32 びっくりモンキ
文字数 2,514文字
アリスは、軽く笑いながらモンキに返した。
だが、その中を流れる風は、再び容赦なくアリスに襲い掛かる。
お菓子のお城から完全に出禁宣言を食らったアリスは、それでも「楽しいこと」が嫌いなラフレシアたちに寄り添うように、そう提案した。
すると、デビルラフレシアの鉄兜がうなずき、アリスにその葉を伸ばしていった。
アリスが、ようやく次の目的地を告げられ喜んだその時だった。
風の様子を見に、城の外に一歩足を踏み出したモンキが、アリスを手招いた。
アリスはモンキに近づくにつれ、モンキの表情が青ざめていることに気が付いた。
何が起きたのか分からないまま、アリスはモンキの前までやってきた。
モンキに促されるように、アリスは次の声を待った。
すると、パティスリーにしてはものすごく低い声が、アリスの耳に響いた。
サルを……、殺したいよ……。
サルを……!
アリスは、その言葉がかすかに聞こえた瞬間、パティスリーの声に鋭く返事をした。
だが、パティスリーの声は、まるで呪いにでも取りつかれたように止まらなかった。
お姉ちゃんには関係ないこと……。
サルが、全て悪かったんだ……。
サルを殺したい……。
そう言うの?お姉ちゃんもサルも。
じゃあ、さっきお菓子のお城に大量のサルが押しかけてきて、お菓子を奪ったのは、誰が指示したの?
きっとラフレシアじゃないの?
というか、ラフレシアにいるサルが指示したんでしょ。
パティスリーの声は、完全に怒っているようだった。
アリスは体を前に傾け、懸命に叫ぼうとした。
その気持ちは分かるさ。
でも、オイラもアリスも、もうお菓子のお城からの信用はなくなってるんだよ。
倒してきたらお菓子のお城に入れてあげるって言われたのに、お菓子のお城に入るのにそっちのほうが早いからラフレシアについてるような、人間とサルだろ?
このままだと、お菓子のお城からモンキだけが狙われることになる。
これまでのように出禁で済まされる話ではなくなってしまった。
そこまでアリスが気付いたとき、パティスリーが小さな声でこう言った。
じゃあ、さっきお菓子のお城を襲ったサルたちを捕まえてきたら、許してあげるよ。
お菓子のお城でお菓子作りをしてもいいかも知れない。
でも、ラフレシアの力を使って捕まえてきたりしたら、ここにいるお姉ちゃんを沼に沈めるからね。
分かった?
アリスは、空返事をするしかなかった。
どうすることもできなかった。
そこに、モンキが頭を抱えながらアリスのもとに近づいてきた。
モンキが首を横に振りながら言うのを、アリスは横目でしか見なかった。
立ったまましばらく考えた後、アリスは手を叩いてモンキに告げた。
そこまで言うと、モンキは自らデビルラフレシアのもとに行き、お菓子のお城を襲った人食いサルの行方を追うように頼んだ。
お菓子を奪うという目的を知った瞬間、その鉄兜は縦に振られた。
そして、アリスとモンキに葉が伸びていき、竜巻に乗って再び空に舞い上がった。