がピンチだからもう一度城に戻る
3.実はお菓子のお城からお菓子をくすねていた
4.最初からリセットして新しい冒険の書を作る
アリスは、この張り詰めた会話の中で、少しだけ笑ってみせた。
アリスが笑うと、ソフィアも自然と口元が緩んでいった。
ソフィアがそう言うと、アリスはやや目線を下に向けた。
理想と現実は、アリスの中でも揺れ動いていた。
そして、そっと口を開いた。
そう言って、アリスは首を横に振った。
アリスの銃すら軽くかわしてしまう剣士サルのボスモンキーに、この冒険を動かしているどの生命もあっさりと敗れてしまったことを、アリスは真っ先に思いついた。
ボスモンキーを倒すのは、不可能ではないが難しい。
そのことはソフィアもまた感じていたのだった。
その時、ソフィアの口がかすかに動いた。
アリスは、やや低い声でソフィアにそう返した。
その時、遠くで小走りに駆けていくモンキの姿が、アリスの目に飛び込んだ。
アリスの声に気付いたのか、モンキが突然立ち止まり、アリスたちに体を向けた。
モンキとアリスが同時に、お互いのいるほうに走り出す。