34 行っちゃダメ
文字数 2,556文字
デビルラフレシア、お猿さんがまたお菓子のお城に戻るみたいです。
だから、先回りして、今度こそ捕まえないといけないです。
あぁ。
だが、アリス。
俺が見ている限り、明らかに竜巻を見て逃げ出したような気がするんだが、俺たちが一緒になったらまた別の方向に行くいるような気がするのだが……。
デビルラフレシアが竜巻を回し始めた瞬間、デビルラフレシアの目がやや細くなったように見えた。
そして、何かに気が付いたようにその回転を止めたのだった。
いきなり難色を示されたアリスは、少し下を向いて立ち止まってしまった。
そこに、やや遅れてやってきたモンキが、アリスに向かって腕組みをする。
アリス。
それ以前に、お菓子のお城に竜巻で行ったら、本当にオイラたちが終わっちゃうし、ソフィアも沼に沈められるんじゃなかったか。
そうですね……。
モンキにさっき言われたばかりなのに、そのことを思い出せませんでした……。
作戦撤回ですね。
でも、どうやって竜巻じゃない方法でお猿さんたちを追いかけるんですか?
それは……。
いかんせん、オイラと同じ種族だからなぁ……。
早くしないと、とてもまずいことになります。
竜巻で先回りしてもお菓子のお城は許してくれないし、お猿さんたちにもう一度お菓子のお城を襲われても、お菓子のお城は許してくれない……。
それでも、何かしないといけないです。
もう、お菓子のお城のことはやめようぜ。
パティスリーから見たら板挟みじゃん……。オイラとアリスは。
それよりも、ボスモンキーを捕まえる方法を時間かけて考えた方がいいって。
諦めちゃダメですよ、モンキ。
必ず、いい方法はあるはずです。
アリスは、トライブが言いそうなセリフを咄嗟に頭に思い浮かべて、すぐにその口に伝えた。
言い終えたアリスは、思わず口を塞いで、首を左右に振った。
すると、デビルラフレシアが少し頭を傾けながら、やや低い声で言った。
竜巻で追い詰めればいいんじゃないか。
例えば、3方向を山で囲まれた地形とか、簡単に逃げられないようにすればいい……。
あー、なるほど……。
ただ、この辺りに3方向が山という場所はないかも知れない。
少なくとも、オイラが旅した範囲だとな。
うーん……。
デビルラフレシアさんのヒント……、本当にムダなヒントかも知れませんね……。
そうしている間にも、デスモンキー率いる凶暴サルたちは遠くへ遠くへ去って行く。
明らかに、正面に見えるお菓子のお城に向かっているようだった。
もはや、アリスたちに考えている時間はなかった。
その時、アリスは思わず息を飲み込んだ。
モンキ。
お菓子のお城の周りは、全部堀だったでしょ。
もし、あの堀を渡ろうとしたら、モンキだったらどうする?
いいからいいから。
お猿さんが、どうしてあのお城に行けるか知りたいんです。
そうだなぁ……。
サルは、意外と知能あるから、橋とか作って渡るんじゃね……?
何匹か手を繋いで、橋を作るとかさ……。
そっかー……。
じゃあ、竜巻で波を立てても意味ないですよね……。
アリス。
泳いで入れるんだったら、お前もチョコレートの沼を泳いでたんだろうが。
振り出しに戻ってしまったみたいだな、オイラたち……。
いや、アリスがもしかしたら正解を出したかも知れない。
えっ……?
私、全然ダメな答えを言っちゃったかも知れないのに……!
あっ、もしかして、竜巻で堀の水を巻き上げるのは正解じゃね?
あれ、そもそも水じゃないから。
モンキは、手で川の水を描くようにアリスに見せた。
まず波しぶきを立てるようにアリスに見せて、それからその波を手で大きくさせた。
そして、次の瞬間、手で作った波を大きく立たせて、モンキの顔に付けたのだった。
そういうことだ。
もし普通の水が竜巻で揺らいでいれば、顔にかかるのは水だ。
つまり、サルたちの顔には水がかかる。
でも、お菓子のお城にあるのは水じゃなくてチョコレート、または泥だろ。
そんなのが揺らいで、顔にかかったらさすがに息しづらくなるだろ。
サルだって、同じだ。
じゃあ、お菓子のお城にお猿さんが入っているときに、竜巻を堀の中に入れて、橋を作れないようにすればいいんですよ。
それで、その前に私たちが堀の中に入れば、城の中で私たちとデスモンキーの勝負ができると思うんです。
モンキ、頭いいー!
オイラが礼を言われる筋合いはないよ。
そうと決まったからには、まず堀の中にデスモンキーを入れよう。
アリス、お菓子のお城の辺りはどうなっているんだ?
アリスは、モンキに促されるようにその目を再びお菓子のお城に向けた。
猿たちの集団は、ちょうどお菓子のお城の対岸に辿り着き、その目の前で止まった。
これから、何匹かの猿が手を繋いで橋を作るように、アリスの目には見えた。
よし、お菓子のお城にお猿さんたちが入っていきますね。
みんな入りかけたところで、私たちも竜巻に乗りましょう。
分かった。
だが、アリス。
俺から一つ提案していいか。
デビルラフレシアさん、何かいい案を思いついたんですか?
もしこの作戦が成功したら、ラフレシアの戦士もお前たちに加わった方がいいかも知れないな。
サルの数が、お前たちにはあまりにも多すぎる。
それはやめた方がいい。
あくまでも、ラフレシアの力を借りずに、オイラはデスモンキーを止めたいんだ。
お菓子のお城との約束だし、それ以前にオイラはデスモンキーを救いたいんだ。
救いたい……、だと?
あんなお菓子をいっぱい食べて幸せな連中の、どこが救いの対象になるんだ。
デビルラフレシアが、その目を鋭くモンキに向ける。
モンキは一歩、また一歩と後ずさりしかけたが、突然体の重心を前に傾けて、デビルラフレシアに言い返した。
だって、デスモンキーはボスだけど、オイラの仲間なんだよ!
オイラと同じ、サル山のサルなんだから!
何かのきっかけがあって、お菓子のお城に押し寄せただけだと信じたいんだ。
アリスは、慌ててモンキに手を伸ばそうとしたが、モンキは体を軽く震わせて、アリスの動きを止めた。
一方のデビルラフレシアは、その目をやや下に向けて、何事もなかったかのように再び竜巻を作り出した。
モンキの意思は固いようだ。
とりあえず、剣の腕があるモンキを信じよう。
そのデビルラフレシアの言葉に、アリスははっきりとうなずいた。
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