27 おまつり広場で屋台食べ放題ツアー
文字数 2,635文字
アリスとモンキ、それにラフレシアたちを乗せて、竜巻は海を越えていく。
やがて、アリスの目に新しい島が映りはじめた。
あの島です。
たしか、この時期は毎日のようにお祭りが開かれてて、たくさんの人が集まるんです。
前にソードマスターと一緒に来たことがあって、よく覚えています。
ソードマスターって奴は、海を越えるんだな。
犬かきもできないオイラには無理な話だ。
ソードマスターが、泳いで渡ったわけじゃないですよ。
任務に行くため、私たちが船を貸し切ったんです。
ちなみに、ソードマスターのポケットマネーで。
だって、私やソフィアさんよりずっと美しいと思いますもの。
ファッション雑誌とか出たら、「戦う女性」として真っ先に取り上げられますって。
アリスは、モンキの表情を伺いながら、「オメガピース」の兵士たちのプライベートなところまで突っ込もうとしていた。
だが、モンキがそこで切り返す。
なんか、オイラみたいな下っ端は、金持ちって聞くだけでものすごく憧れる。
一度、そのソードマスターという人と戦ってみたくなったよ。
しかも、美しいってことは、メスだろ。
だとしたら、オイラが絶対に勝つな。
オイラ、こう見えても人食いサルのオスだからな。
モンキは両手を腰に当てて、勝ち誇ったようにアリスに言った。
その目の前で、アリスは首を横に振る。
ソードマスターの剣の実力を、甘く見ちゃいけないです。
普通の剣士が全く歯の立たない強敵を、いっぱい倒してます。
それに見てるだけで、ゾクゾクしてきますもの。
美しくて強くて、って化け物か……?
ますますオイラ、戦う気になった。
ちなみに、そのソードマスター、お菓子のお城にいるのか。
オメガピースの中でお留守番です。
たしか、剣術大会にも出るって言ってましたよ。
戦うとしたら、そこかも知れませんね。
なるほどな。
人間の強い剣士がいっぱい集まる剣術大会で、人間がサルに負けるなんてシーンを、見せてやりたいよ。
そう言いながら、モンキは手持ちの剣を振り上げようとした。
その時、デビルラフレシアがアリスとモンキに目を向け、話に割って入った。
目的地に着いたから、降下する。
あまり暴れると葉から振り落とされるかも知れないから、気を付けろ。
アリスがそう言うと、竜巻の回転速度がゆっくりになり、一気に島へと向かっていく。
アリスの目に見えるおまつり広場が一気に大きくなり、アリスの鼻にも焼きそばやたこ焼き、クレープなどの匂いがつくようになった。
やがて、デビルラフレシアの葉がおまつり広場の真横に降り立った。
アリスは、飛び跳ねながら葉を降り、おまつり広場を見てよだれを出す。
アリスの目の前に広がっていたのは、数え切れないほどの屋台だった。
「焼きそば」「たこ焼き」「イカ焼き」「ケバブ」「バナナチョコ」……と書かれた屋台が、所狭しと並んでいた。
一足先に飛び出したアリスを追いかけるように、モンキとラフレシアたちが屋台に向かって歩き出す。
そして、アリスのすぐ後ろまでやって来て止まった。
一斉に食ってかかったら、食べられないものがある。
例えば、あの屋台の鉄骨とかそうだ。ガスボンベも見える。
お前も、ああいうのは食べられないだろう。
たしかに……、食べられないものは食べられませんね。
でも……、屋台を回って食べればいいような気がするんです。
もちろん、お金はかかっちゃいますが。
それは、ラフレシアの戦力として、あまり好まないものだ。
さっきのイルカも、あまりいい食べ方ではなかった。骨があったからな。
デビルラフレシアが、やや目を細めてアリスを見つめている。
コマンド?
1.たたかう
2.あやまる
3.どげざ
4.たべる
そんなこと言わないで、食べちゃいましょうよ。
お金を払うのが嫌なら、先に物だけ食べちゃえばいいじゃないですか。
こんな犯罪者ぽいことを考えているアリスが、正義と平和を守る軍事組織に所属しているとは、何とも嘆かわしいことか。
もっとも、ラフレシアもラフレシアなりに、それに近いことを考えているようだが。
そうじゃない。
ラフレシアの戦力が取るべき食べ方は、根こそぎだ。
竜巻で全てを巻き上げて、食べる。そこに不要なものがあってはいけない。
お菓子のお城を襲ったときも、あれは全てがお菓子だったから簡単に奪うことができたんだ。
そうだったんですか……!
じゃあ、おまつり広場でやりたかったことは……、屋台にあるもの全てを竜巻に乗せて食べるってことだったんですね。
そう、そういうことだ。
できれば、一瞬でこの場所を片付けたい。
アリスは、得意げな表情を浮かべてデビルラフレシアに告げた。
竜巻の準備ができたら、私がおまつり広場に「竜巻が来るぞー!」と言ったら、みんな逃げ出すじゃないですか。
その隙に、食べられないものに気を付けて、机の上にあるものを巻き上げるんですよ。
なんか、オオカミと少年みたいなものを感じるな……。
なるほど……。
そもそも、竜巻を人間は怖がるってわけか。
なら、アリス。その作戦で行こう。
アリス以外は竜巻に乗り、あとはアリスが戻ってくるのを待とう。
了解です!
じゃあ、さっそくおまつり広場に行きますね!
アリスは、小走りに屋台に向かい、入口に見えた焼きそばの屋台の前に立った。
すると、アリスの顔を見た屋台のおじさんが、目を丸くしてアリスを見た。
ア……、ア……、アリスじゃないかあああ……!
みんな、逃げろ!
アリスがきたぞおおおお!
食い荒らされるぞおおおおお!
その時アリスは、以前トライブに連れてこられたときに、入口にあった焼きそばの屋台を、麺が切れるまで食べ尽くしてしまったことを思い出した。
まさか、それを根に持っているとは思わなかった。
おじさんの声を聞いた屋台は、一斉にたたみ始め、アリスは言いたいことも言い出せなくなった。
すると、竜巻が動き出した。
アリス……、まさかのインパクト大だったな。
これで、屋台食べ放題だ。
えっ……。
完全に失敗したと思ったんですが、これで大丈夫だったんですね。
これでいいんだ。みんなが去って行く。
アリス、お前も葉に乗れ。
竜巻で食べ物を巻き上げるから、キャッチするんだ。
アリスは、デビルラフレシアの葉に飛び乗って、舌を出しながら屋台の食べ物が上がってくるのを待った。
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