41 ただの動物には興味ありません
文字数 2,556文字
アリスが勢いよく引いた引き金。
その動きに、ボスモンキーが全く動じることはなかった。
解き放たれた銃弾に、一度モンキを串刺しにした剣を一気に振り下ろす。
ピキン……と小さな音を立て、銃弾がお花のお城の床へと砕け散った。
アリスは息を飲み込み、呆然とした表情で一歩、また一歩と下がっていく。
モンキは、目を細めたまま、右手の人差し指だけをアリスに向ける。
すると、ボスモンキーは軽く首を横に振って、アリスとモンキにそっと告げた。
その時、アリスはキョトンとした表情でモンキの顔を見た。
その時、モンキが一歩前に出て、ボスモンキーの前に立った。
そして顔を突き出し、じっとボスモンキーの顔を見つめる。
たしかに、オイラは人食いサルの中の一匹だよ。
でも、それはオイラたちが生きていくために、人の肉を仕方なく食べてるだけじゃないか。
それも、たぶん……山全体で1年に数人ぐらいなものだろう。
そういう自然の摂理と、ボスモンキーの欲望は、180度違うと思う。
考え直してくれよ……、ボス!
だが、ボスモンキーは首を横に振って、モンキを掴もうとするような手を、ゆっくりと伸ばした。
顔は笑っていた。
モンキの足が、いよいよ逃げようとする態勢に入った。
その時、アリスが大きく手を叩き、叫ぶようにボスモンキーに告げた。
アリスの妙案に、モンキも小さくうなずくしかなかった。
さらに、ボスモンキーもその言葉に大きくうなずいた。
アリスは、ここは悪ふざけすることなく、正しい「オメガピース」自治区の方向をはっきりと指差すことができた。
ボスモンキーも、鼻と目でアリスの指差した方角を確かめながら、そっとうなずいた。
ボスモンキーの手が大きく上がり、サルの群れがお花のお城を出ていく。
最後の一匹が外の光の中に消えていくと、アリスは安堵の表情を浮かべ、モンキの顔を見つめた。