39 解けるかどうかはモンキのひらめき次第!
文字数 2,535文字
モンキは、アリスとソフィアを前に、ゆっくりと話し始めた。
今までオイラは、デビルラフレシアとボスモンキーが同じ道をたどってきたように思っていた。
けど、それがどうも錯覚のような気がしたんだ。
錯覚……?
だって、同じように楽しいことを恨んで、お菓子のお城に乗り込んでいるんでしょ。
同じような気がしなくもないです。
やっていることは、たしかに同じなんだよ。
けどさ、そもそもデビルラフレシアがあんな野望を持ったのは、「動物の植物化計画」だと思うんだ。
そうじゃなかったら、パティスリーに追い出されたお菓子のお城はともかく、例えばおまつり広場とか、他の楽しいことにまで手を出さないと思うんだよな。
たしかに、それは言えますね。
どうも、パティスリーだけを恨んでいるようには思えないです。
アリスは、何度かうなずきながらモンキの言葉を聞いた。
いつの間にか、モンキは腰に手を当てて、自信たっぷりの表情を見せていた。
そうなんだよ。
だからこそ、他人の楽しみを奪うというのが、お菓子のお城じゃなくてお花のお城で培われたものだとオイラには思うんだ。
それは、今から説明するさ。
で、オイラもアリスも何とかそれを逃れた「動物の植物化計画」なんだけど、本当に植物ぽくされたのがラフレシアたちだろ。
竜巻を起こすというのはあるけど、葉があって、茎があって……、兜と目を取ったらまるで植物だったじゃん。
でも、ボスモンキーはあのままだった。
オイラがサル山で見ていた時と、何も変わらなかった。
つまり、ボスモンキーは植物にされていないってことですよね……。
同じことをやっているのに、全く姿が違う。
アリス、おかしいと思わないか。
アリスは、何かに気が付いたように手を叩いた。
すぐ隣では、ソフィアもどこか納得しているような表情を見せていた。
おかしいですよ。
本当だったら、葉があって、茎があって、とても歩けるような感じじゃなくなるはずなのに……、ボスモンキーも仲間も、みな歩いてましたよね。
そう。
ボスモンキーがお花のお城に行っても、全然植物になった感じはしなかったんだ。
さっきオイラたちの前にいたサルたちだって、山にいたときのままだ。
じゃあ、どうしてあんな野望をボスモンキーは持っていたのか。
それは、オイラには一つしか考えられないんだ。
もしかして、ボスモンキーがお花の妖精たちを……、動かしていたとか……?
悔しいけど、その可能性だって出てきたんだ。
オイラはこれからお花のお城に行って、ボスモンキーとの関係の裏を取ってくる。
剣と魔法の世界に、勝手にK視庁を持ってくるんじゃない。
お菓子のお城を見捨てる形にはなるけどさ、行って無駄じゃないと思うぜ。
アリスも、できればついてきたほうがいい。
私も、なんか気になるから行きたいです。
ソフィアさんは行きますか?
そう言ってくれると嬉しいんだけど……、私はお菓子のお城のほうが気になっている。
アリスだって、最後はお菓子のお城でお菓子を食べたいって言ってるから、ボスモンキーを止めるのが先だと思う。
そう言うと、ソフィアはアリスに背を向け、すぐに振り返った。
それに、私がトライブに話をしたと言えば、アッシュだって見逃してくれるような気がする。
ちょうど、さっきアリスがラフレシアをうまく利用したように。
竜巻で、あのサルたちを中に入れないという発想は素晴らしかったと思う。
パティスリーはラフレシアを入れたとか言ってたけど、私はあれでよかったと思う。
ありがとうございます。
ということは、ソフィアさんはこれからソードマスターのところに行くわけですね。
そうね。
剣術大会が終わったら、すぐにでもトライブにボスモンキーの話をする。
きっと、戦いたいって返ってくるはずだから、ボスモンキーと勝負できると思う。
そう言って、ソフィアは右手を軽く振って、アリスたちの前から立ち去った。
残されたモンキは、アリスの手を握り、それから自分の背中を指差した。
乗ったほうがいいよ。
だって、サル山に登ったときにアリスを背中に載せられたんだから、あんな距離を何時間もかけて歩くよりかいいと思うよ。
それに、お菓子のお城には残された時間がないしさ。
アリスはそう言うと、モンキの背中に飛び乗って、今度はふるい落とされないように両手でモンキの毛皮に振れた。
そして、モンキは手足を使って大地を走り出した。
人が走るスピードを相当上回っており、竜巻で上空から見上げていたときと比べて、体感的な速度は速くなっているようにアリスには思えた。
獣と友達になったとしても、決して言ってはいけない言葉の一つである。
著作権か何かで訴えられても、アリスが責任を取るしかないだろう。
どうだ、オイラがまともに走ったら、たぶんボスモンキーだって追い抜くんだから。
ボスモンキーはかなりの年齢いってるからな。
たしかにそうですよね。
おそらく、人間で言うと私の親ぐらいの年齢ですか?
かもな。
少なくとも、さっき見たソフィアよりは年齢が高いだろう。
10分はかからなかっただろうか、アリスの目の前に、未だに花が咲かないお花のお城が現れた。
草ばかりの入り口を、最初は入るのをためらったモンキが、この時は勢いよく入っていく。
そして、何度もその形を見ている機械装置の前でその足を止めた。
いやいや、オイラにはこんなくらい徐の口だって。
で、オイラはここで何をしようと思ったのかと言うと……。
モンキは、耳に手を当ててお花の妖精の声に耳を傾けるしぐさを始めた。
モンキの体が、右にわずかながら傾いていくのが、アリスには分かった。
さぁ、花の妖精がボスモンキーとの関係を何と言うかだ……。
そして、もしできるとしたら「動物の植物化計画」が何故できたのかも聞いてみたい。
アリスがそう言ったとき、その耳で何かがささやいているのを、アリスはかすかに感じた。
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