24 デビルラフレシアの腹ごしらえ

文字数 2,524文字

お花のお城に竜巻が舞い上がり、アリスとモンキはデビルラフレシアの葉に乗ったまま上に巻き上げられていった。

数秒もしないうちに、お花のお城はアリスたちのはるか下に消えていき、アリスはまるで雲の上にでも乗っているかのような気分になった。

すごーい!

デビルラフレシアの竜巻って、こんな高さまで上がるんですねー。

オイラたち、その竜巻を見ただろ。

でも、こんな高さまで巻き上げられるなんて、あの時は想像つかなかったです。


デビルラフレシアさん、いま私たちは何メートルくらいの高さにいますか?

そうだな……。

ざっと1000mくらいの高さだろうな。

え……。

アリスは、デビルラフレシアに言われて、ようやく目を下にやった。

お花のお城は、もうミニチュアのお城にしか見えなかった。


その瞬間、アリスは突拍子もなく笑った。

あはははは!


こんな高さまで連れて行ってもらったことないです!

だから、いまものすごーく楽しいです!



……モンキも、こんな高さまで連れてってもらったこと、ないでしょ。

そうだな。

オイラも、あのサル山より上にいったことはない。


でも、今までオイラも何回か竜巻を見たけど、普通はこの高さになるよな。

だいたい1000mくらいとか言われている。

そうなんだ……。


まぁ、そもそも1000mの山とか普段の任務で上ることはないし、そんな高さの塔とかタワーとかないよね……。

アリスは、そう感心すると、もう一度下を見た。

お花のお城は進行方向のはるか後ろに消えていた。


だが、モンキの暮らしていたサル山が、いつまで経っても見えてこなかった。

あれ……?

私たち、お菓子のお城に向かっているんですよ……ね……?

そんなこと、誰が言った。

1秒も経たないうちにデビルラフレシアから言葉が返ってきて、アリスは思わず震え上がった。

つまり、この竜巻の行先はお菓子のお城、ではない、ということだった。

ちょっと待って下さいね、デビルラフレシアさん。


私たちは……、お、菓、子、を、食、べ、る、ためにこの竜巻に乗ってるわけですよね。

アリスは、もはやコマ送りでもしているかのように、そう強調した。

あくまでも、我々は食べることがメインだ。


だが、つい何時間か前に奪ったところに行って、数時間でお菓子が出てくると思うか。

たとえ、そこがお菓子工場だったとしても。

たしかに、オイラだったらエサが育つのを待ってから手をつけるよなぁ……。

そう、サルの言う通り。


それと、さっきお菓子のお城から取ってきたお菓子は、一緒に動いているラフレシア連中がみんな食っちまったから、お前らにやる分はない。

つまり、これから行くところで、自力で食べないといけないというわけだ。

そうなんですかぁ……。


でも、ラフレシアの戦力として、お菓子のお城に行くまでは絶対頑張ります!

そう、その意気だ、アリス。
デビルラフレシアは、低い声でそう言うと、その一つ目をアリスに向けて、再び話し出した。

アリス。

まず、何が食べたい。


それによって、これから行こうとしている場所が決まるんだが。

そうですねー……。


ケーキ。

お前、意地でもお菓子のお城に向かわせようとしているな。


それ以外でお前が食べたいものを言ってみろ。

分かりましたー。


はい、四つ候補が出来上がりましたー。

1.豪華な松花堂弁当

2.世界の三大珍味が乗ったピザ

3.最高級A5ランクの牛肉ステーキ

4.モンキの丸焼き

ただ食いが見つかったら、どれも高い金をとられるやつだろ。

えへっ?バレました?


ソードマスターが見てないし、たまには豪華なものを食べようかなーって。

アリス、ちょっと待て。

どさくさに紛れて、とんでもない選択肢を入れてねぇか?

あ、見えちゃいました?

