第7章 -  1 優衣の日記(3)

文字数 436文字

 1 優衣の日記(3)
 


 ――きっとわたしは もうすぐ死ぬ。 
 ――もうあえない そんなのいやだ。 
 ――りょうちゃん、あいたい。
 ――あいたい。
 ――あいたい。
 ――あいたい。 
 
 薬のせいか? 
 あるいはすでに、書くという状態にはないのだろう。
 それはまさに、必死に書き綴ったという印象そのもの……で。
 
 ――しけん おわったら 病いんきてもらう。 
 ――パパにおねがい 忘れないようにしない と さいきん わすれ。
 
 そんな最後の文章は、途中で、力尽きたように終わっていた。
 そしてそんな優衣の望みも、偶然、涼太によって叶えられる。
 少なくとも試験日の夕方、涼太は病院には来ていたのだから。
 
 ――もうあえない、そんなのいやだ。 

 彼が病院へ駆けつけた時、
 ――りょうちゃん、あいたい。 

 すでに優衣は昏睡状態に陥っていた。
 ――あいたい。 

 だからいくら叫んでも、
 ――あいたい。

 優衣の耳には
 ――あいたい。

 彼の声は届かない。

「優衣! 起きろ! 目を覚ませ!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み