22 わるいラフレシアがやってきた!
文字数 2,554文字
アリスは、機械が止まったのを聴覚と、視覚と、それに触覚で三重に確かめた。
たしかに、機械は止まっていた。
ただ、どうして止まったのか、分からなかった。
こんな形で機械を止めてしまっては、アリスの危機だけは脱したとは言え、全く展開としては面白くなかった物語のように思えてならなかった。
その可能性だけはない。
そうアリスが思った瞬間、突然モンキの声が機械の外から聞こえてきた。
機械が止まったとは言え、相変わらず狭い機械の中に閉じ込められているアリスは、窓からわずかに見える光景だけを頼りに、モンキの身に起こっている危機を見ようとした。
しかし、その時アリスは、機械の中にまで吹き込んできそうな強い風を感じた。
次の瞬間、ドーンという破裂音がアリスの耳に響き、機械装置のドアが勢いよく外れた。
それと同時に、アリスの目に細かい土の粒や葉が、次々と飛び込んできた。
アリスは、慌てて機械装置の中に潜り込んだ。
相変わらず、耳を突くような突風があたり一面に吹き荒れている。
あれだけアリスを痛めつけたお花の妖精は、もう気配すらしなかった。
あとはここで、嵐が止むのを待つしかなかった。
おそらく、奇襲した段階で、ラフレシアがこの装置を止めたとしか思えない。
ただ、最大の疑問は、何故ラフレシアが「動物の植物化計画」を止めたのか、だった。
そもそも、アリスがお菓子のお城のパティスリーから言われたのは、ラフレシアを倒してくることだったはずだ。
そのラフレシアが、悪い勢力ではないかもしれないという、奇妙な展開になっていた。
アリスは、止まない風の中、再び機械装置の外に飛び出した。
今度は、顔を全部出して、誰が何をしているかまではっきりと読み取ることにした。
その時、アリスの目に飛び込んできたのは、植物のように見える動物だった。
いや、第一印象としてそれを言うしかないほどの、奇妙な生物だったのだ。
モンキは、竜巻が絶対に襲ってくることのない角に隠れて、様子を伺っていた。
一方のアリスは、モンキの声から遅れること3秒、ようやく後ろを振り返った。
鉄兜を被った草が、アリスの前に立っていた。
アリス。
悠長に「こんにちはー」とか言ってる余裕あるのか?
アリスの目には、この鉄兜野郎が何と言っているのか分からなかった。
風が周りに吹き荒れている中、この時アリスとその生物の間にだけ、全く風が吹いていなかった。それでも、アリスの耳にはその意味が断片的にしか伝わってこなかった。
あ、あのー……。
お菓子ハンターという言葉だけは分かるんですが……、私、こう見えてもオメガピースのダメ兵士です!
もし戦力になるんだったら、そこにいるお猿さんとか……、うちの女剣士を差し上げますが……、どうでしょう。
アリスは、半分冗談のつもりで、ラフレシアを名乗るその生物に返した。
しかし、鉄兜に包まれたその生物は、音を立てるように首を横に振った。
アリスは、その言葉を聞いた瞬間、震えながらも、大きく口を開いた。
ソフィアがそんなにも弱い剣士に見えたということへのショック、そしてそれ以上に聞き捨てならない言葉を聞いてしまったからだ。
アリスは、その生物の言葉を聞いた瞬間に困惑した。
ラフレシア方についてしまうということは、お菓子のお城永久出入り禁止になってしまう可能性だってある。
聞いている限り、ラフレシアが竜巻に乗ってお菓子のお城を襲い、その後パティスリーが報告したのは間違いないと言っていい。
アリスは、ここでモンキに顔を向けた。