第3章 - 2 余波(3)
文字数 810文字
2 余波(3)
泣いていた。
心臓手術の時にも泣かなかった優衣が、目に涙をいっぱい溜めている。美穂のことを睨みつけながら、ワナワナと唇を震わせていた。
――どうして、午前中なんかにいるのよ!
もしも今、目の前にさっきの少年が現れたなら、美穂はそう言って掴みかかっていただろう。
だいたい今日は平日だ。
これまで来ていた午後をやめ、ここのところずっと平日は午前中にと決めている。
だから安心し切っていた。
高校生が、午前中に現れる筈ないと思っていたのに、
――どうしてよ……?
これでまた、せっかく落ち着いてきた優衣の気持ちが、元に戻ってしまったらどうしよう……そんなふうに思う気持ちと、
――それでも、あんなのと一緒にいられるくらいなら……。
少々荒れるくらい構わないなどと、思ってしまう自分がいた。
「外見はともかく、本当はとってもいい子なんですよ」
――ってことは、外見は物凄く悪いってことじゃない?
夏川麻衣子に告げられて、美穂は即座にそう考えた。
最近、優衣と仲良くしている男の子がいる。
その子はちょっと不良っぽい感じだが、実は優しくていい子だからと、
「きっと、彼女にとっていい影響があると思うんです。もうすでに、そんな変化を感じていますし、ぜひお母さんの方でも、温かく見守っていただけませんでしょうか?」
美穂を喫茶室へと連れ出して、夏川はそんなことを告げたのだった。
確かに、ここのところの優衣は落ち着いている。
本当にそんな少年のお陰かどうかは知らないが、看護師長が言うんだからきっとそう言うところもあるのだろう。
だからと言って、見知らぬ少年が病室に出入りする。
それも不良っぽい感じと言うのだから、少なくとも真面目ってことはないだろう。
当然夜遊びだってしているだろうし、
――もしかしたら、高校生のくせに女遊びなんて、していたりして……!
そんなことを思えば思うほど、彼を優衣には近づけたくない。
泣いていた。
心臓手術の時にも泣かなかった優衣が、目に涙をいっぱい溜めている。美穂のことを睨みつけながら、ワナワナと唇を震わせていた。
――どうして、午前中なんかにいるのよ!
もしも今、目の前にさっきの少年が現れたなら、美穂はそう言って掴みかかっていただろう。
だいたい今日は平日だ。
これまで来ていた午後をやめ、ここのところずっと平日は午前中にと決めている。
だから安心し切っていた。
高校生が、午前中に現れる筈ないと思っていたのに、
――どうしてよ……?
これでまた、せっかく落ち着いてきた優衣の気持ちが、元に戻ってしまったらどうしよう……そんなふうに思う気持ちと、
――それでも、あんなのと一緒にいられるくらいなら……。
少々荒れるくらい構わないなどと、思ってしまう自分がいた。
「外見はともかく、本当はとってもいい子なんですよ」
――ってことは、外見は物凄く悪いってことじゃない?
夏川麻衣子に告げられて、美穂は即座にそう考えた。
最近、優衣と仲良くしている男の子がいる。
その子はちょっと不良っぽい感じだが、実は優しくていい子だからと、
「きっと、彼女にとっていい影響があると思うんです。もうすでに、そんな変化を感じていますし、ぜひお母さんの方でも、温かく見守っていただけませんでしょうか?」
美穂を喫茶室へと連れ出して、夏川はそんなことを告げたのだった。
確かに、ここのところの優衣は落ち着いている。
本当にそんな少年のお陰かどうかは知らないが、看護師長が言うんだからきっとそう言うところもあるのだろう。
だからと言って、見知らぬ少年が病室に出入りする。
それも不良っぽい感じと言うのだから、少なくとも真面目ってことはないだろう。
当然夜遊びだってしているだろうし、
――もしかしたら、高校生のくせに女遊びなんて、していたりして……!
そんなことを思えば思うほど、彼を優衣には近づけたくない。