18 お菓子が城にやってくる(かも)
文字数 2,559文字
ラフレシアを倒すまで、お菓子のお城を半永久追放にされてしまったアリスとモンキは、仕方なくお花のお城に向けて歩くことにした。
そこに行けば、きっと何かがあるはず。アリスはそう信じていた。
そうですね……。
私もそれが気になっています。
お花のお城まで、目方で距離を測るに、おそらく２キロぐらいのところまで迫ってきている。
だが、最初に花のないお花畑を見つけてから、見かけるお花畑が花の食べられているものだらけだった。それも、一つ残らず。
おかしいです。
この先にあるお城が、本当にお花のお城なのか……。
モンキが、アリスの問いかけにそっぽを向いていた。
その動きが、半ば意図的にしか思えない。
お花のお城に一緒に行くのに、ここまで何度かモンキが「とぼける」シーンを目の当たりにしている。だが、その理由をモンキの口から何も伝えない。
アリスは、すぐに首を横に振って、お花のお城を見つめた。
いろいろな意味で、あの場所は不思議なのかもしれない。
ねぇ、モンキ。
竜巻に乗ってお菓子が運ばれてくることってある？
どうだろう……。
オイラは見たことないけど、さっきからお花を全部巻き上げているかもしれないから、それもありと言えばありなんだよなぁ。
お菓子のお城は、ラフレシアだってさっき言ってたと思うんです。
竜巻に乗って、お菓子を食べにくる。
でも、ソフィアさんが城の上のほうに行くまでの間に、食べたいところを全部食べてしまう。
それって、できるんですか……。
でも、ラフレシアはたぶん花ですよ。
もしお菓子が花とほぼ同じサイズだったとしても、食べるまでにかなりの時間がかかるはずです。
柱まで食べるくらいなんですから。
お菓子のお城の中を見たことのないアリスは、半ば想像を交えてそう言った。
実際には、その柱がマシュマロでできているので、ほぼ当たってはいるのだが。
たしかに……、花がお菓子を食べるにしても、その場にいたら食べられない量なのかもな。
柱が食べられたのなら、もっと時間をかけていいはずだ。
やっぱり、モンキもそう思いますよね。
ということで、仮説を立てまーす！
ピッコリーン！
仮説その１！
竜巻は、たぶんお花のお城に戻ってきます。
まぁ、そりゃそうだよな。
普通の竜巻ならほとんどありえないけど、ラフレシアを乗せているから、戻ってくるのは間違いないよな。
仮説その２！
ラフレシアと一緒にお菓子も城にやってきます。
だって、食べきれない量を竜巻に乗っている時間だけで食べられるわけないじゃないですか。
移動中は食べないと思うんです。
言われてみればそうだけど、本当に食べてるんだろうな……。
ただお菓子のお城を壊しているだけだったら、話はまた変わってくると思うんだけど。
モンキ。
壊しているだけだったとしたら、どういうことになっちゃうの？
これはオイラの仮説だから、何とも言えないよ。
竜巻で遠くに吹き飛ばされた食いかけのお菓子が、いろんなところで見つかるかもな。
じゃあ、オイラの説はないかもな。
で、アリスは他に説とかあるのか？
モンキにそう聞かれて、アリスは少し考えるしぐさを浮かべた。
そして、10秒ほどの間をおいて、にっこりと笑った。
仮説その３！
えっと……、たぶん、そのお菓子は、お菓子のお城にいっぱい眠っていると思います！
本当？
もしそうだとしても、そこはお花のお城の中でも立入禁止ゾーンにあるんじゃない？
そう。
もしアリスの仮説３が本当だとしたら、ラフレシアは地下の隠し部屋にお菓子を隠しているよ。
モンキがさらりとそう言う。
だが、その言葉が終わると同時に、アリスは首をかしげた。
……知ってる。
今までアリスには言わなかったけど、オイラその中に入ってるから。
ラフレシアなんか、その頃はいなかったさ。
まぁ、アリス。
城の前まで言ったら、オイラの口から全て話すよ。
モンキは、やや首を下に向けてアリスに返した。
その言葉が、アリスには半ば苦し紛れに聞こえたので、アリスはそれ以上突っ込まないことにした。
むしろ、アリスはモンキのことよりも、早くお菓子のお城の隠し部屋に行きたいという気持ちでいっぱいだった。仮説が合っていれば、お菓子のお城に入ることなく、お菓子をいっぱい食べられるからだ。
モンキがそう言ってくれたおかげで、なんかお花のお城に行くのが苦痛じゃなくなりました。
周りのお花畑は花を取られちゃってるけど、お花のお城にはお菓子という名の花がいっぱい落ちているかもしれませんから。
もしそうだったとしたら、そこは完全にアリスにとってゴールじゃん。
ある意味、お菓子を食べられるという目的が達成できるんだから。
ホントそうです。
でも、できればお菓子のお城でもお菓子を食べたいし、パティスリーにも会いたい。
それは言えますけど……。
たぶん、お花のお城でいっぱい食べた後に、私はこの銃でラフレシアを倒して、お菓子のお城に戻ると思います。
せっかくの楽しい冒険なんですから、それくらいしてもいいかなって。
アリスがそこまで言ったとき、アリスとモンキの目に、つたでできた門が見えた。
つたは中央でクロスしていて、よそ者を簡単には通さないようだ。
モンキ。
一緒にあの門を突破しよ！
たぶん、二人がかりで押せば、つたを破れそうだから。
アリスの横について歩いていたはずのモンキは、一歩、また一歩と後ろに下がっていく。
その表情は、これまでアリスが見たことのないほど恐怖に満ちていた。
言っただろ。
オイラは……、道案内だけだって……。