サルの丸焼きなんて、こんなおいしくないものはないだろうに。

モンキは、デビルラフレシアの葉の上でじたばたし始めた。


それに気付いたのか、デビルラフレシアの目がモンキに向けられる。

そうだな。モンキ、いいことを言った。

サルの丸焼きなら、タダだな。

え?本当にオイラの丸焼き?


こんな逃げられないところで、オイラ、ラフレシアのエサにされるってことかよ。

デビルラフレシアさん!

モンキを丸焼きにしてはいけません!

お前が言うな、アリス。

分かった分かった。

サルの丸焼きは撤回だ。


なら、海に行って、イルカの丸焼きはどうか?

おいしいですねー!

イカ焼きじゃなくて、イルカ焼き!

やったー!

アリス、もしかしてそれ、海に泳いでいるイルカじゃないだろうな。


オイラ、ものすごく嫌な予感がするんだが。

そうですか……?


水族館で見る限り、イルカタッチなんて、慣れれば簡単ですよ。

そんな問題じゃなくて、アリス、下を見ろよ。

オイラたち、どこにいると思うんだ、今。

モンキは、右の人差し指を下に向けて、何度か念を押すように下に動かした。

数秒経って、ようやくアリスも背筋の凍るような表情に変わった。

たしかに……、こんな高いところにイルカさんたちはやってきませんねー……。

もちろん、こんな高いところから海にダイブすれば、とてもイルカを狩るような状況にはなれない。そうかと言って、デビルラフレシアの手からうまく下降気流に乗って、安全に海まで降りるのは技術がいる。


そこまで考えたとき、アリスの頭の中で何かがひらめいた。

デビルラフレシアさん。


そもそも私たち、どうやってここから降りるんですか?

降り方か?


目的地に着いたら、竜巻が消える。

その下降気流に乗って、地上まで降りていくんだ。


だから、アリス。葉の上に乗っているだけでいい。

分かりました。


あ、海に出たみたいですよ。

なんか、あったかそうな海だから、イルカも泳いでいるようだな。

どうやら、お前たちは早くエサにありつきたいようだな。


なら、そんなに深くないこの海でイルカを狩ることにしよう。

下降気流に乗って降りるから、絶対に葉の上で足を動かすな。

デビルラフレシアがそう言うと、アリスの足下で感じていた激しい力が急激に弱くなり、重力とも言えるようなスピードで落下し始めた。


重力と違う点は、この落下がデビルラフレシア自身の動きということだ。

葉の上に乗るアリスとモンキは、エレベーターの床のようなところに乗っているのに等しかった。

それでも、落下するアリスは、吸い込まれるような空気を感じた。

落ちるーっ!
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登場人物紹介

アリス・ガーデンス


15歳

軍事組織「オメガピース」にいるのに、戦いもせずにお菓子ばかり食べる女の子。何かとお騒がせなことをやってしまうドジっ娘。一応、銃使い兼魔術師。アッシュに片思い中!

モン・キホーテ(モンキ)


人食いサル。ひょんなきっかけからアリスの冒険に付いて行くことに。

アッシュ・ミッドフィル


23歳/ライフルマスター

冷静な判断力と圧倒的な銃の腕を持つ、絶対の銃使い。自らの誤射で家族と家を失い、モンスターの潜む森で1年間生き抜いた過去を持つ。暗い性格が仇となり、イケメンなのに恋愛経験がほぼ皆無。

ソフィア・エリクール


25歳

女剣士。今回、何故かアリスの保護者として不思議な世界について行くことに。

トライブ・ランスロット


25歳/ソードマスター

女剣士。またの名を「クィーン・オブ・ソード」。最強。

ケーキの妖精 パティスリー


5歳

お菓子のお城に住む妖精。クリームとブルーベリーとクランベリーでできている。

デビルラフレシア


草なのに兜をかぶっている、奇妙な植物「ラフレシア」のトップ。

竜巻を起こして、ある一定の生命を襲っているらしい。

ボスモンキー


その名の通り、サル山のボス。

言うまでもなく、モンキのボス。

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