12 お菓子は食い荒らされた
文字数 2,542文字
アリスが、モンキと一緒にお花のお城に向かう中、一足先に堀の前から飛ばされたソフィア。
背中から叩きつけられたような感じだったが、目覚めると背中に全く痛みを感じなかった。
そして、同時にその目に見慣れない生物の姿が飛び込んでくる。
ソフィアの目に飛び込んできた生物は、床で仰向けになっているほとんど無防備なソフィアに手を出す様子もない。
ただ、じっとソフィアを見つめているだけだった。
ソフィアは、パティスリーのその言葉を聞いて、即座に自分が送られた場所が本当にお菓子のお城であることを確信した。
改めてパティスリーを見ると、背丈は新生児のような50センチほど。そして、頭の上にブルーベリーとクランベリー、その下にクリームのようなものがゼリー状のものに挟まれている。
まさに、全身ケーキのようなものだ。
それゆえ、手も足も生えていない。
パティスリーは、飛び跳ねながら動いているのだった。
今もこうして、仰向けになっているソフィアの横で、ピョ~ンピョ~ンと跳ねながらソフィアの顔を伺っているのだった。
そう。
お花のお城にいる悪い集団のことなんだ。
ラフレシアって、もともと嫌な花とかそういうイメージがあったけど、やっていることはまさにその通り。
お姉ちゃん、ちょっと立ち上がってこの城の中を見てほしいんだ。
パティスリーのその声に誘われるように、ソフィアは起き上がり、首を左右に動かした。
お菓子のお城の妖精が言う通り、壁はところどころ剥がされており、あちこちに飾られた装飾も、その大半が上の部分から切り取られている様子だ。
詳しく調べようと、ソフィアは高く伸びる柱の前に立った。
その後ろからパティスリーが付いてくる。
ソフィアが柱を触ると、ふわふわとした触り心地をその手に感じた。
真っ白な柱は、食べなくてもマシュマロのように見えた。
だが、その柱もソフィアの顔のあたりから上はところどころ食べられ、下のほうで厚さ10センチほどはあった柱も、場所によっては2センチくらいの幅しか残っていないところもあった。
ソフィアは、そう言いながらも、お菓子のお城の中を見渡した。
幾重にも積み重なってできたクッキーの壁は、ところどころで今にも穴が開きそうになっている。
フルーツが束ねられている天井も、ところどころかじられていて、大雨が降れば天井ごと落ちてしまいそうな感じだった。
アリス、聞いてるか。
お菓子のお城からブラックリスト入りされそうになってるぞ。
ソフィアは、一人で戦うアリスを少しだけ想像して、思わず目線を下に傾けた。
これまで、ソフィアですらもアリスが一人で冒険する姿を見たことがない。
「オメガピース」の決まり上、それはあってはいけないことのはずだ。
私、アリスが一人で冒険したがってるって聞いて、友達のトライブから一緒に付いてってと頼まれたの。
そうじゃないと、アリスはたぶん生き残れないから。
決して、アリスと一緒にスイーツを食べるために出たわけじゃないの。
すると、パティスリーは残念そうに、やや体を傾ける。
心なしか、クリームの部分がソフィアには小さく見えた。